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  作者: VISIA
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12/15

知る

 不安は、突然訪れる。

 二人は、池に沈んだまま浮かんでこなかった。


 あの少年もあれから姿を見せず、少し淋しい感じがしていた。


………。


 水辺にしゃがみ込み、ぼんやりと池を眺める。

 時々、池に手を入れてみたが、何も起きなかった。


…典子。…先輩。


「ああ、こんな所にいたか。」


……あの家の婆さん?


 懐中電灯の光を向けられ、急に現実に引き戻された気がした。


「家の中は酷い有り様だし、アンタら二人はいないし、捜してみればこんな所にいるし。」


……。


「いったい、どうした?」

「……え…ええと…」


「何かあったか?」

「……」


「顔色の悪い、あの女の人はいないようだね?」「えっ…ああ、…ええ」

 一瞬、どちらの女性の事か、判断に迷った。

 だいぶ、疲れているのかもしれない。


「妻は…」

「この池には、¨ぬまこ池¨という名が付けられている。」


「?」

「だが、もう一つ別の名前があるのだよ。池の前で、手を叩いてごらん」

「…ぱんぱん。こうですか?」

「うむ。」


 何か白いものが、ゆっくり浮かんでくるのが見える。


……?


 小さな水音をたてて池から出てきたのは、後ろを向いた年配の男性の頭だった。

 その頭が、静かにこちらを向くと、青白い顔が口を開く。



ゲエエエエェっぷ


…いきなりゲップかよ


「この男性は誰です?」「私の爺さんだよ。たまに会いに来ている。」


「………河童ですか?」

「普通の人間だよ。何年も前に死んだけどね。」


「?」

「こちら側に遊びに来ているんだよ。この池は、あの世への門でもある。」


 婆さんが、池に向かって小さく手を振ると、爺さんは静かに沈んでいった。


「……。」

「もし、この池に落ちたのなら、助けるのは簡単な事ではない。」


「……どうすれば…」

「一時的に、あの世の門を閉じる方法がある。」

 婆さんは、微笑んだ。


 だが、その微笑みが、自分の不安を更に大きくしていく。

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