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  作者: VISIA
13/15

無謀

「…そんな事が、出来るのですか?」


「うむ。」


 婆さんの顔から、笑みが消えた。

 婆さんは懐から、人肌に冷めた缶茶を取り出した。

 缶を開け一口啜ると、雲ひとつ無い夜空を見上げる。


 木々の、三角シルエットを額縁にして、ちかちかと沢山の星が瞬く。

 そこを、長い尾をひいた彗星が、ゆっくりと横切っていく所だった。


 婆さんが、こちらを向く。


「あれを見たことがあるかい?」

「彗星ですね。初めて見ますが…」


「私は三度目だよ。」

「それより…」


「ああ、簡単に言うと、あの彗星を池に落とす。」

「えっ?」


 婆さんが、彗星に向かって大きく手を振る。


「おーい。」

「……冗談でしょ?」


「…………冗談だよ。」 婆さんが手を振るのを止めると、近づき始めた彗星が、適当に向きを変え何処かへ飛んでいってしまった。


「…で、他に方法は無いのですか?」


「…あの彗星が近づく年の今日、日の出までの間は、この池の水が酒に変わる。それを全て飲み干せばいいのだ。」

「あと四時間で?」


「うむ。」

「仮に、飲み干せたとしても、酔って助けに行けるかどうか…」


「後の事は考えるな。すぐ始めるのだ。」

「…わかりました。」


 自分が池の側まで近づくと、先客が四つん這いになり、その池の酒に頭を突っ込んで、飲んでいる姿があった。


 少し遠慮して、離れた所に移動する。


「…この辺でいいか。」 正座して心を落ち着かせ、顔を叩いて自分に活を入れると、四つん這いになり、池に顔を突っ込んだ。

 婆さんが、自分の後ろに立つ。


「そのままで聴け。この池は水量が減ると、それを元に戻す為の部隊がでてくるのだ。そうなれば飲み干すのは更に困難となる。」


……!


「まあ、心配するな。応援は呼んである。」


 自分が、少し顔上げて周りを見渡すと、先程の先客以外にも、たくさんの人?たちが池に沿って並び、むさぼるように酒を飲んでいた。


 それは、宴会という雰囲気ではなく、今の内に飲めるだけ飲んでおけ、という¨必死さ¨ばかりが感じられる。


「私の知り合い達だ。みんな、酒で寿命を縮めた猛者だよ。ヒヒヒ」

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