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ドラゴンマスクより「私・鈴(りん)」  作者: 美憂


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20/22

チーム名が指すもの

とうちゃん、聞いてよ。

律ったらほんと、しょーもないんだから。

O40(オーバー40)の全国大会は、毎年、秋に行われる。

そこに出場するには、関東大会に出なきゃならない。

そして、関東大会に出るには、埼玉県予選を勝ち抜かなきゃならない。

さらに、埼玉は3リーグあって優勝して勝ち上がらなきゃならない。

3年かかる。

果てしない・・・

律、どうするつもり?

埼玉は西武台と三郷の2強がいて、にわかチームじゃ歯が立たないよ。


「ねぇ、鈴。俺、そんなの目指してないよ」

へ?これじゃないの?

「鈴、これに出ようとしてたの?そりゃ、シニアのチーム所属はするから出られるけど」

「全国、行かないの?」

「逆に聴くけど、行くの?」

「…無理だとは思う」

「うん。予選は参加してもいいけど。楽しさは失いたくないわけよ」

「だから、大会はここから参加。天然芝で1泊2日、温泉付き!」

「おー!!!」

「フレンドリー部門とチャレンジ部門があるんだけど、ここはチャレジで行こうと思う」

「いいね。本気で楽しもう」

「埼玉県予選もね。勝ち上がったら面白いけど、11人ギリギリは流石に厳しいよな」

「O40とは言え、選手層は厚いからね」

「この大会も秋だから、全国出られなかったチームが来るかもね。ひゃーワクワクする!」

なんでワクワクできんだろうねーこの人は。

「あとさーユニどうする?」

「そうだね。大会出るなら最低ホームとアウエイの2種は作らなきゃだな」

「ホームは水色かな」

「えー!赤じゃないんだ。鈴は赤って言うと思った」

「瑛さん、ジュビロだからねー遠慮してみた」

「いやいや。水色って意外と他のチームと被るのよ」

「そうなんだ。じゃ、赤白とか?昔のフェイエみたいな」

「あーシンジがいた頃のね。いいかもね」

「セカンドは黒とか」

「被りそうにないけど、暑くね?」

「じゃ、黒白」

「ファーストがお祝いで、セカンドが忌まわしい感じだなw」

「パンツとソックスはどっちも黒で、番号はゴールドがいいな」

「んーじゃ、とりあえず絵にしてみんなに相談してみよう」


…でさ。ずっと思ってたんだけど…


「うちのチーム。なんて名前なの?」

「あ…」

「考えてなかったの?」

「あはは…」

さすが、ばか律。

「明日、みんなにそれも相談しよう!」

「原案作ってなかったら、みんな、呆れるから。考えておいでよ。宿題ね」

「ほーい」


…期待できない。変なの考えてきそうだ…


次の日のミーティングは荒れに荒れた。

原因は戦術ではなくて、律の持ってきたチーム名だった。

①FC老眼…当然却下

②FCオジオバ…意外にも「ojioba」ならいいという意見もあった。

③FCdareno…落とし物みたい

④FC GODZILLA…強そうだけどね

⑤FC kitty…弱そうだよね

⑥FC mine…パッとしない

で、最後に出してきたのがこれだった。


「FC1999」


なーに出して来るんだよ、律。

「律、それさー」航が言いかけると

「世紀末ってこと?ノストラダムスの予言の年?」と瑛がおもしろそうに言った。

「数字って無いからいいかもね」賛成の声が上がる。

「いや、その年号は…」航が止めにかかる。


「律は忘れられないんだよねーりんくんとのサッカーが」と私が笑った。

みんなの頭の上に「?」が浮かぶ。


「鈴のダンナが亡くなった年なんだよ」航が短く言った。


「そ。俺たちにサッカーの楽しさを教えてくれたヤツが亡くなった年」


「なんで?どうして…その年をチーム名にするの?」瑛が顔を歪めた。


「俺のサッカーの原点があいつでさ。あいつが亡くなった時、俺、誓ったんだよね。あいつから教えてもらったサッカーの楽しみ方をみんなに繋げるって」


これ、お酒飲んでは律が泣きながら私に話すやつ。


「だから、俺のスタートでもあるんだよね」

ほーら泣き出した。え?航まで泣くの?やめてやめてって!


「スタートなら、チームのスタートで今年の年号でいいじゃん」と私が言うと

「いや。鈴がよかったら、それで行こうよ」

「俺たちが好きだったサッカーはそこからだったんだ…」

東高卒業生組も神妙な顔になる。そんな大袈裟な名前にしなくていいから!みんながそんなもん背負わなくていいって!


結局、FC1999になった…


なんだかなぁ。

とうちゃんが死んだ年を背負って、サッカーするって。

ちょっと重い。

でも、律にとって1999年は、とうちゃんを失った年じゃないんだろうな。

とうちゃんからもらったサッカーを、自分で繋ぎ始めた年なんだ。

それなら、まぁ、いいか。

それに今はもう、私だけの1999じゃない。

律がいて。

瑛がいて。

梶さんがいて。

パパたちがいて。

私がいる。

上手い人も、そうじゃない人も。

昔から蹴ってきた人も、最近始めた人も。

みんな、まだサッカーがしたい。

それだけで集まったチームだ。

FC1999。

うん。

悪くないかも。

とうちゃん。

私たち、まだまだサッカーやるよ。

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