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アンチテーゼ/アンライブ  作者: 名無名無
第一章 旅の幕開け
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街を出た矢先に

 この街に来た時に潜ってきた大きな正門。

 そこを潜って、街を出る。入る時とは違い、スムーズに街を出ることができた。


 何か忘れてないか不安になる。確認したので大丈夫だとは思うが。


(......こんなに大きいところだったんんだ)


 チラッと後ろを振り返って見ると、やはり街というよりは国に近いというだけあって、規模の大きさに圧倒される。


 遠目からでも見えた大きな屋敷。まだいったことない場所など、色々とあった。

 名残惜しいが観光に来たわけではない。


「んん〜。もうしばらく歩いて、そこでネイとお別れだな」


 地図を見ながら歩くデリバー。それに続く一行。

 そうして雑談を交えつつ、海でいうところの沖に出るような、人が誰一人住んでいないような雑木林の中を歩むこと数十分。


 動物がいっぱいいて、虫の羽音も混じって聞こえてくる。これぞ森という感じだ。

 そんな場所で三人が集まって動いていたのだが、デリバーとネイさんが突然足を止めた。


「どうし——」


 口を開き言葉を言い切る前に、アンナも異変に気づく。


 二人に遅れて気づいた形となったが、アンナ達の周りから首元を刃物で狙うような、鋭い殺気を肌で感じた。


(嫌な感じ......。前に二回くらい、経験したのと似てる殺意の塊だ。初めての依頼の時と、森の中での戦闘の時と......)


 二つくらいの殺気を感じる。しかし、それに加えて足音がいくつか、現在進行形で地面を蹴って移動する音が聞こえてきた。


「どうやらお出ましのようね」


「......複数いる!」


 ネイが腰に手を当てて周りを見渡し、アンナは左腕を前に構えて右手をポケットに突っ込む。腕と武器で応戦するためだ。


「ああ。コイツらがいなかったら、そもそもこの依頼がギルドに届くことすらなかったからな」


 対するデリバーは、右手に持った袋を地面に置いて、ネイさんと同じように周りを見渡し始めた。


 彼らが感じたのは明らかな敵意。それも複数のもので、動物ではなく集団行動を取って策略を練っている奴らの動きだ。


 前にデリバーが言っていた。素材回収の依頼ですら、道中を狙う悪党がいると。


 そして素材を狙われたわけではなかったが、ただの猟奇的な危険思想を持った、本物の悪党となら戦った。


 しかし今回は正真正銘、盗賊団のような連中だ。


 姿は見えないが、アンナは化け物故の能力値の高さから。

 他二人は長年の経験と持ち前の戦闘スキルから、相手が複数だと察知し、そしてデリバーの持つお宝を狙っているのも理解していた。


(配達物が貴重になればなるほど、それを待ち伏せして狙う輩も増える。売ればお金になるから当然か)


 今回は街から街へ。わざわざ依頼と称してお金を払ってまで、届けさせたい一品なのだ。その情報さえ掴んでいれば、街へ行くルートを把握して、襲えばいいだけの話。


 その方がギルド総本山の保管庫に侵入するという危険を冒すより、遥かに簡単で盗みも成功しやすい。


「お前らが考えていることはわかっている。無論、こうなることもな! 手の内は見え見えだぞ!」


 デリバーが姿の見えない敵に対して、地面に置いた袋を指差し、大きな声で言った。

 その声はなんというか、相手を舐めた態度にも感じた。


(煽ってる?)


