第8話 安らぎの箱
俺はロザンヌ王国シェード街にやってきた。
「とりあえずフードさえかぶっておけばいかるかな?」
街中には当然ながらエルフがいる。そのためバレれば騒ぎになる可能性が高いのでフードをかぶって歩いてみることに。
「ほあ~……これが異世界の街か~……」
その街並みを見て改めて俺は異世界に転生したのだという実感が芽生えた。
「グレイボアの串肉だよー!おいしいよー!」
「ルプルの果実水よ!水魔法で冷えてるから一層おいしいよ!」
「エルフに古くから伝わる首飾り!お土産にどうですか!」
街中が賑わっている。みんなが種族関係なく笑顔で歩いている。エルフとビーストとヒューマンの子供たちが一緒にかけっこをしている。
「……」
その光景を目にして感慨深い気持ちになりながら俺は街中を歩く。
「街を楽しもうにもお金がないんだよな~。冒険者にでもなるか?」
転生した当初なら冒険者も憧れたかもしれないが今となっては旅ができればそれでいいので必ずしも冒険者になる必要はない。
「とりあえず採取したこれをどっかに売りたいんだけどな~」
俺は街の人に薬草などを見せて売れる場所を聞いて素材屋にやってきた。
「いらっしゃい」
ヒューマンのおばあちゃんが1人で店の中にいた。
「売りたいんですけど?」
「見せな」
「はい」
ぶっきらぼうにそう言われ俺は鞄の中にある素材をおばあちゃんの指定した机の上に置いていく。するとおばあちゃんの目つきが変わった。
「ほう?これは……」
じぃーっと薬草などを見てから俺を見てくる。それに反射的にフードを深くかぶる。
「あんた……姿を隠しちゃあいるがエルフだろう?」
「どうしてわかったんですか?顔、見えました?」
そう問うとおばあちゃんは首を横に振って否定する。
「いんや。発見が難しい薬草や毒草との判別が困難な薬草があったり。そもそもが薬草の採取の仕方が手馴れてる。こんなことをできるのはベテランの冒険者かエルフって相場は決まってんだよ。あんたは顔が見えなくても肌を見れば若い姿なのはわかるからね」
「そうなんですね。すごいな~」
俺は深くかぶっていたフードを浅くした。これで普通に顔が見えると思う。
「あんた冒険者かい?この魔石も上級が3つもある」
「いや俺は旅人ですよ。最近になって森から出てきたんです。外の世界に興味があって」
「なるほどね……ならひとつ忠告だ。この国はヒューマン以外の他種族とも仲良くやってるがほかの国はそうじゃない。旅をするんならそこらへんも気を付けるんだね」
「忠告ありがとうございます」
そうしておばあちゃんは鑑定を済ませる。
「それじゃあ15万Gね。ちょっと色を付けておいたよ」
大銀貨1枚に銀貨4枚に大銅貨10枚だった。ちなみにお金の勉強は森でも師匠ともしていたので問題ない。
「こんなに……ありがとうございます」
そうして俺は素材屋をあとにした。ちなみに大銀貨が10万Gで銀貨が1万G。
「本来なら銀貨が5枚でいいのに街中だと使いにくいって思ってくれたのかな?優しいなあのおばあちゃん」
できたお金で食べたり飲んだり雑貨や服を見て回ったり。当初は少し戸惑いもあったが今ではすっかりと街を楽しんでいる。すると日も沈み始めてきた。
「あ、もう夕方か。泊まる宿を決めないとな」
でも宿は街に入る前から決まっている。
「メリアちゃんに会いに行くか」
俺は街中を楽しんでいた時に把握していた"安らぎの箱"へと向かう。
カランカラン
「いらっしゃい。あら?確かアルベールくんだったっかしら?」
「ええ、言われた通り泊まりに来ました」
「うれしいわ。ちょっと待ってねいま娘を呼んでくるわね。娘がずいぶんとあなたに懐いたみたいでずっと来るのを楽しみにしていたのよ」
そうしてメリアちゃんのお母さんのミリアさんが宿の奥へと行く。すると、
ドンドンドンドン!
という大きな足音が聞こえてくる。
「お兄ちゃんだー!」
がしっ!
メリアちゃんに抱き着かれた。
「(なんでこんなに懐かれてるんだろう?)」
メリアちゃんの後を追ってミリアさんがやってくる。
「ごめんなさいね?メリアが迷惑をかけて」
「いいえ、全然。こんなに懐いてくれるのは純粋にうれしいですよ」
「そう言ってくれるとありがたいわ」
そうして俺は安らぎの箱で宿泊することに。厨房にいたドズルさんにも挨拶をして案内された部屋へと行きベッドで横になる。
「ふう~……しばらくはこの街で暮らすってのもいいかもな~……」
人間社会に慣れるためにも俺はしばらくはこの街で暮らすことに決めた。
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