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はじめての死闘

 読んでくださっている方ありがとうございます。

続きです。どぞどぞ

 「クソッ……なんでこうなった」


 俺は一人呟き剣を構えて魔物の群れの前に立つ。

 魔物たちは仲間が殺されたからなのか元々人間が嫌いなのか、敵意と殺気を振りまいて俺の方を見てシャァシャァーと威嚇してくる。先生たちへの攻撃が止んだのはいいのだけれど……狙いが全部俺に向いたのはイヤ過ぎる。

 魔物の数はデカイのを合わせて残り12……無理ゲー過ぎるだろ。デカイヤツの力量もわかんないし……てかあれ魚人の最終段階だろ! 本物のフィッシャーマンだろ! 倒すのが困難な、俺が逃げ一択宣言したあれだろ! 確かに見てみたいとは言ったけれど、遠くからチラ見だけでよかったのに、なんであんな敵意に満ちた目で見据えられないといけないんだ! って言ってる間にザコ魚人がビチビチッとにじり寄ってくる。


「さて、どうする!」


 四体が俺を囲おうと近づいてくる。囲まれると完全アウトだ。

 俺は剣を地面に突き刺し両手を懐に突っ込んでナイフを素早く取り出し、近づく両サイドの魚人の頭めがけて投げる。同時に剣を掴み正面の魚人に切り掛かる。ナイフは見事にヘッドショットが決まり、魚人二体はその場で倒れる。俺は正面左の魚人に右上からの袈裟切りを繰り出す。当然頭狙い! 頭を斜めに切り割いた直後、右にいた魚人が飛びあがり尾ヒレで攻撃してくる。俺は剣を斬り返して左下からの逆袈裟切りを右上にジャンプしながら繰り出す。尾ヒレが当たる前ギリギリで二枚におろすことに成功した。魔物は無形状じゃなければ心臓か頭をつぶせば倒せる。頭はむき出しだからホント助かる。

 あと8匹! 俺は魔物の方を見るとフィッシャーマンの姿が消えていた。

「デカイのどこ行った!」

 俺の着地と同時にカレンの叫び声が飛んできた!

「アキ後ろ!」

 声に反応し後ろを振り向こうとした時、後ろに回っていたフィッシャーマンが強烈な一撃を繰り出してくるところだった。俺は無防備な背中にいい蹴りをもらってしまった。

「ぐっ!?」

 俺はおもいっきり蹴り飛ばされ魚人の群れの中に放り込まれた。

 少しだけ背中に魔力を集中させたから致命傷は避けられたが、カレンが叫んでくれなかったらあれで終わっていた。それでもまだまともに動けずにいると、魚人共がワラワラ寄ってくる。幸いデカイのはあの場にとどまっているが……

「ぐ……ハァハァ」

 なんとか上体を起こすと目の前に尾ヒレが撃ち込まれるところだった。転がって避けたが避け切れずに頬が裂ける。

ブシュッ

 鮮血が飛ぶ……尾ヒレ結構硬い!

(魚人のくせに生意気!)

 と言ってる間にも尾ヒレがフリフリ飛んでくる。密集してるのが幸いしてか、水の弾丸は飛ばしてこなかった。転がるようになんとか躱しているが、このまま転がってたらいつかつかまる!

「クソッ!」

 転がる回転に乗じて剣で横薙ぎに振りぬく! 一瞬でも隙ができればそれでいいってくらいのこの一振りは、案の定魚人には掠りもしなかった。だが、ほんの少しの隙を作るのには成功した。

 その隙に上空にジャンプしてその場から脱出する。無我夢中でジャンプしたから結構なスピードが出たらしく。下の魚人たちは俺を見失ったみたいだ。デカイのもまだこっちを見てない。

