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第三勢力?

 ここでモルガナが出てくるとは。タイミングは悪いが居所がわからなかったんだ、自分から出てきてくれたことに感謝してやろう。この機に倒せるといいんだが……


「モルガナ様! お早い御着きで」

「何を言っておるのだ。お前が申したのであろう。術への抵抗力が上がってきていると」

「そうでした。すでに術が解けかけておりますゆえ」

「わかっておる」

 モルガナとアルマがそんな会話をしていると、アギトが前に出て呟いた。

「掻っ攫え」

 モルガナが苦しむ黒髪の女へと近づくとすぐ横の空間に竜巻が発生し黒髪の女へと襲い掛かる。

「なんだ!?」

 モルガナが声を上げた頃には竜巻は黒髪の女を巻き込んでいた。竜巻はそのまま真っ直ぐに城下の破壊されていない建物の屋根へと激突した。

 土煙の上がる中に人影が見え始める。

 全員の視線がその人影へと集まる。

 土煙が晴れるとそこには黒髪の女を抱きかかえて立つ女性がいた。

 白っぽいローブを纏い、白髪の長髪、透き通るような白い肌、碧い瞳のとても綺麗な女性だった。

 印象的にはアギトを女性にしたような感じだ。

 モルガナもアギトも白いがこの女性も白いイメージだ。

 僕はここで少し違和感を覚えた。何かを忘れているような。そしてそれが重要なことのような気がしてならない。それを思い出さないと取り返しのつかないことが起こるような、そんな胸騒ぎがする。

「何者だ?」

 モルガナが白い女性に問いかける。

『私の名はシルフィ、この娘は返してもらう』

 シルフィ? 知らない名だ。でもなんだ? 聞き覚えがあるようなないような……

「ゲームのキャラクターみたいな名前ですね」

 汐音君が呟いた。

 ゲームか……それなら聞き覚えもあるか。

 それよりも、アギトの言葉だ。アギトが「掻っ攫え」と言った直後にシルフィは現れた。アギトの仲間なのか?

「アギト!」

 僕はアギトへ視線を向ける。

 アギトは何も言わず、口角を吊り上げ笑みを見せている。その表情だけで仲間なのだとわかる。

 しかしなぜ黒髪の女を? アギトはモルガナの仲間だろう? 何がどうなっているんだ?

 眉をひそめていたモルガナが口を開く。

「知らぬ名だな。それよりその娘を返してもらうとはどういう意味だ?」

 モルガナは知らないようだ。アギトの仲間なら見知っているのかとも思ったが違うのか?

『そのままの意味だ。私の役目はこの娘を奪い返すこと』

 奪い返すと言うのはどういうことだ? 黒髪の女はもともとシルフィのそしてアギトの仲間ということか? そういえば黒髪の女はアギトに助けを求めていた。やはりそういうことなのか?

「役目……」

 カレンちゃんが呟く。最近よく聞く単語だ、気になるのだろう。

「ふん、そうやすやすと手放すとでも思うのか?」

『お前たちごときがたった二人で何ができる?』

 シルフィは挑発するように高圧的に言う。

「なに?」

『ほうら術者のいなくなったゴーレムが瓦解してきたぞ』

 シルフィの言う通りゴーレムが崩れ始めている。

「ふん、ワタシは人間を操れるのだぞ。この程度の術乗っ取ることなど造作もない」

 モルガナがゴーレムに触れると、ゴーレムの足元に魔法陣が出現し、スキャンでもするかのように魔法陣がゴーレムの頭頂部まで上がっていく。頭頂部まで上がった魔法陣はその頭部に吸い込まれていく。

 すると崩れかけていたゴーレムの体が修復していった。

「どうだ? この通りだ。これでこのゴーレムは私の操り人形だ。ふふん」

 モルガナはドヤ顔をし鼻で嗤う。

『さすがですね。しかしそれほどのゴーレム、操るにはその場から離れられないのでは?』

「それがどうした? このまますべてを踏みつぶせば済むことだ」

 確かにそうだ、かえって不利になったようなものだ。シルフィはなにを考えているんだ? いや、シルフィはあの黒髪の女を奪い返すのが役目と言っていた。ならここがどうなろうと構わないのではないか? モルガナをゴーレムに縛り付けるのが目的ならば、目的は遂げられたことになる。後は逃げるだけだし。

 モルガナはシルフィに誘導されたのか。

 それは僕たちにとっては嬉しくない展開なのだが。

『フフッ、そうですか?』

 シルフィは笑った。やはり僕の推測が正しいのか!?

