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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。
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女神様の審判です

「本日は私共に最後のチャンスを下さりましたこと、地獄分館の職員を代表してお礼申し上げます。誠にありがとうございました」


 まずは淑女の気品の中に新人らしい爽やかさを織り交ぜての謝辞からです。

 これぞ私の必勝パターン。今まで、これに騙されなかった相手はいません。


「あっはっはっ! 予想通り、面白い娘じゃな。わらわの目に狂いはなかったわい。ああ、それとわらわ相手に猫なんか被らんでよいから、楽にせよ」


 恭しく頭を下げる私を見た伊邪那美様は、愉快そうに大笑いを始めました。

 何とこの神様、私の猫被りを一瞬にして見破ってきやがりました。これが、あの世の主神クオリティということなのでしょうか。伊邪那美様、侮りがたし……。


「いや、さっきあれだけ好き放題言っていたんだから、今更猫なんて被ってもバレバ――ぐへらっ!」


 割と早く復活してきたヒゲの顎を殴打して、今度は天井に頭を突っ込ませて差し上げました。これでしばらく静かになるでしょう。

 さてと、では気を取り直しまして……。

 とりあえず、伊邪那美様はナチュラルな私をお望みのようです。

 つまり私は、自然体が一番魅力的ということですね。さすがは、あの世で一番偉い神様だけのことはあります。よくわかっていらっしゃる。

 それに、彼女の纏う雰囲気はかなり好意的なように見えます。これは、なかなか期待が持てますね。


「では、お言葉に甘えまして。――伊邪那美様、チャンスをくれるなんて回りくどいことを言わずに、地獄分館の閉鎖と私達の解雇を取り消しなさい」


「貴様! 伊邪那美様に対して、何という無礼な口の利き方を――」


「横からうるさいぞ、久延毘古! 今はわらわがこの娘と話しておるのだ。お前は大人しくすっこんでおれ!」


「むぐっ! ――クッ……」


 伊邪那美様に叱られて、久延毘古氏がすごすごと引き下がります。

 ぷくく。やーい、怒られてやんの。


(まったくもっていい気味ですね。あの苦虫を噛み潰した顔を見ているだけで、心が潤います)


 この久延毘古氏のにがりきった表情を見られただけでも、今日ここに来た甲斐があったというものです。

 いや~、眼福、眼福。余は満足ですよ♪

 なんて悦に浸っていると、伊邪那美様が人懐っこい笑みを浮かべて私の方へ向き直りました。

 おお? これはいきなり閉鎖&解雇を撤回してもらえそうな予感がしますよ。


「さて宏美、地獄分館の閉鎖とお前達の解雇じゃがな、さすがに取り消すことはできんのじゃ。無論、わらわの力で強引に取り消すこともできんわけではないが……さすがにそれは商議員連中に対してアンフェアじゃしな」


 あれれ? 拒否られてしまいました。

 ふむ。この神様、味方のフリをして実は敵でしたか。やはりプラン・デストロイを発動するしかないようです。

 それでは改めまして、三、二、一……。


「ハッハッハッ! そう怖い顔をするでない。わらわがお主にチャンスを与えたいと思っているのは本当じゃ。これでもわらわは、お主を気に入っているのでな」


 早速武器を構え直し、足に力を込め始めた私に向かって、伊邪那美様がカラカラと笑います。

 むぅ~。絶妙のところでこちらのタイミングを外してくる……。久延毘古氏とは別の意味でやりにくい神様ですね。のらりくらりとしていると言うか何と言うか……。

 さすがはあの世の主神だけのことはあります。一筋縄ではいきませんね。


「というわけで、わらわもちと考えた。お前達両方を納得させる道はないものかとな。――そんでな、ピコーンと閃いたのじゃよ!」


「ほう。何を思いついたと?」


 首を傾げる私に、伊邪那美様は「ぬふふ。そう焦るでない」とドヤ顔を見せました。

 いや、ドヤ顔されてこちらは意味がわからないのですが……。

 ただ、伊邪那美様としては今のセリフを言えたことで満足だったようです。続けてあっさりと、こう言い放ちました。


「宏美、お主ちょっと、ここにいる久延毘古と勝負せい! その結果を見て、今回の地獄分館閉館問題の最終判断を下すこととする!」


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