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第1章 第2話 母
母は看護師だった。
父とは対照的に、家庭では子供を叱る役だった。
自分は小学2年生くらいまでよく叩かれた。
ただ、その時に母はいつも言っていた。
「叩いている方も痛いんだからね」
子供の頃は意味が分からなかった。
今なら分かる。
怒りではなく、愛情を伝えたかったのだと思う。
母は子供を第一に考える人だった。
自分が未熟児で生まれたこと。
小学2年生から眼鏡になったこと。
アレルギー性鼻炎がひどく、毎週病院へ通っていたこと。
そういうことをずっと気にしていた。
自分は鼻炎がひどく、小学校の机の横にはティッシュ箱とビニール袋が常備されていた。
今思えば先生からするとかなり面倒な児童だったと思う。
母との思い出で特に印象に残っている出来事がある。
小学2年生の頃、通学路で野犬に襲われたことがあった。
その時、母が追い払ってくれた。
今思い出しても格好良かった。
母は優しさと個人主義が同居した人だった。
そして後年、
「あなたは優しすぎるから心配」
と言われたことがある。
その言葉は今でも覚えている。




