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58.原初の夢
これは夢だとすぐに理解出来たのは、何故なのだろう。
見上げれば、灰色の空は怒りによって焼き尽くされていた。
崩れた城は何も語らない。
瓦礫の山となった広間の中心に、玉座だけが静かに残されていた。
そして。
そこに私は立ち尽くしていた。
私は足元に無造作に転がる肉塊を見下ろしていた。
首をねじ切られたような人間の頭部が、血溜まりの中に沈んでいる。
沈黙。灰。死の臭い。
やがて、無数の足音と共に兵たちが扉を押し開け、雪崩れ込んできた。
武器を構え、怯え、けれど憎悪に燃える有象無象の中のひとりが、震える声で言う。
「…………魔王だ」
それは、世界を滅ぼす敵を指す言葉。
その言葉が聞こえた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
違う、と思った。
兵士たちのその憎悪に満ちた視線が――紛れもなく、私を射抜いていた。
あぁ、それでも、隣には彼がいた。
これが夢だったのか、誰かの記憶だったのか。
それとも――竜が生まれる瞬間に見ると言う、私の原初の夢なのか。




