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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
戦乱編

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第44話 「決意の灯火」

夜空を裂くように響いた号令と共に、戦場は再び轟音に包まれた。

 火の粉が舞い、鉄と鉄のぶつかる音があちこちで鳴り響く。ユウマは剣を構えながら、迫りくる敵兵を一人、また一人と斬り伏せた。だが、その瞳には焦りが宿っていた。

 ――この戦いが長引けば、仲間を守りきれない。

 後方ではリオナが詠唱を続け、結界を維持している。だが、彼女の額には汗がにじみ、肩で息をしていた。魔力の消耗は限界に近い。さらにアレンも腕を負傷し、血で濡れた布を押さえながら必死に槍を振るっている。

「ユウマ! 俺はまだ動ける……! だけど、長くは持たない!」

「分かってる! けどここで退けば、街が――!」

 振り返った先には、戦火に怯え震える人々の姿があった。

 守るべきものは、仲間だけじゃない。この街全体だ。

 敵軍の中央から、ひときわ巨大な影が迫ってくる。黒い鎧に身を包んだ大男。圧倒的な威圧感を放ちながら、血塗られた斧を引きずっていた。

「……あいつが敵の将か」

 ユウマは息を呑む。周囲の兵士たちが大男の出現にどよめき、一気に士気を上げていく。

「ユウマ! あれは〈破城鬼〉グラド! 要塞をいくつも落とした猛将よ!」

 リオナが声を震わせて告げる。伝説に名を残す戦鬼。その名を知るだけで兵たちは足を竦ませた。

 だがユウマは後ずさることなく、一歩前に進んだ。

「――ここで退くわけにはいかない。俺が行く」

「待ってユウマ!」リオナが叫ぶ。

「奴は人間じゃない、怪物よ! 今のあなたじゃ……!」

「だからこそだ!」

 ユウマの声は鋭く響いた。

「仲間が傷ついている。守りたい人たちがいる。なら、俺が立たなきゃ誰がやるんだ!」

 握りしめた剣に、震えはなかった。

 かつて臆病だった少年は、今や仲間の盾となることを選んだ。

 グラドが大斧を振り上げ、地を揺るがすように突進してくる。

「小僧ォ! 命知らずが!」

 衝撃波と共に襲い掛かる斧。その重さに、普通なら剣ごと弾き飛ばされていたはずだ。だがユウマは全身全霊を込めて受け止め、土煙を巻き上げながら踏ん張った。

「ぐっ……!」

 腕が痺れ、足が沈み込む。それでも折れない。

「ユウマあああ!」アレンの叫び。

「やめて! 死んじゃうわ!」リオナの悲鳴。

 仲間の声を背に受け、ユウマは逆に踏み込んだ。

「俺は……死なない! まだ、やるべきことがあるんだ!」

 剣に宿る光が、闇を裂いた。

 ユウマの体から放たれる輝きは、仲間たちの心に希望を灯す。

 アレンは歯を食いしばりながら立ち上がり、リオナも再び詠唱を始めた。

 絶望に覆われていた戦場に、わずかながら光が差し込んでいく。

 グラドは唸り声を上げ、ユウマを押し潰そうと力を込める。

「人間が……希望を語るなァ!」

「希望は……捨てるもんじゃない!」

 ユウマの叫びと同時に、剣から爆発的な光が溢れた。

 刹那、戦場全体を照らす閃光。

 兵士たちの目に焼き付いたのは――一歩も退かず、巨躯の怪物に挑む少年の姿だった。

 その背は小さいはずなのに、誰よりも大きく見えた。

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