行ってみる
ホタルよ、ホタル
こちらへおいで
ほら、ここの水は…
二人は車を降り、民家の所へ行ってみることにした。池の事について、何か聴けるのではないかと、考えたからだ。
ただ、これが昔話の場合には、大抵よくない事が起こる。
「最悪でも、死ぬことはないわよ。ハハハ」
こういう時の妻には、救われる思いがする。
…羨ましい性格だな
五分ほど歩いて、妻が息切れし始めた頃、民家の玄関先に辿り着いた。
民家は、古い木造の小さい建物だったが、人が住んでいると思わせる、手入れされた庭も含めて普通の家だった事に、少し安心した。
呼び鈴が無いので、戸をドンドン叩く。
「すいません、どなたかいらっしゃいませんか」…1分ほど静かに待つ
すると、建物の中での物音が段々大きくなり、そして近づいてくると、戸がガタガタ磨り硝子を揺らして開いた。
「すいません、ちょっと聴きたい事があるのですが…」
小柄な婆さまが、こちらをジッと見て、
「何だい?」
「この近くに有る、池のことについて…」
「特にないね。それよりアンタら、こんな山奥によく来たもんだ。どこから来た?」
「◯◯からです。」
「そんな遠くから…この辺にはウチの家しか無いけど、アンタら今晩どうするね?」
「車の中で寝ます…」
「そうかい。だったら、泊まっていくかい?」
「え、いいんですか?」「…隣の女性の青白い顔見てたら、ほっとけないさ。ひどい顔して、どこにブツけてきたんだい?」
その夜、妻は出された料理を一口も食べすに、布団に入って寝てしまった。
大丈夫だろうか…




