039 頑張ったら魔王に勝てたけど、今はとりあえず逃げます。
魔王軍幹部との死闘が開始され、およそ一時間ほどが経過しました。
まあ、ぶっちゃけてしんどい。いくらやってもキリがありません。
ていうかセレンはまだしも、タオまで魔屍王に善戦しているのがマジでビビる……。
俺の仲間内で最弱だったチャイナっ子は一体どこに行っちゃんでしょうか……。
「貴様……! 我と対峙しておきながら、よそ見をしている余裕があるというのか……!!」
俺の態度が気に喰わなかったのか、魔王は立て続けに特大の闇魔法を乱発してきます。
なんか戦う時間が長くなればなるほど魔王の機嫌が悪くなっている気がします。
どうしてだろう。チートバリア張って自分は何一つダメージを受けてないくせに。
こっちは防具も破壊されて全身ボロ雑巾みたいになってるのに……。
ちょっと下着も破れてきて下乳とか軽く見えちゃってるし……。
「なあ、ちょっと休憩しねぇ? 今の御時世、部活でも水分とりながらやらないと教育委員会とかがうるさいんだよ?」
「……『ブカツ』? 『キョウイクイインカイ』?? 貴様は一体何を言って――」
「《封呪》」
「っ!?」
油断大敵。俺の素晴らしい頭脳を用いた攪乱戦法が功を奏し、魔王の驚異的な魔力が異界から出現した巨大な着物女にどんどん吸われていきます。
相変わらず不気味な陰魔法……。ていうか変なの多いよね、陰魔法って。
「小癪な真似ばかり……!! 貴様は本当に勇者なのか!? これまで我と対峙してきた歴代の勇者は、もっと正々堂々と――」
「《力士》」
『どすこぉぉぉい!』『はっけよぉぉぉい……!』
これまた巨体の怪物が二体同時に空から降ってきます。
そして魔王を挟み込むようにして気合を入れて四股を踏みます。
『『――のこったぁぁぁ!!!』』
「くっ……!」
両側から突進してくる暑苦しい巨漢に対し両腕を広げ魔法で撃退しようとする魔王。
でも巨大着物女が開けた大口から魔力が吸収されているので、威力の弱い闇魔法しか撃つことができないみたい。
それらを脂ぎった肉体で弾き飛ばした力士達は魔王に双方からがっぷり四つ状態になりました。
え、これ……イケんじゃね?
『のこったのこったのこったぁ!!』『どすこいどすこいーー!!』
「ぐ……ぎぎ……! ふふ……ふははは! 甘いぞ!! 我にはまだ奥の手がある……!!!」
肉壁に挟まれたまま魔王は全身にあらゆる魔力を集約していきます。
着物女の魔力吸収を大幅に上回る魔力量――『魔力暴走』。
先の偽魔王戦でも追い込まれた奴が最後に放ったのもこれでした。
「《縫糸》」
「!!! んぐっ!!?」
魔力を暴走させるため詠唱を開始していた魔王の口に針と糸が出現。
それらがギザギザに宙を舞い、奴の口を縫い合わせました。
あれ、上手く行っちゃった。
本当はこの陰魔法、口からビームとか撃ってくる化物対策の魔法なんだけど……。
魔法詠唱を強制中断とかもできるんだ。今知った。
「んん……!! ぬぐぐ………!!!」
再び魔力を吸われた魔王は己が筋力だけで力士達を引き剥がそうとするも、両側からがっぷり四つをされてて身動きが取れないみたいです。
えーどうしよう。ここに来てまさかのチャンス。
まだもう一発魔法打てるくらいのSPも残ってるし、もしかしたら、今ならいけるんじゃね?
俺は勇者の剣を鞘に仕舞い、両腕を前に構えて詠唱します。
まあ無詠唱でも発動できるんだけど、ちゃんと効果を百パーセント発揮するんだったらしっかりと詠唱したほうが間違いが少なくなるからね。
……うーん……。でも力士が邪魔だな。まあいいか。
「《緊縛》」
「!!!」『はっけ……?』『……よい?』
残りのSPを全て使い切り、極悪最強の陰魔法を発動します。
俺の両手から蒼色と金色の巨大な蔦のようなものが具現化し、異界の力士もろとも魔王の全身を縛り上げました。
「か、閣下……!」「魔王様!?」
離れた場所で各個死闘を繰り広げていた魔鳥王と魔屍王が異変に気付きます。
そして慌てたように二人同時に魔王の元へと飛んできました。
『阿阿亜亜亜あぁぁぁぁぁぁぁぁ………!!!』
「!!」「!?」
それとほぼ同時に魔王から魔力を吸い尽くした着物女が大口を開け、その魔力を奴らに向けて解放します。
突然の出来事に目を丸くする二人の魔王軍幹部。
膨大な黒炎のようなものを撒き散らした着物女は役目を終えたのか、全身を歪な形に曲げてぐしゃぐしゃになりながら異界に消えていきました。
……うん。あの消え方どうにかならないかな……。
「――! ―――!!」
口を針と糸で縫われ。魔力を着物女に全て吸われ。
両側を暑苦しい巨漢力士に挟まれたまま全身を拘束された魔王。
……うん。成功しちゃった。成功しちゃったけど、なんか可哀想になってきた……。
「カズハ!」
「ひひ、ヒヒャッハ! なんだぁあれ……! 超ウケるんですけど!! ヒヒャッハーー!!」
「うるさっ!? お前耳元でその気色悪い笑い声を出すんじゃねぇよ!」
事態の変化に気付いたセレンとタオが俺の側に駆け寄ってきたけど、俺は鼓膜が破れそうになりました。
出来ることなら今すぐ腹をグーパンしてタオを気絶させたい所なんだけど……。SP枯渇してるからもう一発緊縛とか打てんし。
でもまだ彼女にはやってもらわないとアカンことがあります。
着物女の魔力解放をまともに受けて硬直している魔屍王の持つ妖杖を、今のうちに盗んでもらって――。
「……な、なんということじゃ!! 今の衝撃でワシの……! ワシの大切なコレクションの、妖杖が……!!!」
「…………え」
……今、なんて?
