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アンチテーゼ/アンライブ  作者: 名無名無
第一章 旅の幕開け
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圧倒的な戦闘力

「攻撃に回避。全てが速い......です」


「ええそうよ。あれが彼が編み出した戦術。誰にも真似できない、繊細な魔力コントロールと、強靭な肉体に神経伝達の速さ。ありとあらゆる天性の才能と努力を募らせた、彼の()()()()()()最強戦術」


 敵をぶん投げるほどの怪力。無数の矢をかわし切る最強の反応速度。片足での跳躍。攻撃の速さ。

 それら全てを駆使して敵を刈り取る最強の戦術。


 今まで聞いたことや、目の前で起こる圧巻の戦い。それらの事実を頭の中にインプットするうちに、その凄まじさに圧巻されてごクリと唾を飲み込む。


「最強戦術『ブラック・バード』。ちなみに命名したのはアタシね。まるで鳥みたいに飛んでいきそうだなって、初めて見た時にそう思ったのよねぇ」


「な、なるほど......」



 こうしてデリバーの戦術によって、敵は全て返り討ちにあった。


 全員ネイさんの魔法だか魔術だかよくわからない、何か特別な術で身動きを封じられた。

 体の動きが封じられており。顔の覆面を全て剥がされた状態で拘束されている。


「ネイ。こいつらの情報は引き出せそうか?」


「もう()()けど、まあ想像通りね。今まで同じやり方でいろんな人が餌食にあったらしいわ」


 二人で敵について情報を探っている中、アンナは荷物のそばに立つ。


 その際、拘束されて顔以外動けない泥棒たちのうち、覆面を剥ぎ取られた歳の若い男を見つめる。

 年が若いと言っても、どう見たって外見はアンナと同じがそれ以下の子供だ。


「なんだよ」


 不服そうにこちらを睨み、「気持ち悪い。見るな」と悪態つく男。

「なんでこんなことやったの?」と、小さい子供に対して説教するように聞いてみる。


 その扱いが気に入らなかったようで、舌打ちして無視しようとするも、じっと見つめるアンナに押し負けて、本音を口にしてくれた。


「生きるためだ。お前らが動物殺して食うのと同じ、仕方なくだ」


「......そうか」


 そう言って黙り込む男。これ以上口を開いてくれそうにない。


 そして彼の一言。「仕方なくだ」という言葉。

 そいつから察するに、恐らくお金を持たず、悪党になる以外の道がなかったのだろうか。と彼のバックボーンを考える。


 心を殺して他者を傷つけ、奪い取った金品で生活する。

 そんな生活をしていても気持ちの良いものではない。それは少年の目を見ればわかる。辛い生き方だ。


(ずっと下を見てる......)


 アンナが話しかける前も、そして話し終えた今も。この子はずっと下を見ていた。

 夢も希望もない。何か似たようなモノを感じる。


 しかしどうすることもできない。なんだかもどかしい。

 そう考えていくう地に、自然と歯を強く噛み締めてしまう。


「どうした? 行くぞ」


「あ、うん。分かった」


 デリバーに呼ばれ、荷物を持ってこの場を離れる。


 襲ってきた敵たちは、デリバーによればギルドに飛ばした伝達用の使い魔で連絡し、逮捕してもらうらしい。


 逃げないかと不安になるが、ネイさんの拘束術はこの者たちには解けないということ。

 それに引き渡しの手順は見えない部分で済ませたと言っていた。よく分からない話だが。


「......ごめん」


 なぜかはわからないが、誰にも聞こえない小さな声であの男に謝りつつ、デリバーたちの後ろをついて行った。



 〜〜〜しばらく歩き続けていくと、とうとうやってきてしまった。

 ネイさんとの、お別れの時だ。


「ここでお別れね。少しの間だけど、楽しかったわ」


「ああ。ありがとな。また今度、会うことがあったら、そん時もよろしく」


 二手に分かれる道の真ん中で、最後の別れを済ませるデリバーとネイさん。


「ありがとうございました」


 アンナも深々とお礼する。この恩はこれからの生き方と功績、そしていつかの土産話として返すつもりだ。


「こちらこそ、ありがとう。楽しかったわ。ああそれと......」


 ネイさんが手持ちのカバンから、妙なモノを取り出した。


 それはごく普通のノートとボールペン。それをアンナに手渡しでくれた。

 これは何なのか。不思議に思って小首を傾げていると、ネイさんがノートを指さして一言。


「これになんでもいいから、思い出に残ったことは書いておくこと。どんなに楽しい思い出でも、生きていれば風化しちゃうからね。記憶するための大切な方法よ」


「なるほど」


 確かに記憶が風化することはよくある。

 日記を書くのに慣れているわけではないが、これからはなるべく意識しよう。


 そう決意し、ノートにボールペンを挟んで大切にバックパックにしまった。


「ああ、ちなみにあのボールペンはちょっと仕掛けがあるから。楽しみにね」


「は、はい。ありがとうございます。」


 いたずら心が悪さをしたようだ。ネイさんが「フフフ......」といたずらっ子のような、少し邪悪な笑みを浮かべている。


「全く......」とデリバーがため息を吐く。

 最初に会った時と同じように、ネイさんの行動にデリバーが呆れる。


「それじゃあ、またね!」


 ネイさんが手を挙げて元気よく別れの言葉を口にし、デリバーは無言で小さく微笑んで見送り、アンナは手をふり返した。


 クルッと身を翻して、反対方向の道へと進んでいくネイさん。

 その姿がどんどんと遠くなっていき、ついに目で追うのも限界になってきた。


「本当に、ありがとうございました......」


 その背中を目で追って見送りつつ、アンナはもう一度深くお辞儀をして感謝した。

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