第7章 第1話 IT業界。監視、そして運用業務。
今度こそIT業界を目指すことにした。
日暮里にあるシステム会社の求人が目に留まった。
面接では「フラットな服装で来てください」と言われたので、Tシャツにチノパンで向かった。
怒られた。
しかし採用試験は受けさせてもらえた。
まさか筆記試験があるとは思わなかった。
結果は合格だった。
後で聞いた話では、数学の問題の一つがセンスがないと解けない問題だったらしい。
面接では服飾専門学校の経歴が目に留まった。
「服飾専門学校を卒業しているやつは根性がある」
そんな理由で採用された。
社員20名ほどの小さな会社だった。
社長や部長が営業も兼ねているような会社である。
給料は25万円。
前職と変わらなかった。
しかし、ようやくまともなIT会社で働ける。
給与額はどうでもよかった。
最初にアサインされた現場は映像配信サービスの監視業務だった。
仕事内容は3時間ごとの機器ランプの目視確認。
さらに20チャンネル分の映像に乱れがないかを確認する。
勤務時間は朝8時から18時、夜18時から朝8時までの2交代制だった。
父親の3交代勤務を見て育ち、プログラマになりたいと思ったはずなのに、自分も夜勤をしていた。
そして業務について分かったことがある。
マニュアルが存在しなかったのである。
仕方がないので自分で業務マニュアルを作ることにした。
結果として引継ぎ資料になった。
それが評価され、約1年後に別案件へアサインされることになった。
次は大手通信会社の運用保守案件だった。
運用保守になったことで夜勤から脱出した。
この現場には特徴があった。
経営層が新サービスを発表してしまうのである。
そして現場はその対応に追われる。
バッチ改修が間に合わないことも珍しくなかった。
そのため運用担当がSQLを使って直接データを修正することも多かった。
SQLはここで覚えた。
半年ほどして業務に慣れてきた頃だった。
自分は現場で重大なミスをしてしまう。
SQL文を間違えたのである。
その結果、本番環境の顧客データ500万件を物理削除してしまった。
削除した瞬間、さすがにパニックになりかけた。
しかし脳内では激しくパターンシミュレーションが始まっていた。
最高の着地から最低の着地まで。
10パターンほど考えたと思う。
だが一つだけ分かっていた。
自分では復旧できない。
そこで現場メンバーへ状況報告に向かった。
ここの現場メンバーは本当に良い人達だった。
誰も自分を責めなかった。
まずどう解決するか。
その一点だけで動いてくれたのである。
幸いにも週1回取得していたバックアップから2日しか経過していなかった。
バックアップデータを復元し、2日分のバッチ処理を再実行することでデータを戻せることが分かった。
結果として顧客データは無事復旧した。
念のため、自分は36時間現場に残り状況を見守った。
こうして初めての大規模障害は幕を閉じた。
そして心に誓った。
本番環境を触る仕事は二度としたくない。
この頃、現場のネット利用ルールはかなり緩かった。
空き時間にはブログを書き、アフィリエイトにも挑戦していた。
収益化はできなかった。
約1年後、自分は別案件へアサインされることになった。
今度は省庁関連の開発案件である。




