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エピローグ2
昼休みの終わりを告げるチャイムが遠くで鳴った。
けれど、私たちはまだこの部屋を離れようとは思わなかった。
世界が動き出す音の中で、私たちの時間だけが止まっている。
たとえこの関係が永遠でないとしても――
今この瞬間に、確かに存在している「好き」という気持ちがある。
それが、きっと私たちにとっての真実。
誰にも言えない、だけど誰にも奪えない、私たちだけの秘密。
それを胸に、私は再び美波の手を強く握った。
「行こう、遅刻しちゃう」
「……うん」
そっと微笑み合いながら、私たちはふたたび教室へと歩き出す。
交わした言葉は少なかったけれど、その歩幅は、どこまでもぴったりと揃っていた。
夏が終わり、新しい季節が始まる。
だけど、私たちの物語は――
これからも、続いていく。
(fin.)