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降下作戦

【旧日本国:上空】


「...思っていたよりも酷いな」

眼下に広がる光景に、思わず呟いてしまう。

俺たちを乗せた輸送ヘリ(CH-47チヌーク)は現在、旧日本国の首都東京に来ていた。


「そうだね....昔はもっと綺麗だったのに」

シズカも同じ気持ちなのだろう...悲しそうな顔をしている。

「ああ...」

視線を眼下に戻す。

ほぼ全てのビルは倒壊し、東京のシンボルであった“東京タワー”と“スカイツリー”は両方とも,

真ん中から折れている。


「.....」

俺が感傷に浸っていると….。

「....それにしても、任務の書類を読まないなんて...考えられないよね~?」

アスカが大声で言っている。

「ぐっ...アスカ....そのことは今朝、謝っただろう?」

俺もカズヤも書類を読んでいなかったので、任務が次の日とは知らなかった。

...そのことについて、朝からみんなに怒られ、精神に大きなダメージを受けていた。


「でも普通は、書類に目を通してから渡すよね?....普通はさ?」

朝早くに起こされて、機嫌が悪いのか....未だに怒っている様子の、アスカ。

「今朝だって....あんなに殴られたのに」

右の頬を撫でる。

そう....事情を説明してしっかりと謝ったが、結局は怒ったアスカに、思いっきり殴られてしまったのだ。

(歯が折れなかっただけ、良しとするか...)

アスカの拳は、素手でも十分に、人を殺せるレベルだ。


「.....乙女の部屋に勝手に入ってきたハルトが悪い」

「....悪かった....本当ごめん」

いくら待っても、集合場所に来ないアスカを呼びに行った俺だが....。

部屋の鍵が空いていたので、アスカの身に何かあったのでは!と、思い部屋に入ってしまった。


その結果、見たものは.....ベットの上で、パンツ一枚で寝ているアスカの姿だった。

しかも、間の悪いことに、俺の後を追ってきたシズカ達に、その光景を見られてしまい.....。

俺とシズカの、言い争う声で起こされたアスカに....思いっきり殴られたのだ。


「そうだよ....あれはハルトくんが悪い!」

顔を赤くしたシズカが、怒ったように言う。

「うっ....でも、謝っただろう?....殴られながら」

「それでも、女の子の部屋に勝手に入るなんて.....」

シズカがまた、俺に文句を言おうとした時.....。

「そろそろ降下ポイントだぞ?ガキども」

輸送ヘリの操縦席から、怒鳴り声が聞こえる。

「了解しました!....無駄話はそこまでにしとけよ、ハルト?」

そんなことを言いながら、カズヤがパラシュートの準備をしている。

「そうだな.....準備しよう」

そう言って、俺も準備を始める。


「....まだ許したワケじゃないからね」

俺の後ろで、アスカが呟いているのが聞こえる。

「もし、生きて帰って来れたら.....土下座して謝ってやるよ」

「....バカ」

俺に呆れたのか、プイッと向こうを向いてしまうアスカ。

「ハルトくん.....それって、俗に言う.....死亡フラグだよ」

そんなことを言っているシズカ....なんか前にもこんな会話があったような...。

「....絶対に、責任とってもらうから」

俺とシズカの会話を、横で聞いていたアスカが...。

顔を赤くしながらボソリと呟いた。


「みんな!準備は出来たか?」

防弾制服に自動小銃.....完全武装したカズヤが全員に聞く。

(しっかし...この制服で大丈夫か?)


今の、俺たちの服装といえば....映画などでよく見かける、軍人が着ている防弾チョッキやら、無線機やらをガチガチに着込んだ、重苦しい格好....ではなく。

普段から着用している、学校指定の制服と、まったく同じデザインの制服だ。

(防弾性能は言うまでもなく、衝撃吸収性や通気性にまで優れている、優れものの制服だそうだが....いつも着ているからか、不安だ)


「準備完了したよ」

「私も準備OKよ」

俺の心配をよそに、準備が終わった様子のレイカとシズカが答える。

「いつでもいいよ~」

「.....準備終わってるよ」

元気に答えるカグラと、呟くように答えるアスカ.....帰ったら本当に土下座しないとな。

「.....準備完了」

「じゅっ...準備完了しました!」

マヤとサクヤも答える。

「俺も準備完了だ....行こうか?ハルト」

「ああ」

(こうなったら、仕方ない...覚悟を決めるか)


俺とカズヤが輸送ヘリの出口の前に立つ。

「高度3000m!.....今なら行けるぞ!」

操縦席からまた、怒鳴り声が聞こる。

「了解!.....覚悟はいいか?ハルト」

「何を今更.....シズカ!開けてくれ」

「ええ、分かったわ」

俺の言葉でシズカが輸送ヘリのドアを開ける。


「....っ」

開いた入口から入り込んでくる強風に、思わず目を閉じてしまう。

「行ってこいガキども!...もし死んで.....骨ぐらいは拾ってやる!」

操縦席から激励?の言葉が聞こえてくる。

「だそうだ?よかったなハルト、骨は拾ってくれるそうだ」

笑いながら、俺に話してくるカズヤ。

(これから本当に骨だけになってしまうかもしれないのに...こいつの余裕は一体何処から来るんだ?)


