第8章:会員番号○○番の私
―マジガーズクラブと超合金Zの夢―
情報源は「雑誌」だけだった時代
少しだけ、時代の話をしよう。いまの子どもたちは、YouTubeだのX(旧Twitter)だの、ありとあらゆるネット情報に囲まれて育つ。けれど、我々の子ども時代にはそんなもの、影も形もなかった。
当時、アニメや特撮の情報源は“雑誌”しかなかった。特に、我々男の子にとっての二大巨頭は、
テレビマガジン(講談社)
テレビランド(徳間書店)
である。
そして、「お前、どっち派?」みたいな派閥争いが、ランドセルの中で静かに行われていた。
ジャンプ派かサンデー派か、りぼん派か別マ派か――それと同じように、
テレビマガジン派か、テレビランド派か。私は断然、テレビマガジン派だった。
マジガーズクラブに入りたかった
テレビマガジンでは、マジンガーZを猛烈にプッシュしていた。そして雑誌内企画として設けられていたのが…マジガーズクラブ。
これ、要するにマジンガーZの公式ファンクラブのようなものだった。ファンレターを出したり、会員証が届いたり、イベント情報が載っていたりする。
我が家では、そういう「何かのファンクラブに入る」という文化はなかった。テレビや雑誌は“生活から距離のあるもの”という空気感だった。だから、マジガーズクラブに入りたいと言い出すのは、当時の私にとってちょっとした革命的行動だった。
母にお願いした時の詳細なやりとりは、残念ながら覚えていない。でも、その後に訪れた出来事だけは、今でも鮮明に覚えている。
封筒が届いた日
学校から帰ると、いつものように郵便受けを確認する。その日は…あった。雑誌社からの封筒。
「ついに来たか……!」
私は封筒を抱えて、自分の部屋に駆け込んだ。
中に入っていたのは、念願のマジガーズクラブ会員証。名前も良い。マジンガークラブではなく、マジガーズクラブ。
小学生の私は「なんで“ズ”がつくんやろ?」と思ったが、ドラゴンズ、スワローズ……
ズをつけると強そう、カッコよさそうという漠然とした納得感があった。
超合金Zの奇跡
そして――最大の衝撃が訪れる。会員証は、ただの紙切れではなかった。なんと、金属製だったのである。
昭和40年代、会員証といえば、ぺらぺらの紙、せいぜい厚紙。パウチすらされていないのが普通だった時代。
そこに現れたのが、ずっしりとした金属のプレート。それは、私の中で、「超合金Zでできている」という公式設定になった。
もちろん、今にして思えば、亜鉛かアルミだろう。でも、そんなことはどうでもよかった。
私はその会員証を手にしたとき、思ったのだ。「これ……ホンマに超合金Zちゃうんか……?」
親に「この金属って超合金Zなん?」と聞くのは、夢に傷をつけるような気がして聞けなかった。
少年は、夢を守ったのだ。その感動は、今でも私の中にあって、懐かしく、ちょっとしょっぱい。
画面の中のロボットが、雑誌を通じて、手元にやってくる。物語の向こう側にいたヒーローが、カード一枚で“自分の仲間”になる。
それが、マジガーズクラブだった。そして、それが、フィクションと現実の接続点だった。
つづく…