 その時、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 という叫び声と共にアルマが落ちてきた。

ドズゥゥゥゥン

 アルマ……死んだかな?

「く、そが……」

 残念ながら生きていた。さすがにしぶといな……いや、あの高さから落ちて生きているって魔法で衝撃を和らげたのか?

 なぜ落ちてきたのかと上を見上げるとモルガナの首が刎ね飛ばされていた。

 鮮血が吹きあがり、白いドレスは赤く染まる。

「なっ!?」

 何が起こったのかと目を凝らしてみると、モルガナの体の後ろにナイフのような物を振り抜いたアギトの姿があった。

「なんで!?」

 それを目撃した全員がそう思っただろう。アギトはモルガナの下へ行ったはずだ。本人もそう言っていた。にも拘わらずアギトはモルガナの首を刎ねた。

「アギト……また騙されちゃった……」

 カレンちゃんが嬉しそうにそして涙声で言った。カレンちゃんはアギトがやっぱり味方なのだと思っているのだろう。しかしそう考えるのは、味方と言い切るにはまだ早い。アギトの行動は不可解過ぎる。

 首を刎ねられたモルガナの体は倒れず、その両手で頭をキャッチした。その頭をそのまま頭の乗っていた首へとねじ込んだ。

 首は繋がり、どういうわけか斬られて短くなった髪も元通りの絹糸のような綺麗な長髪にもどっている。

 血に濡れた美しい顔が醜く歪む。そしてその赤く鋭い眼光がアギトをとらえる。

「きさま……何者だ?」

 やはりモルガナはアギトを知らないのか!?

「ハァハァハァ、ほんとに、バケモンだな。……人間、やめちまったか?」

 荒く呼吸するアギトは質問には答えずそんなことを言う。

 人間をやめた? モルガナは人間だったということか。ハイドの件もある、僕も一度は考えたことだがアギトはやはりいろいろと知っているようだ。

「何者だと聞いている!」

 モルガナは声を荒げると、アギトを蹴り飛ばした。

「ぐっ!?」

 アギトは両腕を交差してガードをしたが、この威力ではあまり意味はないだろう。

ドォォォン

「がはっ!? ぐう……」

 地面に叩きつけられたアギトは起き上がれずに呻いている。

 これでアギトがモルガナの敵であることは確定したと言える。

 一度整理が必要か。僕は思考の海にダイブした。

 アギトは攫われた黒髪の女の行方を追っていた。黒髪の女はレイクブルグで召喚された者だとあの護衛兵は言っていた。アギトはレイクブルグの関係者かもしれないな。アギトは黒髪の女がモルガナに操られていることをつき止め、奪い返すために潜入し、術が解けるのを待ちシルフィに命じて奪い返した。アギトは仲間を駒のように扱ったモルガナを許すことができず倒そうと考えていたのだろう。しかしモルガナを倒すには通常の攻撃では効果がないと知っていたアギトは僕たちに目をつけた。一度僕がモルガナにダメージを与えたことをどこかで知ったのだろう。僕たちに協力するふりをし、僕たちの力を引き出そうとした。僕たちの力を利用するために……

