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131/132

131、ただいま

今回で、本編完結です。

いつもより少し長めになっています。

「ジュリエッタ、ポウロの髪は、赤いままにしておいて欲しいわ。髪が伸びてきたら帽子を被ればいいもの」


(やっぱりね)


「じゃあ、ネイル。ポウロくんに銀ラメをお願い」


 私がそう言うと、ネイルはキラキラした光を放った。ポウロくんの赤く色付いた髪色が、さらに輝いて見える。



「お母様、ポウロくんの髪が伸びてしまうまでに、たくさんご飯を食べて体力を回復してください。青の王国の仮の神殿は、10日以内にはできるみたい。さすらいの荒野まで歩くのは無理だろうけど、何か乗り物があれば行けるように、早く元気になってね」


「さすらいの荒野なら、馬車で行ける距離よ。青の王国があった頃は、街道が整備されていたわ」


 母は、今の状況はわからないみたい。不安そうに、お兄さんの方を見てる。


「王妃様、街道は残っていますが、道の状態は悪いです。青の王国の再建がある程度進めば、街道の整備もできると思います。俺は、青の王国の再建を手伝いますから、街道整備もしっかりやります」


 お兄さんがそう言ったことで、母は頷いたけど、不安そうにしている。ポウロくんを守ってくれる人は、少ないんだろうな。



『ジュリエッタ、私が、その役目を引き受けるぞ』


(あっ、また念話に戻ってる)


「賢い子が、二人を守ってくれるの?」


『うむ。私の中に共存する人間の残留思念には、この城に仕えていた者もいる。王妃リーネルを支えてきた側近であろう。また、ジュリエッタの兄は、ここに居たいらしい。私はまだ上手く発声できないが、人間の幼児の言葉なら発することができそうだ』


「でも、賢い子は、人化するレッドスライムの王になるんじゃないの?」


『この城にいても、それは可能だ。私は、大陸内なら自由に転移できるからな。また、ここに棲む人化したレッドスライム達の願いでもある。新たな国王は、あまりにも弱い。前国王の側近達を抑えてる力はないからな』


(ちょ、ひどいこと言って……)


 ランドルフくんは、苦笑いしてるよ。でも、確かにランドルフくんでは、ぶよぶよなオジサン達を抑えられないよね。



「新たなレッドスライムの王が、この城に滞在することも、ある意味、良いことかもしれない」


 お兄さんは、ぶよぶよなオジサン達が激怒しそうなことを言ってる。


「カール、それは、この城をスライムにゆだねるということですか」


「王妃様、それは違います。大陸はあくまで人間の領土です。しかし、赤い髪の少女は、すべてにおいて異質です。人化するスライムは、男の姿にしかなりません。ですが、彼女を生み出したクイーンホワイトの分身の影響を受け、女の子の姿をしている。人間の考えも理解している。半分は人間の感覚を持っているんですよ」


「そうね。ジュリアスの思念も共存しているのよね。だったら、ここにいてもおかしくはないわね」


 母は、赤い髪の女の子の方を見て、ふわっと微笑んだ。きっと、彼女の中にいる兄に、微笑んだのね。



「賢い子さんなら、リーネルとポウロを、青の王国に連れて行くことも簡単だね。ボク達が大陸に居るかどうかも、すぐに察知する能力があるからね」


 キララがそう言うと、赤い髪の女の子は、照れたのか頬が赤くなってる。あっ、キララに真っ直ぐに顔を見られてるからかな。


「そうね。お母様の体力が回復して、ちゃんと歩けることが必要だけど、賢い子が連れて行ってくれるなら、移動中の不安もないね」


「ジュリエッタ、私は、早く歩けるようになるわ。本当に、ありがとう。今日は本当に、何て素晴らしい日なのかしら」


 母は、また涙を浮かべている。すると、白い髪の小さな女の子が、母の頭を撫でた。それを見ていたポウロくんも、真似をして母の頭を撫でている。


「あら、まぁっ、ふふっ、ありがとう」


(もう、大丈夫そうね)




「じゃあ、扉を開けて。私達は島へ帰るから、ポウロくんは扉まで見送って欲しいな」


「扉の外まで、見送るわ」


 母が騎士風の女性の方を見ると、スッと抱きかかえられた。母が痩せ細っているとはいえ、すごい力持ちね。


「ポウロ、ぼくはジュリエッタといっしょだからね。たいりくにきたときに、かしこいこといっしょに、きてね」


「うん、ふわしろスライムと、またあそぶよ」


 ポウロくんは、すっごく寂しそうな顔をしている。お別れがちゃんと理解できているみたい。




 ギィイッと、重い扉が開いた。


 扉の外には、ぶよぶよなオジサン達や、多くの兵がいた。彼らは、母の姿を見て、目を見開いている。


「おまえ達、道を開けなさい」


(えっ? ランドルフくん?)