 今のうちに残りのナイフを取り出す。

 ちなみに最初持っていたナイフは6本、最初に2本使ったから残り4本!すかさず下の魚人たちに投げつけた! ナイフは4体の無防備な頭に直撃する。

「よし! 残り4た……」

「アキ! あぶない!」

 デジャブかよ!と思った瞬間目の前にフィッシャーマンが腕を振りかぶった状態で現れていた。

「はやっ」

 俺が言い切る前に殴りつけられる……空中から地面に叩きつけられた。

「がはっ!」

 背中から落ちたせいで呼吸がうまくできない……ヨロヨロと上体を起こそうとするが体が言うことをきかない……

 フィッシャーマンが近くに着地し近づいてくる。見下すように口端を吊り上げ笑いながら俺を蹴り飛ばす。

「ぐっ!?」

 腕でガードはしたものの、見事に吹っ飛ばされ木造の家に突っ込んでいく。おかげで家に風穴が開いてしまった。不可抗力だから弁償は勘弁してほしい。ここを切り抜けられたらの話だが……

 結果的に隠れることができたため回復することができた。まぁ、アイテムだから動ける程度までしか回復できなかったんだけど……

「やばいやばいやばい、これ勝てる気がしない! 死ぬ死ぬ死ぬ……」

 俺の頭の中は絶望に塗り潰されそうになる。

 風穴からフィッシャーマンがこっちに近づいてくるのが見えた。俺は家の扉から外に飛び出す……さっきのガードの際に両腕でガードしたため剣を落としてしまい、ただいま絶賛徒手空拳中であります! 素手の殴り合いなんてしたことないってのに。そんな素手で構えをとる俺を見てカレンが叫んできた。

「アキ! 魔法魔法! なんで魔法使わないの!」

 この子なに勘違いしてんだよ! 俺魔法使えるなんて言ったか? ……使えないとも言ってないけど!

「俺魔法使えないんだよ!!」

 俺はやけになり叫ぶ。

『えぇぇぇ————!?』

 カレンはもちろん、固唾を飲んで見ていた先生たちも声を合わせて叫ぶ。

「ちっ!?」

 俺は舌打ちをする。先生たちの叫び声につられるようにザコ魚人共が先生たちへの攻撃を再開したからだ。

 俺としてはこの隙に何とかデカイのを倒してしまいたいんだけれど……

「母さん!?」

 カレンが今にも走り出しそうにしている。カレンを守りながらなんて難易度が跳ね上がりすぎる! そう判断し、俺はデカイのに向かって走り出しポーチに手を入れる。

「ほらよ!」

 俺はフィッシャーマンに向かって煙玉を投げつけた。ヤツが煙玉を払いのけたとき、煙玉は破裂しヤツのまわりに煙が立ち込める。それをを確認し、俺はザコ魚人の方に方向転換する。

 ダガーを二本抜き右手のダガーを結界に向かって水の弾丸を飛ばそうとしている一番近い一体に向けて投げ、一気に距離を詰める。魚人の顔に刺さったダガーを右手で掴み跳ね上がる、回転するように体をひねり、左手のダガーで隣の魚人の頭に突き刺し、さらに回転してその隣の魚人の頭を右手のダガーで切り落とす。なかなかアクロバティックな攻撃をしてしまったが、なんとかザコは片付いた。

(フッ、ザコはザコか……)なんて言ってる暇は

「ない!?」

 煙の中からフィッシャーマンが飛び出してくるところを目視してしまった。顔コワッ!

 俺はザコの死骸をヤツに向かって蹴り飛ばすのと同時に前に出る。ヤツが左腕で死骸を払いのけるのと同時に隙のできた左胸めがけて右のダガーで突く。しかしヤツの右腕に叩き落とされる。ヤツの右側が開いたところを狙って左のダガーで首を狙い振り抜こうとした。

 このとき俺は完全に忘れていた。ヤツが人に近い形をしていたため、魚人特有の攻撃があることを……

 俺がヤツの首に目がいっているあいだ、ヤツは真っ直ぐに俺の顔を見据えていた。ゾクッと背筋が凍りつく。視線を上にずらすとヤツと目が合った。その瞬間、ヤツの口から高出力の水の弾丸、ではなくレーザー光線のように水を飛ばしてきた。俺は首を左に傾けてギリギリで躱したがヤツはそのまま首を下に振って水レーザーで俺の右肩口から真下に切り裂いた。まるでライト〇ーバーでフォンって斬られたような光景だった。


