第9話 二日目のシェード街
「美味っ……!ドズルさん!美味しいよ!」
「おう!ったりめえよ!」
翌日となり俺は安らぎの箱で朝食を食べている。
「昨日の晩御飯の時も思ったけど、ドズルさんの料理美味しすぎない?冒険者みたいな見た目してるのに?」
「見た目は関係ねえだろうが!」
ドズルさんたちは無理に敬語にしなくていいと言ってくれた。この世界だと種族で寿命が違うからな。
「でも正解よ。ドズルは元冒険者なの」
「強かったんだって!だよねパパ!」
「昔の話だがな。ミリアが妊娠したってんで引退したんだよ」
「元々冒険者は宿屋を開くためにやってたいたのよ」
「へぇ〜。そうなんだ」
ちなみに朝食の時間ギリギリだったから客は俺ひとり。メリアちゃんが俺の膝の上で足をブラブラさせている。
「(どこでこんなに懐かれたんだろうか?)」
不思議に思いながらも食事を終了して今日これからについて思案する。
「(街をぶらつこうかな。気になった店にでも入ったりして)」
そう考えているとミリアさんが思い出したかのように忠告してくれる。
「あ、そうだわ。アルベールさんはこの街は初めてだったわよね?」
「そうですね。というか森から出たのも初めてです」
「だったら知らないかもしれないけど今はアヴァロフ山には近づかないほうがいいわ」
「アヴァロフ山?」
「あそこだよ!」
メリアちゃんに手を引っ張られて宿の入り口へ。そこから見える大きな雪山を指差す。
「あの雪山がどうかしたんですか?」
俺はついて来たミリアさんに忠告の意図を問う。
「数年前からアヴァロフ山は猛吹雪でとても人が歩ける状態では無くなったのよ」
「魔物も少なくて登山客にも人気な山だったんだがな。冒険者や国が調査しようにも雪が凄すぎて調査自体が難航してんだよ」
「へえ~、大変ですね。わかりました、ありがとうございます」
ちょっと気にはなるがせっかく忠告してくれたんだから従うことにした。
「(やっぱり外見上で上っぽかったら敬語になっちゃうな。この世界での俺の経験の少なさも出てそうではあるけど)」
結局は2人に対して敬語で話してたりする。そんなこんなで朝食も終わったので街中をぶらぶらすることに。
「う~ん……観光もまだ知らないところとかあるからいいけどすぐに飽きるだろうし……お金も稼ぐ必要があるしな~……やっぱり冒険者になるべきかな?」
そんな感じで悩みながらも串肉を片手にぶらぶらしながら気になったお店に入ったりしていると街の端っこのほうにやってきた。
「子供が何人かいるな。あそこなんなんだろう?」
近づくと判明する。爆発するような音や切り裂くような音に鉄がぶつかるような甲高い音。
「騎士たちの訓練場か」
剣での打ち合いや魔法を放ったりなどそのような様子を子供たちは目を輝かせて憧れの眼差しで見ている。
「おれ絶対将来騎士になる!」
「俺も俺も!」
「お前は昨日冒険者になるって言ってたじゃねえか!」
「僕はどうしようかな!どっちにしようかな!」
種族関係なくそう語り合っている子供たちを見て微笑ましく思うと同時にその訓練で気になったことがあった。
「全然詠唱しないな……魔法の訓練をするやつらも無詠唱か詠唱破棄ばかりだし……」
それはヒューマンやビーストに限らずエルフでさえそうであるらしい。
「詠唱魔法の訓練はしないのか?」
そんな俺のつぶやきが子供たちの耳に入ったのか最初にヒューマンの子供がからかうように言ってきた。
「おじさん知らないの?詠唱魔法は時代遅れで役立たずの魔法なんだよ!」
「おじさん大人なのにそんなことも知らないの?」
「おじさんエルフでしょ?長く生きてるのに知らないなんて馬鹿なんじゃないの?」
さんざんの言われようである。しかしそんなことよりも気になった言葉があった。
「詠唱魔法が時代遅れで役立たずの魔法?はあ?」
心から理解できない。当然ながらその子供たちの言葉は間違いだ。
「(詠唱魔法は確かに詠唱しなければいけないというデメリットがあるが威力や規模でいえば詠唱魔法が一番大きい。というより詠唱魔法が本来の魔法であり詠唱破棄だったり無詠唱なんかは半端な魔法なんだが)」
百歩譲って時代の流れとともに寿命の短いヒューマンの世界でそう捻じ曲がって伝わるというのは理解できるが・・・
「(この街にはエルフが何人もいるんだぞ?というかあの騎士たちの中にもエルフがいるし。なんで本当のことを教えないんだ?)」
俺が頭を悩ませていると1人の男の子がじっと俺の顔を覗き込んでくる。一応フードをかぶっているが下から覗き込む子供たちには効果がない。そしてその子はエルフだった。
「……あの……おじ、おにいさんは……本当にエルフ、なの?」
「あ、いや……それじゃあ」
疑われたので俺はその場をそそくさと立ち去った。
「ふう……子供だったからエルダーエルフをわからなかったのか。よかった」
こうして俺の正体がバレるのも時間の問題の気がするがこうして俺はこの街を楽しんでいる。
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