運んでみる
その時、私は隣の妻のことよりも、ある新聞の記事の内容が気になっていた。
学生の頃、近所に住んでいた先輩の女性が行方不明になって17年、情報を求める記事だった。
…忘れてた
掲載されていた当時の彼女の写真は、あの女の顔に少し似ていた。
―17年前、某所月夜
「兄貴!どうするんですか、コレ」
「ウルサイな黙ってろ」
「そんなこと言ったって死んでるじゃないですか」
「いいから黙ってろ、お前!」
「痛てえ。叩かなくてもいいでしょう、兄貴」
「ウルサイ。あああ…」
「兄貴が、アノ女に悪戯しようって言ったからですよぉ」
「うるさい!あの女が頭ぶつけたのは、俺のせいじゃない!」
「でも…」
「いいから、お前そっち持て!」
「どうするんですか?」「死体を山に捨てる。お前の車、貸せ」
「………………」
「逆らうなら、お前の家の壁に、額縁に入れて飾ってやる」
「(兄貴なら多分やりかねない)」
「おい、さっさとヤレ」「へいへい、よいしょ」「よっこらしょ」
「よいしょお」
「よっこらしょお」
「よいしょお」
「よっこらしょお」
「はぁはぁ」
「はぁはぁ」
「意外と、この女重いですね…はぁはぁ」
「いいから、早く車に載せるぞ。トランク開けろ」
「よっこらしょお」
「よっこらしょお」
「はぁはぁ」
「よし、車に乗れ。行くぞ、お前運転しろ」
「ひひ。兄貴も、トランクで相席どうですか?」「アホ。俺は、無口な女は嫌いだ!……助手席でいい」
―3時間後
「兄貴、この辺なら大丈夫じゃないですか?」
「よし、あの石碑の所から山へ入れ」
―5分後
「……」
「どうした?トイレか」「…道が悪いせいかな?後ろで、ガタガタ聞こえないですか、兄貴」
「女が、暴れてたりしてな、ハハ」
「怖いこと、言わないで下さいよ……あれ?」
「どうした?」
「兄貴が変なこと言うから、エンストしたじゃないですかぁ」
「……」
「それにしても、ココは気味の悪い所ですよね」
「……」
「兄貴の彼女ってブサイクですね」
「……」
「どうしたんですか?」
「俺の後ろ、誰かいないか…」
「……いいえ、誰も。」「そうか…おい、あそこに池みたいなのが見えるだろ」
「ええと、あれですね」
「あそこに棄てて、さっさと帰るぞ。後ろ開けろ」
「へいへい。開けましたよー」
「……おい、女どこだ?」
「どこって、トランクで三つ指ついて、ウエルカム言ってるでしょ」
「いないんだよ…女が」
「わああああああ!!」
「どうしたっ」
「女が、女が後部座席にいいい、いるっ!」
「生き返ったのか!?」
「……死んだまま横になってる」
「…さっさと棄ててくるぞ、手伝え!気のせいだ」
……池にソレを沈めて、車の所に戻ってきたが、結局エンジンはかからない。
先程の事が気になり、すぐにでもココを離れたかったが、辺りは暗く、道に迷いそうだった。
食べ物といえば、ポケットのガムしかなく、ふざけて膨らませていたらガムが虫だらけになる。
おえっ
…暫くして、二人が暇つぶしに夜空を見ていたとき、小さく民家の明かりが見えた。




