041 最強の防具を手に入れたので怖いものなしです。
「――ズハ。――カズハ」
……ん? あれ、誰か俺の名を呼んでる気がする。
………やべ。結構がっつり寝ちゃってたのかな……。もしかして。
「さっさと起きるアルよ!!」
「痛ってっ!? おい誰だ今ゲンコツで後頭部殴った奴!!」
あまりの痛さに涙目で飛び起きた俺。
周囲を見回すとそこはもうドラゴンルルさんの背中の上ではありませんでした。
居るのは口笛を吹いて目を逸らすタオと俺の様子を心配そうに眺めているセレンだけ。
あれ? 他の皆はいずこに……?
「やはり随分と体力を消耗していたようだな。ここはエーテルクランの宿だ。皆はもうゼギウスの小屋に向かっている」
「あ、そうなんだ。ていうか今俺を殴った奴タオしかいねぇじゃん。揉みしだくぞコノヤロウ」
「はぁ……。目覚めた端からセクハラ言うのは止めてもらえるアルか……。もう到着して小一時間は経つアルのに全然起きてこないカズハが悪いアル」
俺がいやらしい手つきでタオににじり寄ろうとすると溜息交じりで塩対応をしてくるタオさん。
あれ、もう全然反応してくれなくなった。つまんねぇの。
「カズハが寝ている間にセレンが傷の治療をしてくれていたアルよ。ちゃんとお礼を言っておくアルよ」
そう答えたタオは俺とセレンを残し部屋を出て行こうとします。
「あれ? タオは一緒にゼギウス爺さんの所に行かないのか?」
「行かないアル。何か知らないアルけど、この街は今厳戒態勢が敷かれているらしくて、帝国の兵隊がそこら中にわんさかいるアルよ。店もほとんど閉まっているアルし、この宿だけ唯一借りられたくらいアルからね」
「つまりタオは我らの食事の準備をせねばならんということだ。食材はどうにか宿の店主に分けてもらえたからな」
「…………」
………うん。忘れてた。
そういえばこの街を出発する時に盛大にやらかしたんだっけ……。
闘技場で過去の記憶を戻したゲイルが観客二千人を人質にして俺と戦って。
勝ったは良いけど、俺はそのまま奴を変装させてレイさんと一緒に帝都に向かわせました。
エリーヌはもう事情は知っているんだろうけど、実際に厳戒態勢を敷くのは宰相のザイギウスとかだろうからな……。
全部を説明するのも難しいし、帝都に向かわせたグラハムとも入れ違いになってるだろうしね。
「……もしかして、原因はまたお前アルか?」
部屋の扉の前で立ち止まったタオは笑顔のままそう口にします。
俺は何も言わずに目を逸らすしかできません。……いや! 俺じゃないし! ゲイルだし!
そして何故か俺の横にいるセレンが何も言わずにタオに頭を下げちゃったし!
そしてウンウンと唸ったタオはそのまま部屋を出て行っちゃったし!
なんなの! この空気!! 色々とおかしい!!
「大丈夫だ。そうやって皆、お前に慣れていくものだ」
「…………いや。全然、フォローに、なっていません……。いつも、すいません……」
俺の心を読んだセレンはそっと俺の肩に手を置いてそう言いました。
内面が全部筒抜けって、やっぱりちょっと……いや、だいぶ恥ずかしい……。
常に全裸を見られてるみたいな感覚だよなこれ。
……うーん……。まあいいか。減るもんじゃないし。
とりあえずベッドから立ち上がった俺は全身の状態を確認します。
セレンが介抱をしてくれたお陰か、ほぼ傷は完治してるっぽい。さすが鋼の肉体を持つ俺。
これならバッチリ魔王軍との再戦も可能だろう。
「それとお前が寝ている間に防具も用意しておいた。その下着もボロボロだからこちらに着替えろ」
そう言い綺麗に折りたたまれた服を俺に寄こすセレン。
「うわ! これアレじゃん! もはや俺のトレードマークの黒衣!」
「我はこちらの世界では『魔人王』だからな。主であるお前のほうがこれを着るに相応しかろう」
まるでロングコートのような大きさの黒衣を広げ、俺に着せてくれるセレン。
元の世界で俺が愛用していた『魔王』の象徴とも言える最強の防具。
やっべ、俄然やる気が出てきた……!
