第7章:超合金Zという神話
ロケットパンチは序章にすぎなかった
マジンガーZといえば、まず誰もが思い浮かべるのは…
「ロケットパ〜ンチ!!」
この技は、単なる武器ではなく、巨大ロボットの常識をぶち破った衝撃そのものだった。
それまで、ロボットの“手”とは、鉄の拳であり、握って殴るためのものだった。だがマジンガーZは、その“手”を、飛ばしたのだ。
「飛ばすんかい!!」
「しかも、肘から先、なくなっとるやん…!」
と、ツッコミを入れたくなるのが普通である。
だが、我々はそうはしなかった。それはあまりにも、カッコよかったからだ。
ロケットパンチ射出後、肘から先が空っぽになった状態のマジンガーZ。それでもなお堂々としているその姿に、リアリズムの新境地すら感じたのである。
「撃てばなくなる」
「なくなったら補充する」
このシンプルで現実的なサイクルに、妙な説得力があった。
だが、マジンガーZの本当の凄さは、そこではなかった。私が最も心を撃ち抜かれたのは、素材である。
マジンガーZの“材質”という革命
そう、マジンガーZは…
超合金Zでできている。
…何それ? と思った。
だが、何かすごいことだけは、確実に伝わってきた。
これまでのロボットは、動力の説明(原子力、光子力など)はあっても、何でできているかまでは触れられていなかった。アトムが何で作られていたか、正確には覚えていない。鉄人28号も、たぶん“金属”としか言われていなかった気がする。
だが、マジンガーZは違った。
超合金Zという名前が、明確に設定されていた。
この「材質への言及」は、少年たちの想像力を強烈に刺激した。超合金Zってなんだ? 鉄より強いのか? チタン合金よりすごいのか?想像も絶する金属なのに、想像を絶しない形で記憶に残る名前…それが、超合金Zだった。
おもちゃ屋に現れた“現実のマジンガーZ”
そして、伝説は続く。
まさかの…その超合金ZでできたマジンガーZが、日本のおもちゃ屋に登場するのである。
「マジか…」
「超合金Z、売ってるやん…」
当時のロボットのおもちゃといえば、だいたいがソフトビニール。軽くて、曲がって、たまに自立もしない。プラスチックでもちょっと上等な部類。
そこに現れた、ずっしりと重いマジンガーZ。冷たくて、硬くて、鈍く光るその存在感は、まさに異次元だった。
もちろん、厳密には本物の超合金Zではない。たぶん亜鉛合金か何かだ。
でも、そんなことはどうでもよかった。
あれは超合金Zでできていた。
少なくとも、少年だった私は、そう信じていた。
親や大人に「これ、本当に超合金Zなん?」と聞くのは、野暮というか、禁句だった。言葉にしてはいけない魔法のような前提…それが、超合金Z神話である。
あのおもちゃに触れた瞬間、私は、フィクションと現実が接続したのを感じた。
それまでのロボットは画面の中だけのものだった。だが、この超合金ZマジンガーZは、手のひらの中にいた。
これは、我々の“ロボット観”が、視聴するものから、所有するものへと進化した瞬間だった…。