「ぶ、無事でありますか閣下!? クソ、この拘束は陰魔法の……!」
魔鳥王ブレイズベルグは必死に魔王から拘束具と力士を引き剥がそうとしています。
いやいやいや、今は魔王なんかどうでもいいの。
『痛い痛い痛い……!』『やめてやめてやめて!』
無理矢理脇腹の肉やら頭の髷を引っ張られている力士達。
俺が魔王と一緒に『緊縛』で拘束したもんだから、元の世界に帰れずに魔王と一体化しちゃっています。
いやいやいや、巨漢力士のことなんて、もっとどうでもいいの!
「……あぁ? 壊れたのか? 妖杖?」
何事かと魔屍王の側に歩み寄り首を伸ばしたタオ。
そして魔力解放の衝撃で折れてしまった妖杖の頭の部分、翠に輝く宝石の破片を乱暴に拾い上げ後ろ頭を掻きました。
「き、貴様! 返せ! その翠宝石には貴重な『破理』の力が―――あ」
慌ててそう口にした魔屍王ゼロスノートは、途端に顔を曇らせた。
その様子を真顔で見つめていたタオは次第に嬉しそうに表情を崩す。
「……カズハ。グズグズしている時間は無いのだろう?」
「え? ……あー、まあ運良く『緊縛』が掛かったけど、相手は魔王だからそのうち自力で解いちゃうだろうしなぁ」
セレンの表情を見て気持ちが落ち着いた俺は、ふぅと息を吐きました。
妖杖は壊れちゃったけど、ゼギウスの爺さんに頼めばどうにかなるかも知れない。
それにタオの功績で聖杖フォースレインビュートまで手に入れることができた。
戦果は上々。想定外の事が起きたことが帳消しになるくらいのレベルです。
「――というわけで」
俺は魔王、魔屍王、魔鳥王を順番に睨み付けました。
勝負は次回にお預け。
次に会った時は、正真正銘、全員フルボッコにしたる。
そして俺はセレンとタオに目を合わせ、こう叫びました。
「逃げる!!!」
LV.75 カズハ・アックスプラント
武器:聖者の罪裁剣(攻撃力255)
防具:なし(防御力0)
装飾品:炎法師のイヤリング(魔力25)
特殊効果:斬撃強化(特大)、スキル威力強化(特大)、魔法攻撃力強化(特大)、光属性特効、闇属性特効、火属性強化(大)
状態:疲労
魔力値:5811
スキル:『ファスト・ブレード(片) LV.25』『スライドカッター(片) LV.50☆』『アクセルブレード(片) LV.37』『スピンスラッシュ(片) LV.35』『ツインブレイド(二) LV.30』『ブルファイト・アタック(二) LV.25』『センティピード・テイル(二) LV.24』『ダブルインサート(二) LV.20』『エクセル・スラッシュ(二) LV.17』『ツーエッジソード(二) LV.13』
魔法:『力士(陰)』『蛇目(陰)』『塩撒(陰)』『隠密(陰)』『悪夢(陰)』『迅速(陰)』『鎖錠(陰)』『封呪(陰)』『奈落(陰)』『緊縛(陰)』『解縛(陰)』『弐乗(陰)』『斬鬼(陰)』『牙追(陰)』『激震(陰)』『縫糸(陰)』←NEW『ファイアボール(火)』『ファイアランス(火)』『ファイアエレメンタル(火)』『フレイムガトリング(火)』『フレイムトマホーク(火)』『フレイムバード(火)』『エンゲージブレイズン(火)』『バーニングソード(火)』『ファイアフォックス(火)』『ファイアバースト(火)』『ヘルファイアブレード(火)』『ヘルヴァナルガンド(火)』『ファイアメテオアーク(火)』『ゾディアック・フレイガウェポン(火)』『トレメンダス・ブレイズン(火)』『カグツチ(火)』
得意属性:『火属性☆』『陰属性』
弱点属性:『光属性』『闇属性』
性別:女
体力:5698
総合結果:『軽傷』
封呪/異界より巨大な着物姿の女を召喚し対象の魔力を吸い取った後に魔力を解放させる陰魔法
力士/異界より二体の巨漢の力士を召喚し戦わせる陰魔法
縫糸/異界より出現した針と糸で開口部を縫い魔力発動を阻害させる陰魔法
緊縛/対象の全ての能力を封印する最上級陰魔法




