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アンチテーゼ/アンライブ  作者: 名無名無
第二章 霧の街のミステリー
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真偽を確かめるべく向かった先にて

 ロットに教えられた場所へ向かうため、アンナとマイルス、ロウの三人は街を北上する。


 街の北門を出て、とうとう外へ。そして空気が突然(さま)変わりし、周辺は少し蒸し暑く、霧が濃いというよりも少し煙ったくなっていった。


 門を出て少ししか歩いていないというのに環境が突然変わるのだから、自然とは計り知れないなと思いつつ前へと歩き続ける。


 そして地図によるともうすぐ黄色い土の大地があり、そこへ後少しというところで、ロウに肩を掴まれ引き止められた。


「それ以上行くでない」


「ど、どうして......」


 ロウが地図を取り上げて、今立っている場所を指さしてアンナに見せる。

 続けて地図上だと黄色い大地がある場所を指さし、「ここ(黄色い大地)は有毒ガスが湧き出る危険地帯じゃ」と教えてくれた。


「なるほど」と言って頷く。


 そういえば、この街に来るときは山脈を通ってきて、しかも街には常に霧があって肌寒いと感じていた。

 街の道中では、少し上を見上げると雲を突き抜ける山肌が見えていた。


 そして今聞いた「有毒ガス」という点からして、要するにここは火山なのだろう。


 若い頃の話だ。あの頃(前世)はもともと田舎地帯に住んでいて、山を登ったことがあるので、有毒ガスの危険性や侵入禁止になる理由も理解できる。


 しかし困った。情報通りだと今いる場所で獣が現れたというが、これ以上は進めそうにない。


「やっぱり嘘だったんじゃねえか?」と早くも諦めた様子で肩をすくめ、気だるそうにするマイルス。


 同じくロウも、何度もハズレの情報を掴まされた影響からか、諦めが早くなっているようで「そうかもしれんなぁ」と少し弱気につぶやいた。


 あのロットが嘘をついて、アンナたちをこんな場所に連れてくるとは考えにくい。もし騙したとして、彼になんのメリットがあるのだろうか。

 それに、今まで聞いた情報の中で一番「腐食現象」について詳しく説明してくれたのはロットだった。


「ウチ、もう少し周りを探索してみる。皆はここらで待ってて」


「......アンナが頑張るならオレだって少しはやるよ」


 張り切るアンナを見習って、重い腰を上げて調査に協力してくれるマイルス。ロウは「ワシはここで座ってる」と言って、その場に留まるつもりらしい。



 こうしてマイルスとアンナはそれぞれ別方向に向かって歩き、捜索を開始する。


 捜索で目にしたのは、山肌を覆う赤い大地と、ゴロゴロと転がっている膝ぐらいまである大きさの岩。それと大きな獣の足跡くらいだ。


 どうやらこんな辺境にも獣がいるらしい。それだけでロットの言っていたことに信用を持てる。


 そうして少し歩くと、奇妙なものを見つけた。


 地面の下からわずかに覗いて見える、小さな金属。それが円状に均等に並んでいて、真ん中には大きな肉の塊が置いてあった。


 一眼見ただけでわかる。あれはトラばさみのような道具を使い作られた、対獣用のトラップだ。


 しかし先ほど見た大きな獣の足跡から察するに、あの程度のトラップではすぐに逃げられてしまう。


「......足止めが目的だとしたら」


 しかし、あくまで狙っているのが獣の足を留めることならば、獣にトドメを刺すためこの辺りに誰かが隠れているはず。


 そいつを炙り出すため、あえてトラップの近くに寄って、引っかかるギリギリのところで足を止めることにした。

 すると足を止めるよりも早く「待て!」と制止する声が聞こえ、その声がした方を見る。


「そこにはトラップがある! こっちに来てくれないか!」


 声の感じからして男だろう。それも若者の放つ声とは違い、少し落ち着いた声と口調である。

 姿は見えないが、声のした方へ歩いて行くと、岩に隠れていた男が姿を表した。


「お前.......。こんなところで何をしている? ここは獣が出るハンターの狩場だ」


「お仕事中にすみません、ハンターさん。少しお話を伺っても?」


 岩から顔を出したハンターの男。目には見たことないゴーグルをかけていて、この辺の大地と同じ色の帽子と迷彩服をきている。パッと見るだけだと、同化してて気づけない。


 そんな彼に図々しいかもしれないが話を伺おうと試みる。

 最初は突然のお尋ねに戸惑うハンターだったが、少し考え込んでから「まあ、話くらいなら」と曖昧だが返事をもらえたことで、早速聞きたいことを聞いてみた。


「このあたりに妙な獣とか、妙な現象があったりしましたか? それも最近の話で」


「妙?」と強調した言葉に反応を示すハンター。記憶を探るため頭を親指で押しながら考え込み、そして「いや......」と口を開いた。


 耳を傾ける。アンナの目が、「この人は何かを知ってそうだ」となんとなく感じたからだ。


「妙なことはなかったな。ここらの獣も付近の様子もいつも通りだぞ。どうした、何かあったのか?」


「......そうですか。いえ、なければいいんですけど」


 だが予想とは違い、さらりと彼は「何もなかった」と言い退ける。


 期待していたが、どうやら今回もハズレだったようだ。

 肩を落とし落ち込む。両肩に大きな岩が乗っかるかのように、気分も気だるさも増してしまった。


 ハンターに別れを言って立ち去ろうとすると、マイルスとロウがアンナの方へやってくる。


「こっちはなんともなかったぜ。どうせ待ってても暇だし来てみたけど......」


「ハズレだったようじゃな」


 落ち込むアンナの様子から状況を察して、ロウはため息を吐いて目頭を抑えて、マイルスは「またか〜」と項垂れる。


「なんだあんたら、急にゾロゾロと......」


「あ、ああ。この人たちはウチの仲間で、ちょっとギルドを通して調査をしていたところなんだ。あるハンターの情報だと、ここらに異常があったらしいけど......」


「ギルド......。なるほどな」


 ハンターがふむふむと頷き、状況をみてこれ以上進展がないと感じたのか、マイルスとロウの二人は無駄足だと思ったようで勝手に帰ろうとする。


「お先にじゃあな〜」


「あっ、ちょ......もぉ、せっかちな男どもめ」


 その二人の背中を目で追う。これ以上離れると見失いそうなので、ハンターに別れを言おうとすると、何か言いたげな様子だったので聞いてから帰ることに。


「しかし調査ときたか......」


 その時、ハンターの人が「誰がそんな(異常)について言ってたんだい? 同じハンターなら後で話を聞いておくけど」と言うので、緑色の髪、ちょっと濁った白い瞳、そしていつもボロボロの服を着ているハンター「ロット」の特徴と名前を教えた。


 しかし、特徴の全部を聞き終えたハンターは眉を額に寄せて、首を傾げて「()()()()()()()()?」と呟く。


(えっ? あんな特徴的な人を覚えてないのか?)


 ロットのことを、まるで知らないといったように語るハンター。


 その態度にアンナも妙な違和感を抱き、腕を組んで彼とと同じように眉を寄せて「う〜ん」と唸りながら考えていると。


 ——バキバキッ


 どこかの木が薙ぎ倒される音が聞こえてきた。

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