 こんなところだろうか? だとすると、味方と言うより第三勢力と考えた方がいいかもしれないな。隙を見せるわけにはいかない。しかし、今は……

 僕は思考の海から帰還した。

 視線をアギトに向けると、アギトは左手を体にかざし回復魔法を掛けようとしているみたいだがうまく発動していない。痛みで集中できないのだろう。

「アギト!」

 カレンちゃんがアギトへ駆け寄り回復する。

「アギト、やっぱり敵じゃなかったんだね?」

 カレンちゃんが涙を流しながら言った。

「ハァハァまだ、そんなことを、言っているのか。ハァハァ、たまたま、共通の敵が、出てきただけだ」

 アギトは苦しそうに言うとカレンちゃんを払い除ける。

「そうだとしてもあなたを、モルガナを倒す戦力として失うわけにはいかないんです」

 汐音君がアギトを押さえつけ回復しようとする。

「何をしているんですか! その男はアキさんの(かたき)なんですよ!」

 サラさんが信じられないといった様子で詰め寄る。

「しかし、モルガナを倒すにはアギトの力が必要です! アギトを倒すならその後でもいいでしょう」

「くっ!?」

 サラさんは苛立ち顔を歪めている。

 サラさんも汐音君の言い分は頭ではわかっているはずだ。ただ感情がそれを許さないのだろう。

「お……あ、アギト、どうやったらモルガナを倒せるの?」

 駆け寄ってきた冬華ちゃんが素直に訊ねる。冬華ちゃんもアギトが何か知っていると思ったようだ。

 そう、今はそれが最優先事項。モルガナを倒さなければ。

 しかし冬華ちゃんのアギトに対する態度が変わったのは気になる。心境の変化か? 剣で負けたのが効いているのかはわからないが、カルマの視線が鋭くなっているのはたしかだ。

 とにかく倒す方法を聞き出さなければ。

「アギト! いいから話せ!」

「ハァハァ、まあいいだろう。カルマ、とりあえずアルマの止めを刺して来い」

「はっ!? なんでオレがお前に命令されなきゃならねぇ!」

 カルマは敵意丸出しで拒否する。しかしアギトはそんなものは無視して続ける。

「ハァハァ、あれは偽者だ、生かしておく必要はない。逃がすなよ!」

「くっ!? なんでそんなことがわかる」

「ハァハァ本物は、俺の手中にあるからだ」

「人質ってことかよ……」

「ハァハァハァ」

 アギトは答えないがそういうことだろう。僕たちを動かすためにおさえていたのか。しかし今は従うしかない。目的は同じモルガナを倒すことなのだから。

「モルガナを倒したら返してもらうぞ!」

 僕はアギトを見据えて言う。

「ハァハァハァ、いいだろう」

 口約束だが目的は同じのためアギトは了承した。また嘘の可能性もあるが……

 それにしても回復魔法を掛けているにも関わらずアギトのダメージが消えていないような?

 汐音君を見ると同じく困惑しているようで、僕を見て首を横に振った。回復できないのか? それはどういう……

「くっ!? 散れ!」

 前方を見て急に声を上げたアギトは汐音君とカレンちゃんを後方に突き飛ばし立ち上がろうとする。

 しかしアギトは体がまだうまく動かせないのか立ち上がることができない。

 僕は嫌な予感がし、剣を構えて振り向いた。

 ゴーレムの手から複数の石の槍が射出されていた。

 僕が撃墜しようと剣を振り被ると突風が吹き石の槍を撃ち砕いた。

『仕方がないですね』

 シルフィはモルガナに鋭い眼光を向けている。今のはシルフィが? 僕たちを守ってくれるのか?

「(シルフィ……)」

 ん? 冬華ちゃんがシルフィの名を呟いていた。ゲームの事でも思い出したのか? 今はそれどころじゃないだろう。

 アギトがふらつく足で立ち上がると口を開いた。

「ハァハァ、わかっているとは思うが、ハァモルガナには光輝と冬華、それから総司の攻撃しか効かないだろう。モルガナには3人であたれ」

「うん、わかった」

 冬華ちゃんは素直に返事をする。……ホントにどうしたのだろうか。

「ハァ、言っておくが……普通の攻撃では効果はないからな。この意味わかっているだろうな」

 アギトは僕の目を見て言っていた。完全に僕に言っているな。なんなんだ?

「わかってる!」

 僕は目を逸らさずに言った。アギトは目を伏せると続ける。

「ハァハァ、汐音はカルマの援護だ、死にかけているだろうが何をしてくるかわからん注意しろ。ハァ、カレンはここで結衣を見ていろ。サラは魔法で光輝たちを援護だ」

「あなたに呼び捨てにされる覚えはありません!」

 サラさんは声を荒げて言う。

「ハァハァ、まだ元気みたいだな……行け!」

「うん!」

「「おう!」」

「はい!」

「仕方ねぇ行ってやるよ!」

「フンッ!」

 アギトの合図で各々駆け出した。

 アギトは残っているマリアさんに指示を出しているようだった。

「マリア殿、でしたね。あなたはここで二人を守っていてもらえますか?」

「はい、わかりました。あの、アギトさん……あなたは一体……」

「……」

 アギトはそれには答えず力を絞り出すように歯を食いしばると、姿を消した。


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