???
――五月二十三日
いつもとなんら変わりのない学生生活を過ごし終えた放課後。
僕はこの高校に入学してから密かな日課ができた 。
もちろんファンになっているのは僕だけではない。
同じ学年から先輩方まで足を運びに来ている。
最後の授業で使ったものを、乱雑に鞄に詰め、足早に音楽室に向かう。
音楽室へ向かうと、僕と同じ様に集まってきている生徒がすでにそれなりにいた。
なぜみんな教室に入らないのかと思うかもしれないが、ここに来る人たちの間では、“あの二人の空間を邪魔しない”という暗黙の了解があった。
こうして教室の外側で聞きに来ているのである。
「今日は随分と人が多いですねぇ」
少し長めの黒髪に穏やかな表情を浮かべている青年と彼の手を繋ぎ楽しそうに笑っている銀髪の仲睦まじい二人が音楽室から出てきた。
「これだと廊下通れなくなっちゃうから中に入ってもらってもいいかな?」
黒髪の青年が優しく声をかけると外に居た皆がそれぞれ色んな人の顔を伺っていた。
暗黙のルールを破っていいの?と。
「大丈夫ですよ。それに、日頃から気兼ねなく中へ入って聞いていただいても大丈夫ですからね。いつもお気遣いありがとうございます」
銀髪をたなびかせとてもおしとやかな彼女がそう告げると音楽室へみんながぞろぞろ入っていく。
「じゃあ、今日も一曲だけ」
黒髪の青年がそう口にし鍵盤に指を走らせると心地よい音色を奏で教室のざわめきが一瞬にして静まった。
演奏が始まると銀髪の彼女がピアノの音色に劣らない透き通った綺麗な歌声で歌い始めた。
その空間はまるで二人だけの世界のようで、 視線を惹きつけた。
心地よいハーモニーに絆され、顔を見合わせている二人を見ていると自然と笑みがこぼれてしまう。
演奏が終わると聞きに来た全員が二人に拍手を贈った。
二人は並んで手を繋いだままお辞儀をすると、二人は少し照れくさそうに互いの顔を見合わせて柔らかく笑った。
その薬指には緑色に輝く宝石を埋め込んだ指輪を身に付けていた。