「ああやって相手を挑発してるの。探すのが面倒だからね」


「なるほど......」


 ネイさんがアンナに囁き声で教えてくれた。

 教えてくれたネイさんも余裕の表情だ。警戒はしているものの、強者の余裕と言ったところだろう。


 そして少しもしないうちに、木の上から一人の男が降りてきた。

 見た目は全身黒い服。木の陰に隠れられると見分けづらい。


 その男が堂々とデリバーの前に立ち、「それを渡してもらう」と言って、問答無用で殴りかかってきた。


 早速戦闘の始まりだ。


 アンナも応戦しようと、デリバーに駆け寄ろうとするが。


「ネイさん!?」

「大丈夫」


 ネイさんに肩を掴まれて、足取りを阻まれる。

 どうしてか分からず混乱していると、デリバーが後ろにいる二人に向かって、自信たっぷりに。そして敵に吠えるように言った。


「俺がやる。かかってこぉい!!」


 デリバーを中心に、敵の殺気を飲み込むような、彼の凄まじい圧力が場を包み込んだ。


 それに萎縮したのか、最初に突っ込んできた男が何もないところで転ぶ。

 それをカバーするように、見えないところから矢が数本飛んできた。


「危ない!」


 人間なら貫かれただけで致命傷だ。

 しかし前方からだけでなく、背後から迫ってきていた矢ですら、完璧にかわして見せるデリバー。


 しかも地面に置いてあった袋から離れず、自分の手の届く範囲に収めたままの回避である。


 人離れした動きに呆気に取られていると、続いてデリバーに向かって三人の黒服たちが攻め込んできた。

 全員刃を片手に持ち、対するデリバーは武器を持たずお荷物を側に置いている状況。

 普通なら刺されて終わりだ。


「遅い!」

「うっ!!」


 しかし彼は違う。

 デリバーは突っ込んできた一人目の腕を掴み、軽く投げ飛ばした。


 その怪力も驚くべきだが、敵の素早い動きを簡単に見切り、カウンターを一撃入れただけでも正直すごい。


 そして続く二人目。そいつはただ突っ込むだけでなく、一人目の失敗を反省し、後ろの三人目と同時に挟んで攻める。


 しかも姑息なことに、三人目は二人目の背に隠れていたため、デリバーから見えない位置にいた。

 そいつが、ワイヤー付きの短剣を彼に向かって投げつける。


 デリバーは体を捻り少し跳躍し攻撃を避ける。しかし三人目の男がワイヤーをぐっと引っ張ると、不思議なことに短剣が彼の背中に刃を向けて迫ってきた。


 正直なところ、失敗を想定した上での次の攻撃の仕込みに感嘆しつつ、あれでは最初の一撃をかわした硬直でしばらく動けないところを狙われており、デリバーの背中に短剣が刺さってしまう。


 動けないところを狙った二撃目。その二撃目が外れたとしても、三人目がデリバーの死角に回り込み、持っている短剣で首を刈り取れる。


 敵だというのに見事な連携術だ。お互いの失敗をタイミングよくカバーできている。


「もらった......」


 敵の誰かが低い声でそう口にしたのを、アンナは耳にした。

 確かに終わった。もしあの場にいるのが自分だったら、どうすればわからず混乱しているうちに刺されて終わりだ。


 しかしというべきか、デリバーは予想を上回った動きでその窮地を脱した。


「えっ!? 跳んだ!?」


 一撃目をかわして動けなかったはず。しかしわずかに地面に触れた右足で、思いきり大地を蹴り上げて跳躍したのである。

 ありえない。アンナも敵も目を丸くして見ていた。


「なんだと!?」

「グァ!」


 そしてさらに人間離れした動きで、高さ五メートルほどまで跳躍したと思えば、森の木を蹴り飛ばして急降下。そのまま二人目の男を踏み潰し、戦闘不能状態にまで追い込んだ。


 地面が少し割れていて、あの飛び蹴りをもろにくらった以上、受け身をとっていた敵だったが、間違いなく骨が幾つか折れているだろう。

 その様を見ていたアンナの理解を助けるためか、ネイさんが少し自慢げに語ってくれた。


「あれはあいつの戦術。無駄なく最小限の動きで、それで確実に相手をもぎ取るスタイル。そのために特殊な『身体強化の魔術』を会得しているのよねぇ」


「身体強化......? それに特殊って?」


 その説明を聞いていた間に、デリバーが全てを終わらせていた。


 始末した敵の武器を取り上げ、そこらの長いツタをロープがわりにして拘束。


 そして最初に襲ってきて転んだままの男の方へいき、何か話しかけたと思えば、あたりから再び数人の敵が。


「ああ。ちょうどいいわ。あいつの動きをよく見てて」


「うん......」


 ネイさんに言われた通り、デリバーの動きをよく見てみる。

 複数の敵に囲まれて、その円の中心で立っているのが現状だ。


 しかし表情に焦りはなく、どちらかというと余裕の様子である。

 そして敵が一斉に駆け出し、一人一人段階を踏んで殴りかかっていく。


 攻撃の手を休めない手筈だろうが、悉くありえない速さでかわされ、「豪速」の2文字が似合うような速度で拳を入れられたり、蹴りを入れられたりしている。


 そしてその動きを見て、デリバーの攻撃の動作に対しあることを感じた。


「攻撃に回避。全てが速い......です」


 戦闘の様子を見たまま、答え合わせとしてネイさんに対して、気づいたことを言った。

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