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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第十部 カズハ・アックスプラントと竜人族の姫(後編)
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040 空の旅があまりにも快適だったのでちょっとだけ眠らせてもらいます。

「ヒヒャッハーー! ああ、ウケたぜぇ……あの魔王と四魔将軍達の顔! それにこの『聖杖』……! 闇ブローカーに流せばトンデモねぇ値段で売り捌けるんだろうなぁ! なんたって世界三大魔法杖のうちの一つだからなぁ!! ヒヒャヒャヒャ!!!」


 魔王の間を後にした俺達は裏ルートを使い最上階から一気に一階まで駆け下りていきます。

 途中で全く敵に遭遇しないのは、恐らくまだ魔王の魔力封印が解かれていないからだろうね。

 これなら難なくルル達に追い付けそうです。


「……おい、良いのかカズハ? タオをこのままにしておいて」


 さっきから、というか魔屍王と戦っていたときからずっとうるさいタオに視線を向けそう言ったセレン。

 そろそろ俺のSPも回復してきたし、元に戻しておきますか。


「《緊縛》」


「あぁ……?」


 俺は無詠唱で陰魔法を発動。

 蒼と金の魔法の蔦がタオの背後から襲い掛かり彼女を拘束します。


「…………はっ! え? あれ? また私……『無慚』の状態になっていたアルか……?」


 キョトンとしたまま立ち尽くすタオ。

 でもグズグズしていられないからこのまま彼女を抱えて城の外まで駆け抜けます。


「ちょ、何するアルか! 降ろすアル! 尻を、掴むなアル……!!」


「ほい、聖杖。暴れて落としそうだから持っててセレン」


「承知した」


 俺に抱えられたままジタバタしているタオから聖杖をもぎ取った俺はそれをセレンに投げ渡します。

 あ、出口見えてきた。

 その先に大きく手を振っているリリィ達の姿も見える。


「あ、やっべ。フェロモン姉ちゃん見て今思い出した」


「? どうしたのだ?」


「王座の後ろに飾ってあった竜槍も一緒に盗んでくれば良かったぁ。あー失敗した」


「……ふん、そんなことか。ほれ」


 セレンは前方上空に右手を翳します。

 そこに亜空間が広がり、竜槍ゲイヴォへレストがゆっくりと降りてきます。


「え!? お前、持ってきてたの!?」


「当たり前だ。我は貴様の眷属だぞ? すっかり忘れていることくらいお見通しだ」


 そう言い鼻を鳴らしたセレン。

 うーわ、超デキる子。ていうかもう怖いもの無しじゃね?

 セレンさえ俺の側に居てくれれば、この世界でどんな奴が現れても負けない気がします。

 大好き。いますぐチューしたい。


「……貴様の『眷属』だと言ったのが理解できぬのか。全部、我に筒抜けだぞ……。貴様の脳内の妄想が全て」


「え、恥ずかし! やめてよ覗くの! ヒドイ!! プライバシーの侵害!! セクハラ!!!」


「セクハラはお前アル!!! 早く……降ろす……アルーーー!!」


「いたいいたいいたい! 分かった分かった!!」


 あろうことか担がれたまま俺の背中に思いっきり爪を立てたタオ。

 防具付けてないんだから! 食い込んでるから爪が!!


「……一体何をやっているのでしょうか、彼女らは……」


 入口近くまで辿り着いた俺達に冷たい視線を向けた幼女。まあちょっと笑ってはいたけども。

 そしてこちらに背を向けた彼女は大きく翼を広げ竜化します。


『皆さん。背中に乗ってください。このまま魔族の領土デモンズ・テリトリアを脱出します』


 ルルの指示に従いリリィ、イーリシュが先に背に乗り込みます。

 そしてタイミング良く俺達が到着。

 タオを強引に放り投げ俺も一緒に背に乗り、最後にセレンが搭乗したところでルルは強く地面を蹴りました。


「カズハが魔王を封印している間は魔法障壁も消失したままだろう。恐らくデモンズブリッジを超えるまでは持ち堪えられるはずだ」


『魔王を封印……!? まさか《緊縛》を使って、ですか……?』


「うん。まあ肉壁二つと一緒にだけど」


『……言っている意味が全然分かりません』


 上空高くに舞い上がり、あっという間に眼下に魔王城が小さく映ります。

 いやでもとにかく上出来。完璧と言っても良いくらいの戦果です。

 よくもまあ、あのピンチからここまで行けたと自分で自分を褒めてあげたいくらいです。


「あ、そうそう。二人にプレゼント。ほい」


「え?」「あ……」


 俺は聖杖フォースレインビュートをリリィに託し。

 それに同調するようにセレンが竜槍ゲイヴォへレストをイーリシュに託しました。


「ま、ままま、まさかこれは……!!!」


「取り返してくれたのね……! ありがとう、カズハ!!」


「むぎゅ」


 呆然とするリリィとは対照的に歓喜の表情を浮かべたイーリシュは涙を浮かべながら俺に抱き付いてきました。

 圧。乳圧。すんごい。息できない。


『流石ですね。これ以上ないくらいの戦利品ではありませんか。ということは、目的であったあの杖・・・も――』


「あ、ごめん。そっちは壊しちゃった」


『…………は?』


 俺の返答を聞き固まるドラゴンルルさん。

 いやだって不可抗力なんだから仕方ないじゃん。

 俺が悪いんじゃなくて、陰魔法の化け物女が悪いんだもん。口からビーム出したから。


「心配はいらぬ。ゼロスノートから『破理』の効果は杖自体ではなく翠宝石の部分に・・・・・・・備わっている・・・・・・と聞き出せたからな。そちらは回収しておる。恐らくゼギウスであればどうにか出来るであろう」


『……はぁ。そういうことでしたか。ならば目的地は一旦、彼のいるエーテルクランの街ですね。依頼のあったカズハの新しい武器素材も彼に渡さねばいけませんし』


 そうこう話しているうちに前方の雲の隙間の先からデモンズブリッジが見えてきました。

 やっぱ空飛んだら早いよなぁ。

 風も気持ち良いし、ちょっと寝ちゃおうかな。到着するまで。


「……くすん。本当に、ようやく念願の『聖杖』を、私は……」


「あ、感傷に浸ってるとこ悪いけど、膝借りるね。枕代わりに」


「ひぇっ……!?」


 ちょうど目の前に正座したまま聖杖を手に取り感涙しているリリィ先生がいたので、俺はずずいと這いつくばるように進み彼女の膝に頭を乗せて目を瞑ります。

 あー……やっぱちょっと、いやかなり無理したせいか、すっごい眠い。

 それに身体中が痛い。まあ魔屍王に腹を貫かれた時に比べれば全然大したこと無いけども。

 エーテルクランに到着してゼギウスの爺さんのとこに行ったら色々と今後の作戦会議も立てないといけないだろうし……。

 そうなったら知恵熱とか出ちゃうかもしれないし、ちょっと休んでおかないとキビシイかもしれない……。


「…………Zzz」


「……寝ちゃったわ」


 俺は微睡の中、最高に寝心地の良い膝枕に頭を乗せたまま眠りにつきます。

 その俺の頭をリリィが優しく撫でてくれたような気がしました。


 目が覚めたら、きっとエーテルクランの街に到着していることだろう。



 そして俺の意識はゆっくりと落ちて行きました。




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― 新着の感想 ―
[一言] なんやかんやでカズハさんの仲間の女の子たちって優しいよね
[一言] てぇてぇ....ありがとうございます....
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