第6章 第1話 正社員。出会い系の面接官
出会い系会社に就職した。
月収は25万円だった。
当時としては悪くない給料だったと思う。
プログラマ募集で入社した。
だから当然、最初はプログラムを書くものだと思っていた。
違った。
最初にやらされたのは出会い系サイトのお試しだった。
女性会員として登録する。
プロフィールを考える。
そして一括送信機能を使い、登録ユーザーへメールを送る。
テンプレートは10件まで保存できた。
最初の5通はテンプレートを使う。
その後は会話を続ける。
会話の基本テクニックも教わった。
相手が何を話していても、
「うん。そうだね。」
と一度受け止める。
そして、
「それでね、私は――」
と自分の話を続ける。
会話の主導権を握るためのテクニックらしかった。
面白いと思った。
1週間だけサクラ業務を体験した。
結果は想像以上だった。
1週間で2000通近いメールが届いた。
当時は1通100円程度の課金システムだった。
単純計算でも20万円という恐ろしい金額になる。
世の中にはこういう世界もあるのかと思った。
そして1週間後。
次の仕事を命じられた。
サクラの採用面接だった。
面接官とは言うが、普通の面接とは違う。
サクラの採用面接である。
求人誌には、
「時間にとらわれず自由に働けるキーパンチャー募集」
として掲載されていた。
なので最初は普通の面接をする。
志望動機。
なぜ応募したのか。
どんな仕事をしたいのか。
そこまでは一般的な面接と変わらない。
ただし、判断基準は少し違った。
親の職業を確認する。
警察関係や法律関係の場合は不採用。
あとは真面目過ぎそうな人も不採用。
逆に大丈夫そうだと思ったら次の段階へ進む。
そして最後に種明かしをする。
「採用したいと思います。実は出会い系のサクラなんですけど興味ありますか?」
自分が入社するときに受けた説明とまったく同じだった。
納得してくれれば採用。嫌なら辞退。
そんな流れだった。
この会社は年中募集していた。
年間約1000人の面接をしていた。
普通であれば、就職活動の時期に面接する人数は多くても数10人だろう。
大企業の採用担当でも数100人かもしれない。
その結果、23歳から24歳頃にかけて約2000人の面談経験をしていた。




