表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
戦乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/87

第46話 「勝利の代償」

戦場に漂う煙はまだ消えていなかった。

 倒れ伏した〈破城鬼〉グラドの亡骸は巨大な岩のように横たわり、その周囲で兵士たちが歓喜と安堵の声を上げていた。だが、その笑顔の裏には深い疲労と傷が刻まれている。

「……なんとか、終わった……のか」

 アレンは剣を杖代わりにしながら、血の匂いが充満する空気を吸い込んだ。勝利は確かに掴んだ。だが、それは決して「無傷の勝利」ではない。

 仲間の一人、槍兵の青年が担架に乗せられていく。脇腹に深い傷を負い、意識はあるが声が出せない。

 別の兵士は片腕を失っていた。泣き叫ぶ家族の声が、崩れた城壁の向こうから響く。

 リオナが必死に祈りを捧げ、負傷者を癒やしていく。だがその顔色は蒼白で、魔力も限界に近い。

「これ以上は……もう……」

「リオナ、無理するな。お前まで倒れたら意味がない」

 ユウマが支えながら優しく諭した。彼自身も肩口から血を流し、立っているのが不思議なほど消耗している。

「勝ったはずなのに……どうして、こんなに胸が苦しいんだ」

 アレンは低く呟いた。仲間と民を守りきったはずなのに、犠牲の大きさが胸を圧迫していた。

 そのとき、遠方から馬の蹄の音が響いた。

 現れたのは王都から派遣された伝令兵だった。彼は顔を蒼ざめさせ、息を荒げて叫ぶ。

「大変です! 北の国境で……ヴァルゼン帝国軍が進軍を開始! すでに数万の兵が集結し、こちらに迫っています!」

「……帝国軍だと?」

 アレンは目を見開いた。グラドとの戦いで既に兵力の多くを失ったというのに、今度は帝国軍が押し寄せてくる――。

「待て、それじゃ……この勝利は……!」

 ユウマが唇を噛む。グラドを倒しても、結局は帝国の大軍勢が待っている。

「奴ら、最初から狙っていたんだろうな」

 冷静に分析したのは仲間の剣士ライラだった。

「破城鬼をぶつけ、こちらを疲弊させたところで本軍が動く。卑怯だが、戦略としては理にかなっている」

 アレンは拳を握りしめた。

「ふざけるな……! あれだけの犠牲を払って勝ったというのに、まだ戦わなきゃいけないのか!」

 怒りと絶望が入り混じる。だが同時に、胸の奥に燃えるものもあった。

 ――ここで折れるわけにはいかない。

 犠牲になった仲間のためにも、守ると誓った人々のためにも。

「ユウマ、リオナ、みんな……」

 アレンは仲間たちを見渡した。

「次は、帝国軍との戦いだ。俺たちは……まだ終わってない!」

 ユウマは静かに頷き、剣を握り直した。

「そうだな。ここで止まれば、今日の戦いの意味がなくなる」

 リオナも震える体で立ち上がり、祈りの指を組む。

「神にすがるだけじゃなく……私も戦う覚悟を決めます」

 仲間たちの決意が集まった瞬間、戦場に再び新しい火が灯った。

 だがその炎の行く先は、さらなる地獄に続いているのかもしれない。

 空を見上げると、黒い雲が厚く広がっていた。まるでこれから訪れる嵐を告げるかのように――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