閑話休題
咲いた花が摘まれた感覚がした。最近たて続けに咲かせて放置していたものが摘まれていることに、ソレは何の感慨もなく顎を触る。
腐りかけていた花ばかりだったから、特に気にしてはいないのだけれど、まあ良い気分とは言えなかった。
だだ、今回の花は気まぐれにソレが助言めいたことをしていたケースだったため、小さい少女の粘り勝ちとも言える結果に口元を綻ばせる。
「いいですねぇ」
望まれた生ばかりか、己を気にかけてくれる存在が身近にいる僥倖を、あの嬰児は理解しているのだろうか。小さい彼女が望んだから、あの嬰児は人として死に、人として家族の元へと戻ることができた。
ただ姉という立場だっただけであそこまで弟を想う少女に、目が眩んだ。いいな、欲しいな。羨ましいな。
もしソレが弟だったならば、同じように愛してくれたのだろうか。
「彼女が姉だったならば、私はこうなっていなかったのだろうか」
考えても詮無いことだ。だってもしそんな存在がいたならば、ソレと同じモノがいたならば、そもそもこんなことなどしていない。
「手にできないものほど、どうしてこんなにも美しいんでしょうか」
ソレが欲しいモノなど、他者から見れば極ありふれていてつまらないものだろう。しかし、けしてソレには叶わない夢だから、ソレは永い年月を懸けて手に入れようと渇望するのだ。
「わたしの願いは、それほど罪深いものなのでしょうかね……」
この世に存在するモノならば、たとえ人間だろうが人ならざるモノだろうが、価値のない炉端の石ころのようなモノまであたりまえに手にしているモノを、ソレは誕生した時から持ち合わせてはいなかった。代わりにあったのは、永い命と支配する強大な力。
欲しいのは、そんなちんけなモノではないのに。
「まぁ、種はまだありますし」
植えた呪いの徒花は、一つや二つではないのだから。