「なっ!? ぐあっ!」

ブシャ——————ッ


 俺の肩口から鮮血が飛び、俺は膝を折って倒れ伏そうとした。ヤツはそんな俺を嘲笑うかのように口端を吊り上げ蹴りで追撃してきた。俺は反応すらできず無防備に蹴り飛ばされた。


「ガハッ!?」

ズザザザ————————ッ


 俺は10メートルくらい飛ばされて地面に転がった。体は動かなくなって感覚も薄れていく。ヤツは動かなくなった俺に興味がなくなったのか、先生たちの方へ歩き出していた。

 最後にその光景を見ながら俺は思う。

(あれは早すぎるだろ……どんなにフェイントを入れても反応が早すぎて躱される、俺の反応速度じゃ追い付けない……だろ)

 そして俺は意識を失った。


「アキ———————ッ!?」


 誰かが俺を呼んだ気がしたけれどもう何も聞こえない……



 ………………


 俺は夢を見ていた……昔の子供の頃の懐かしい夢……

 夕暮れの道場……稽古が終わり、立ち合いであいつになかなか勝てない俺にじいちゃんが見せてくれた。

「あきお、お前は目で見すぎるからいけないんじゃよ」

「え~見なきゃどこにいるかわかんないじゃん」

「見るだけではいかんとゆーことじゃ。感じるのじゃ、〇ォースを!」

「じいちゃん映画の見すぎ……」

 俺はジト目でじいちゃんを見やる。

 じいちゃんはスベッたことを隠すように一つ咳ばらいをして続ける。

「まぁ、それは冗談じゃがな。真剣勝負では相手を感じることが重要なのじゃ」

「は???」

 俺は意味がわからず顔を顰める。

「神経を研ぎ澄まし相手の気配、殺気を感じて、相手の動きを読むのじゃ」

「何言ってるの? そんなのできるわけないじゃん。俺小学生だよ」

 まったく小学生に何を期待してるんだか……

「年なんぞ関係ないわい! それができないと一太刀であの世行きじゃわい」

「じいちゃん、竹刀であの世行くってどんだけ力強いヤツなんだよ」

「例えじゃ例え! ……よいか、見るだけじゃなく、神経を研ぎ澄まし体全体で気配、殺気を感じる。さすれば今まで以上に早く反応でき、素早く動けるようになり、こちらの攻撃も当たるということじゃよ」

「ふ~ん」

 俺はすでに話半分に聞き流していた。

「あきお! お前聞いとらんじゃろ!」

「聞いてるけど、そんなのわかんないもん。なあ?」

 俺は同意を求めるように隣に顔を向ける。

 そんな俺に何かを思いついたのかじいちゃんがポンと手を打つ。

「よし! お前たちにいいものを見せてやろう! 誰にも見せたことのないとっておきじゃぞ!」

「え、マジ!? なになに?」

 この時の俺はやはり子供、とっておきと聞いて食いついてしまった。

「食いつきおったな。よしあきお、お前そこに立っておれ。動くなよ」

「うん!」

 俺は爛爛とした目でじいちゃんを見ていた。

 じいちゃんは竹刀を構え目を閉じる。無駄な力の入っていない超自然体な構え。一つ息を吸い込む。

 

「ゆくぞ!」


「……え!?」


 じいちゃんが消えたと思ったら風を切る音が数回聞こえて、そしたらいきなりじいちゃんが目の前に現れた。

「すげ———! じいちゃんすげーよ! なにやったかわかんないけどすげ————! なあ?」

 俺たちは興奮して歓喜の声を上げていた。

「そうじゃろそうじゃろ」

「俺たちにもできるかなぁ?」

「さっき言ったことができるようになれば、目を閉じていてもできるようになるぞぃ」

「「マジで!? すげ————!」」

 俺たちはヒーローを見るように瞳を輝かせてじいちゃんを見ていた。



 あの頃のじいちゃん無茶ブリするよなぁ、小学生の俺に何させようとしてたんだよ……

 感じる、か。見ることは大事だけど、目で追えないものに対しては見る行為がタイムロスになる。だから体で感じることができればロスなく行動に移すことができる。感じたことを脳に伝達し、次の動作を脳から各所に伝達する。神経を研ぎ澄ますことによりその過程を効率よくスピーディーに成すことができる。要は神経回路を強化すればいいってことか? 神経は体中に張り巡っているわけで、強化すれば感度も上がる、感じたらすぐさま反応が可能になる。修練しだいで反応速度がガンガン上がるってことか? 合ってるかな? 合ってるよね? 俺の勝手な解釈だけど、まぁこういうのは思い込みが大事だよな。自分に暗示をかけなきゃこんな無茶できないよ! できる、俺ならできる! よし、できる!

