第9章 第2話 体が壊れた。
そこで初めて体の異変に気付いた。
腕の皮膚の色がおかしいのである。
赤と白のまだら模様が浮かんでいた。
常に37.5℃前後の熱が続いていた。
寒気がする。
そして眠れない。
疲れているはずなのに眠れないのである。
さすがにおかしいと思い、精神科を受診した。
診断結果は自律神経失調症だった。
それまでの自分は順調だった。
技術者として結果を出した。
リーダーになった。
PMになった。
業務統括も経験した。
無茶な案件も乗り越えてきた。
努力すれば何とかなる。
どこかでそう思っていた。
しかし、この時初めて体が壊れた。
現場からは、
「あなたがいなくなると困る」
と言われた。
その結果、稼働時間を9:00~19:00程度まで下げることになった。
また、結合テスト工程に入っていたため、他チームを含めた課題管理だけは継続して担当してほしいと依頼された。
その後、結合テストの終わりが見え始めた頃だった。
会社から医師の診断書を提出するよう指示が出た。
休職することになったのである。
現場都合で案件を離れることは、SES業界では珍しくない。
しかし今回は違った。
初めて、自己都合で案件を離れることになった。
そして、その頃。
嫁から衝撃的な言葉を告げられた。
「あなたについていけば人生安泰だと思った。だけど、あなたは壊れた。離婚したい。」
彼女と知り合う前から、自分はシステムエンジニアだった。
繁忙期があることも知っていたはずだった。
だから理解してくれているものだと思っていた。
両親からは、
「一年かけて話し合ってみたらどうか」
と言われた。
実際に話し合いもした。
しかし結論は変わらなかった。
36歳。
自分はバツイチになった。
この炎上案件によって、自分は初めて知った。
人生は何かを得るだけではない。
失うこともある。
失ったものは大きかった。
嫁という人生の一部。
そして、この先の人生を生きていくための体。
体を壊すまでは、自分は無敵だと思っていた。
努力すれば何とかなる。
頑張れば乗り越えられる。
そう信じていた。
しかし、この時初めて理解した。
人には限界がある。
そして、その限界を超えた代償は思っていた以上に大きい。
この経験を境に、自分の価値観は大きく変化していくことになる。




