プロローグ
よろしくお願いします!
俺こと、馬宮卓郎(32)は、島田繊維株式会社に勤める平社員だが、今日、上司の上島課長から一杯付き合え、と話をされた。
周りがザワつき、俺の中にもあるひとつの予感が過る。
仕事終わり、俺と上司の2人は会社の近くにある雑居ビルの一角のドトールコーヒーに立ち寄った。
アイスコーヒーを注文し、上司に続いて奥にある喫煙所へと向かう。
丁度向かい合わせの席が空いていたので、俺たちはそこに腰掛けた。
上島課長が胸ポケットからタバコを取り出し、口にくわえると、それに火を付け、ゆっくり煙を燻らす。
今日呼ばれた理由に何となく察しがついていた俺は、じれったい気持ちで上島課長の最初の言葉を待っていた。
ようやく、課長が口を開く。
「お前を昇進させようという話が出ている」
「ホントですか!」
思わず、席から身を乗りだす。
とうとう、俺も平社員から抜け出せる。
30代になってから、俺は焦っていた。
(同期で早い奴はとっくに主任に昇格してんだ)
昇進の目が無いと思って転職していった奴も多い。
そんな中で、俺は2年、我慢した。
課長がヤニで黄色くなった壁を見ながら言う。
「お前の企画した不死身靴下、アレの売り上げが好調でな。 俺が直々に社長に話をした」
「あっ、ありがとうございます!」
体の芯がが火照る。
最近、まともな話題が無い中で、久しぶりにいいニュースだ。
俺は高揚したまま話し始めた。
「あれはウケると思ってたんです! 穴の開かない靴下は、自分が入社した時からやりたいと思っていた案件で……」
「分かった分かった。 とにかくだ、おめでとうだな」
課長が手を差し出してきた。
それに答え、スキップでもしながら帰りたい気分に浸って、その日は帰宅した。
しかし、翌日事件は起きた。