 それにしても今回の夢は長いなぁ……そうか、悪夢じゃなくて懐かしい夢だからか! それともやっぱり俺死んだ?

 などと考えていると遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


「アキ! アキ! 目を覚ましてよ! お願いだから目を開けて!」


「……ん……いっ!?」

「アキ!?」

 声の主はカレンだった。そこに女神はいなかった。

 カレンは赤い瞳を涙で濡らし俺の傍らにペタンと座り込んでいる。なんだ膝枕じゃないのか……チッ、スカートが短くないからパンツが見えない! ……じゃなくて! どのくらい寝てた? 出血量は? ‥‥あれ? 余計なことを考えられるくらい余裕があるのはなぜだろう?

「あれ? 血が……」

「うん、応急処置だけど血は止めたから」

 というカレン、実際止まっているのはありがたい。出血多すぎたらマジで動けなくなるから、ナイスだカレン! 薬師の名は伊達じゃないな。ほめてあげたいがそれどころじゃないか。結界が今にも破壊されそうな勢いだ。

「サンキュ」

 俺はそれだけ言うと立ち上がる。

「ぐっ」

 俺の顔が痛みで歪む。血は止まっていても痛みはあるのな。右手の感覚は今だにない。右手にダガーは握られていない、斬られたときに落したか。まぁ、右手が使えないから同じなんだけれど。

「カレン、下がってろ」

「うん」

 カレンが離れるのを確認して構える。

 無駄な力を抜いて超自然体に……気配、殺気か。あの時のゾクッとしたあれだよな……目を閉じ集中し神経を研ぎ澄ます。神経回路に魔力を高速で流し込む……イメージ。

 かすかに嫌な感じが……あ、鳥肌立ってきた。

 あれか!? 俺は殺気の向こうにダガーを放つ。ギシャーとヤツの叫びが聞こえる、不意をつかれて防御しきれなかったのだろう。

 ヤツがこちらに近づいてくる……俺はポーチから苦無を取り出し息を吸い込むとヤツに向かって走り出す。足元の地面が弾けた気がしたが気にしない。

 俺はヤツの顔面めがけて苦無を放つ。ヤツが苦無を弾くのと同時にサイドに方向転換しヤツの背後に回り込む。再度取り出した苦無で首を斬り払う‥‥が嫌な感覚がよぎり当たる直前に逆サイドに跳ぶ。さっき俺が斬りかかっていたところにヤツの裏拳が空を切る。俺はすかさず死角から首を斬りつける。今度こそ当たったが硬くて通らない。

「クッ、硬い!?」

 俺はまた逆サイドへ飛ぶ、ヤツの拳が俺のいなくなった空を殴る。ヤツはキョロキョロ首を振り俺を探している。

 まだだ、まだ早くできるだろ! 集中しろ! 研ぎ澄ませ! あの時のじいちゃんみたいに……


「 一刃乱舞(いちじんらんぶ)! 」


 俺は高速移動で死角からのヒット&アウェイで首を切り刻む、何度も何度も何度も何度も刃が乱れ舞うように。いくら硬い首だとしても切り続ければ必ずとぶ!


「おぉぉぉぉぉぉ————!」


 俺は咆哮と共に斬り続け、そしてヤツの首を切り落とした。頭が宙を舞い、頭のなくなった首から血飛沫が舞う。頭のなくなったヤツの体はしばらくビクビク動いていたがすぐに力なく膝から崩れ落ちた。


「ハァハァハァ……終わった……死ぬかと思っ」


 俺は力尽きてその場で倒れ気を失った。。。


「アキ———————!」

 ん? また誰かに呼ばれたような気がするけどもういい眠い、寝る……


 戦闘シーンって難しい

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