「まあでもお前、そっちの黒鎧も似合ってるもんなぁ。それに『ノーダメージバリア』のチートもあるわけだし。それって恒久的なモンなの?」
サイズぴったりの黒衣に袖を通した俺はいつの間に用意したのか、髪を縛る護謨と櫛を用意しているセレンに質問します。
まあこの世界に飛んできてから一回も髪を切ってないから、結構伸びてきて鬱陶しかったのは事実なんだけども。
でもその気持ちまで汲み取って俺の髪の毛のセットまで始めるお前は一体何者なの。
「この『世界』は基本的には我らの居た世界と同じルールに基づいて作られている。『魔人王』が倒されるのは物語の終盤、勇者による最後の剣閃のみだからな。つまり我を倒す条件は二つ。お前と、その勇者の剣のみだ」
「今は無理矢理史実を変えていっているけど、基本情報は一緒なわけだから、セレンはある意味無敵ってことかぁ。……ああ、あと『破理』もそうじゃね?」
「そうだな。それを含めると条件は三つになるな。そして、それは他の四魔将軍にも当てはまる。つまり、これから先の戦い――『帝都防衛戦』、そして魔王軍が進めている『竜人族殲滅戦』。そのどちらも『破理』を宿した武器を用いなければ勝てぬ可能性が高いということだ」
綺麗に俺の髪を梳かし終え、丁寧に護謨で後ろに一本に結んでくれたセレン。
あーなんかスッキリした感じ。やっぱこのスタイルが一番楽かも。
「……ちゃんと聞いていたか? カズハ?」
「え? あ、うん。聞いてた。大丈夫っしょ。俺とお前がいればもう、クリアしたも同然」
俺はその場でクルリと回って身体の状態を再確認します。
いいねいいね。あとはここにもう一本、最強の剣があれば最高。
そうなったら誰も俺を止めることは出来ない。たぶん。
「…………はぁ。まあ良いであろう。皆を待たせている。ゼギウスの所に向かうぞ」
「はーい」
俺は元気良くそう答え、セレンと一緒に宿を後にしました。
LV.75 カズハ・アックスプラント
武器:聖者の罪裁剣(攻撃力255)
防具:魔王の黒衣【覇道・雅】(防御力255)
装飾品:炎法師のイヤリング(魔力25)
特殊効果:斬撃強化(特大)、スキル威力強化(特大)、魔法攻撃力強化(特大)、光属性特効、闇属性特効、全属性耐性強化(特大)、全属性魔法詠唱時間短縮(特大)、敏捷強化(特大)、火属性強化(大)
状態:正常
魔力値:5811
スキル:『ファスト・ブレード(片) LV.25』『スライドカッター(片) LV.50☆』『アクセルブレード(片) LV.37』『スピンスラッシュ(片) LV.35』『ツインブレイド(二) LV.30』『ブルファイト・アタック(二) LV.25』『センティピード・テイル(二) LV.24』『ダブルインサート(二) LV.20』『エクセル・スラッシュ(二) LV.17』『ツーエッジソード(二) LV.13』
魔法:『力士(陰)』『蛇目(陰)』『塩撒(陰)』『隠密(陰)』『悪夢(陰)』『迅速(陰)』『鎖錠(陰)』『封呪(陰)』『奈落(陰)』『緊縛(陰)』『解縛(陰)』『弐乗(陰)』『斬鬼(陰)』『牙追(陰)』『激震(陰)』『縫糸(陰)』『ファイアボール(火)』『ファイアランス(火)』『ファイアエレメンタル(火)』『フレイムガトリング(火)』『フレイムトマホーク(火)』『フレイムバード(火)』『エンゲージブレイズン(火)』『バーニングソード(火)』『ファイアフォックス(火)』『ファイアバースト(火)』『ヘルファイアブレード(火)』『ヘルヴァナルガンド(火)』『ファイアメテオアーク(火)』『ゾディアック・フレイガウェポン(火)』『トレメンダス・ブレイズン(火)』『カグツチ(火)』
得意属性:『火属性☆』『陰属性』
弱点属性:『光属性』『闇属性』
性別:女
体力:5698
総合結果:『正常』
魔王の黒衣【覇道・雅】/全属性耐性強化(特大)、全属性魔法詠唱時間短縮(特大)、敏捷強化(特大)




