第10話 アヴァロフ山
数日が経過してこの街のこともある程度は把握できた。あと気になるのは、
「やっぱりあの山かな……」
アヴァロフ山。猛吹雪が続き冒険者も政府も調査に乗り出すも難航しているという雪山。
「ミリアさんには近づかないほうがいいって言われたけど……気になるから近くまで行ってみるか」
というわけで俺はアヴァロフ山に向かって歩きほどなくして到着。
ブオオオー!!
アヴァロフ山の麓までやってきたわけだけどもうすでに吹雪がすごい。
「これは……自然現象じゃないな……山頂に強い気配がする……」
おそらくこの猛吹雪はあの強い気配が原因だろう。
「……自然に影響を与えるほどの魔物……この気配からしてもおそらく龍の類か……近くで見るだけのつもりだったけど……」
訓練場で見た騎士たちを思い浮かべる。
「あれがすべてじゃないかもしれないけど……さすがに討伐できる未来は見えないな……」
万が一街に降りてきたときにメリアちゃんたちが被害に遭う可能性を考え俺は動くことにした。
「風よ、我が歩みを妨げるな。風道」
風道によって風の結界が自身の周囲に発生。これによって猛吹雪を受けずに登山できる。
「よし、行ってみるか」
これで俺はアヴァロフ山を登る。魔物も存在せず猛吹雪で周囲が見えない。
「これは……相当魔法に長けてないと歩くことすら無理だな」
山頂に近づくほどに猛吹雪は激しさを増していく。そんな状況でも俺は風道があるため普通に歩けるし寒さも感じない。
「本来は対風魔法のためのものなんだけどな。こういうのも旅をしないと気づけないところだな~」
結果の外では超猛吹雪。しかし俺は普通に登山する。そしてゆっくりと登山して数時間が経過し山頂付近に到着。
「あれか……やっぱり龍がいたか……」
俺の目線の先には銀色に輝く龍が眠っていた。
「存在するだけで周囲の環境を変化させる……それが龍だけど……さすがに街と近すぎる。 素直にどっか行ってくれれば楽なんだけど……」
俺が雪龍の下まで近づくとその気配に目覚める。
「……グゴオオ……」
起こされたことに怒っているのかこちらを睨みつける雪龍。
「なあ?悪いけどどっか行ってくれないか?ここは人間の街と近すぎる。もっと人のいない場所に移ってほしい」
「グゴオオ……グゴゴオオオオ!!!!」
バリバリバリバリ!!!
ただ叫ぶだけで周囲の木や岩などを破壊する。
「結局はこうなるか」
どうやら俺の提案に怒ったらしい雪龍が俺に向かってブレスを吐く。
「ブオオオオオオ!!!」
それは雪のブレス。それに当たれば凍死は確実。体がバラバラになり遺体すらも残らないだろう。俺はそれに風道で対抗するが徐々に浸食されていく。
「さすがに風道でブレスは防げないか」
俺は風道が壊される前に空へと逃亡。無詠唱の飛行を発動した。
「空中対決と行こうじゃないか。雪龍よ」
「グガアアアア!!!」
風道を解除して俺は雪龍と空中対決に移行した。
「(さすがにあれ以上攻撃を受けたら雪崩がいつ起こってもおかしくないからな)」
今でも先ほどブレスにて小さな雪崩が発生している。幸いなのがアヴァロフ山に近づく者がいないこと。
「グゴオオ!!!」
ブオン!!!
雪龍が俺に向かって急激に接近。そのまま体当たりのつもりだろう。
「我、風を行く鳥のように。飛行」
俺は飛行を詠唱しなおして自在に空中を飛び回る。
グイン!
「グゴオオ!!!」
そんな俺についてくる雪龍。ブレスを吐いたり雪玉をぶつけてきたりなどで俺を殺そうとしてくる。
「空中対決なら俺も慣れてるんだよ!3.000年もあったからな!風針!」
風の針を無数に作り出して雪玉に対抗。ブレスに関してはタイミングよく避けるしかない。
「風よ、刃となりて切り刻め!風刃!」
風魔法でよく使っている攻撃の魔法。最大の威力で放ったそれだったが、
パン!
「グガアアア!!!」
「ちっ!龍にやるには威力が足らないか!」
少し傷をつけただけに終わった。龍の表皮はそれほどに硬くできている。
「風魔法だと龍が相手だと威力が弱い!翠にしないと!」
それは俺の本気の風魔法。翠に輝く魔法であれば龍の表皮を突き破り大きなダメージすらも可能だろう。
「くっ……!ウォーミングアップは終わりか!」
徐々に雪龍の速度が上がってくる。空の支配者たる龍の前では俺の飛行でも後れを取ってしまう。
「翠は長い詠唱がいる!この今の状況だと無理か!」
「グガアアア!!!」
飛ぶことに集中しないと雪龍に叩き落されてしまう。さらにこちらは掠ることすら許されない状況。
「龍が相手の時は無傷の勝利が必要なんだから無茶すぎる!」
俺は基本的に回避での戦闘を好む。それは俺が使用する風と雷の魔法だと防御の面で弱いから。だからこそ一撃一撃の威力が大きすぎる龍が相手だと防御は意味をなさず威力を半減させたりもできない。一度受ければ即死となる。
「だけど風魔法では威力が弱く雷魔法でも黒とまではいかなくても雷撃砲レベルの高威力の魔法が必要!」
黒は風魔法の翠と同様に長い詠唱を持つ雷魔法の本気の姿。しかし黒ではないにしろ雷撃砲もまた長い詠唱が必要となる。
「グガアアア!!!」
またブレスが吐かれる。それに見て俺は一か八かを選ぶ。
「くっ!師匠に賭けてみるか!」
グイン!
俺は急転回して雪龍の上へと乗る。
「我、雷となりて音も超え光も超えん!雷迅!」
身体に雷が落ちて雷速移動が可能。そして今回は師匠の刀"白鷺"にも雷を宿した。
「グアアアアア!!!!」
俺を振り落とそうと雪龍が激しく揺れる。
「くっ……!折れたらすいません!朧抜!」
俺は雪龍の上から雪龍に居合を見舞う。それは本来なら影抜を用いての神速の居合術。しかし今回は雷の速度で雷の刀と化した白鷺を下方向に一閃。
「グギャアアアアアア!!!!」
雪龍の背中を大きく切りつけることに成功。そのまま雪龍は地面へと急降下。その時に俺は地面に人影が見た。
「しまっ……!?」
ドゴン!!!!
ドサァー!!!!
雪龍の落下により大雪崩が発生。このままでは人が巻き込まれる。
「間に合え!!」
グイン!
急加速して人影の前に躍り出る。人影は2人おり一人は知っている子だった。
「お兄ちゃん!?」
「岩壁!」
ドサァー!!
なんとか土魔法で岩の壁を発動したことで大雪崩からメリアちゃんを守ることができた。
「メリアちゃん……なんでこんなところに?」
「あのね……お兄ちゃんがこっちのほうに歩いていくのを見たって聞いて……気になってきたの……ごめんなさい……」
「いや、別に怒ってるわけじゃないけど。ちょっと行ってくるから宿に帰ってもらっててもいいかな?」
「うん!わかった!」
俺はメリアちゃんの頭を撫でてから先ほどの一撃で弱っている雪龍を仕留めるために上空へと向かう。もう一人の人物が俺を凝視しているのを無視して。
「……エルダーエルフさま……」
これで俺は大人のエルフにエルダーエルフだとバレた。
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