 凛とした声で、ランドルフくんがそう命じると、兵達は慌てて後退した。



「お兄さん、アルくんの所に送って行こうか?」


「いや、俺には、まだ引き継ぎもあるからな。さすらいの荒野へは、自力で行くよ」


(確かに)


 お兄さんは、とても優しい笑顔を浮かべている。



「ランドルフくん、私達は、ここから帰るよ。新たな国王、頑張ってね。それから、母とポウロくんのこともお願いするね」


「ジュリエッタ、もちろんだ。レッドスライムの王は、賢い子さんって呼べば良いのかな?」


「スライムには基本的に名前はないよ。ふわしろスライムさんが、賢い子って言い始めたから、それが名前みたいになってる。実際に、スライムと人間の英知が詰まっているから、賢いはずだよ」


 私は、ぶよぶよなオジサン達にも聞こえるように、大きな声でそう答えた。頭のいい人なら、赤い髪の女の子がここに滞在することを察したはず。


「そうか、わかった。生みの親が付けた呼び名だな」


 私が軽く頷くと、ランドルフくんもニカッと笑ってくれた。



「そろそろ、私達は帰るね。キララ」


 私が話している途中から、キララはもう姿を変えていた。私が乗り込むと、また白い髪の小さな女の子は置いていかれないようにするためか、私に体当たりする勢いで飛び込んできた。そして、黒い髪の人化したスライムが乗った後に、ネイルが乗り込む。


「じゃあ、みんな、またね!」


 キララの気球は、ふわりと浮かび上がると、転移魔法の光に包まれた。




 ◇◇◇



「うわぁ、もう真っ暗だね」


 キララの気球は、海岸に到着した。そしてすぐに、キララは人の姿に変わった。


「時差も少しあるみたいだな。深夜かもな。ジュリちゃん、俺も腹が減ったぜ」


「ふふっ、じゃあ、黒い子も、オバサンのご飯を食べるといいよ。でも、オバサンは起きてるかな?」


 黒い髪の人化したスライムと話していると、海岸にいた人化したスライム達が、騒がしくなっていった。しかも、どんどん増えていく。


(ん? 何?)



 何かあったのかと、キョロキョロしていると、オバサンが家から飛び出してきた。


「ジュリ? 本当に帰ってきたのかい?」


(あー、そういうことか)


 オバサンは、私はもう戻らないと思っていたのね。大勢の人化したスライムが集まってきてる。スライム神の姿まで見えるよ。みんな、すっごく驚いた顔をしてる。



「村長さん、私は帰ってくるって言ったでしょ? ふわしろスライムさんも居るよ」


「そうかい、帰ってきたんだね」


「私の家は、ここだからね。赤の王国の城で、母や弟にも会ってきたよ。詳しくはあとで話すけど、キララもネイルも大活躍だったよ」


 オバサンは、珍しく涙を浮かべてる。やはり、この選択は正しかったのね。驚いていたスライム達も、だんだん笑顔になってきた。



「ジュリ、晩ごはんは食べたのかい?」


「まだ食べてないよ。黒い子も、お腹減ったって」


「ぼくも、おなかへったぁ〜」


 白い髪の小さな女の子は、私の腕の中から飛び降りて、オバサンの方へと走っていく。


「まぁまぁ、みんな、早く入りな。おかえり」


「ただいま〜!」


 オバサンは、そっと涙をぬぐって、いつも通りの笑顔を見せてくれた。



「もう夜遅いから、消化の良いものにしようかね。えーっと、ジュリとブラック、ふわしろスライムとキララも食べるのかい?」


 すると、ネイルは何かを決意したように、オバサンの前に出た。


「オレも、食べてみます」


「ネイルもだね。じゃあ5人分か。みんな家に入ったらすぐに、手を洗うんだよ」


(ネイルも?)


「えっ? ネイルも、食べられるようになったの? あっ、練習してみるのね」


 そう尋ねると、コクリと頷くネイル。キララも軽く頷いているから、できるのかも。


「ぼくが、ネイルに、たべかたを、おしえてあげるねっ」


 白い髪の小さな女の子が、えへんと思いっきり胸を張った。薄暗い外だけど、あの塔の中で食べた赤いスープが服に飛び跳ねてるのが目立ってる。


「あらあら、白い服に、赤いソースがついてるね。ふわしろスライムには、エプロンが必要かい?」


「ちがうよっ。これは、スープだよっ」


 なぜかドヤ顔をキメる、白い髪の小さな女の子。


(ふふっ、かわいい)


 オバサンもキララもネイルも黒い子も、みんな穏やかな笑顔になってる。



「さて、急いでご飯を作らないとね」


 オバサンは張り切って、家の中に入っていく。


「私も手伝おうかな」


「ジュリは疲れてるだろ? 気持ちは嬉しいけど、これは、私の仕事だからね。もう少し大きくなったら、手伝ってもらうよ」


(また、同じこと言ってる)


 前世の記憶が戻ってから、何度か料理の手伝いをすると言ったことがあるけど、いつも、やんわりと断られる。たぶんキッチンは、オバサンのテリトリーだから、邪魔されたくないのね。



「あー! ジュリ、ご飯の前に、ふわしろスライムを風呂に入れてくれるかい? 靴を履いてないから、床が泥だらけだよ」


 そういえば、いつからかポテポテ音がしなくなってた。白い髪の小さな女の子は、オバサンの後ろをついてまわってるから、床は小さな足跡だらけだよ。綺麗好きなオバサンとしては、キッチンが泥だらけになるのは耐えられないよね。


「はーい、わかったの」



 私はこの島で、これからもずっと、かわいいスライム達と、楽しく笑って暮らしていきたいな。もちろん、オバサンも一緒にね。



 ───────── 〈完〉 ─────────


皆様、これにて本編完結です。

本編を最後まで読んでいただき、ありがとうございます♪

予定よりも少し長くなりましたが、ほんわかとした雰囲気で終わりました。この先のお話は、後日談で少し語りたいと思っています。


後日談は、2年半ほど経ったジュリ達の様子を描いています。明日更新します。よろしくお願いします♪

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