「そりゃよかった....行くぞ?カズヤ」

「了~解」

敬礼しているカズヤ.....本当にこいつは。

ダッ!

俺とカズヤが同時に輸送ヘリから飛び降りる。

「.....っ」

ヘリから出た途端、強烈な風が全身を包み込む

(久々のパラシュート降下だな....中等部の訓練以来だ」


俺とカズヤは地面に向かって急速に落下していく。

「高度500m...ここらが限界だぞハルト!」

高度計を見ながらカズヤがこちらに叫ぶ。

高度500m....パラシュートを安全に開く為の限界の高さだ。

(まぁ...一部の訓練された特殊部隊なら、もっと低い高度でも、パラシュートを開けるんだろうがな)

残念ながら俺たちは、基本的な訓練しか受けていない...ようだ、出来るだけの素人だ。

(そんな俺たちに向かって....いきなりヘリから降下しろ! なんて命令するんだもんな...あの校長は)

今頃は、あの高級そうな椅子に座りながら、優雅にコーヒーでも飲んでいるのだろう。

...ムカつく。


「了解!」

バッ!

カズヤの声を聞き、自分のパラシュートを開く。

俺に続きカズヤも開いた。

「ハルト!あそこに降りよう」

ガズやが指差す方を見る。

(なるほどな...)

カズヤの指差す先には、広い四車線の道路があった。

「了解」

カズヤに返事をして、両手を使いパラシュートを操作する。


「...っと」

(よし.....なんとかうまく着地できたな)

この学園に来てから一度も、パラシュート降下なんてしてないからな..うまく着地できるか心配だった。

ズザッ!

「痛てっ!」

隣では、着地に失敗したカズヤが痛がっている。

...ざまみろ。


「痛てて....ハルト、お前よく無事に着地できたな?」

「まぁな、お前とは鍛え方が違うんだよ」

(偶然なんだけどな)

「さて、他の奴らはうまく着地できるかな…..」

そう言って上を見上げカズヤだったが....。


「なっ…!」

顔を赤くして、慌てて下を向いてしまった。

「.....どうしたんだよ?カズヤ?」

不思議に思い、カズヤに習って俺も上を向く。

そして見たものは.....。


「ハルトく~ん!」

こちらに手を振って降下してくるシズカの姿だった。

...だが。

「.....っ」

俺も慌てて下を向く。

なぜなら....下から見上げると、スカートの中身が丸見えだったからである。

「?」

下を向いている俺たちを不審に思ったのか、首をかしげているシズカ。

そして、その隣では...。


「....!」

ジャカッ!

俺たちが、下を向いている理由に気づいたレイカが....腰に装備しているMP7を構える。

その銃口は、まっすぐに俺とカズヤに向けられていた。


パンッ!

「ぐあっ!」

悲鳴を上げながら、カズヤが前のめりに倒れた。

「なっ....待ってください!レイカさ….」

射撃をやめさせるために、上を向いてしまう。

...しまった!

....そう思った瞬間。

パンッ!

額に衝撃が走ったかと思うと.....目の前が暗くなっていった。


「..くん.....ハルトくん!」

誰かが、俺を呼ぶ声がする。

「うっ...」

ゆっくりと目を開ける。

「ハルトくん!」

目の前にシズカの顔があった。

「シズカ?.....っ」

先ほどの、スカートの中身を思いだしてしまい、思わず顔を背けてしまう。

「シズカ....今度から、降下作戦の時はズボンを履くか、スパッツを履いてくれ.....心臓に悪い」

小さな声でそう呟く。


「う、うん....その...ごめんなさい」

顔を赤く染めながら謝るシズカ。

(....見たことを、怒らないのか?)

事故だったとはいえ...見てしまったは、紛れもない事実だ。

(まぁ、いいか....怒られなくてよかった)

おれがそう思っていると。

「何も...シズカくんが謝る必要はないと思うよ?私は」


俺の背後から声がする。

恐る恐る振り向くと....腕を組んだ姿勢で、俺を見下している格好のレイカがいた。

「レイカさん.....何も撃つこと無いじゃないですか....」

抗議の眼差しを、レイカに向ける。

「偶然の事とはいえ、乙女のスカートの中を見たのだ.....あれくらいで済んで幸運だと、私は思うがね...」

鋭い目線をこちらに向けてくる。


「そ、そうですね.....ははは」

情けないことに何も言い返せない....。

(この人の何が怖いかって?....怒った時の目力の強さだろう)

「....情けない奴」

いつの間にか、俺の後ろにいたアスカが、俺だけに聞こえるようにそう呟いた。

(シズカはどこに行ったんだ?....ああ、あそこか)

見ると、サクヤと何か話している様子の、シズカ。


「....悪かったな」

そう言い返すのが精一杯だった。

「......」

少し離れたところではマヤがこちらを睨んでいた。

「.....」

隣では未だに眠ったままのカズヤが居る。

(任務の開始直後から最悪だな.....本当に、今日死ぬんじゃないか?俺は?)


「ね~!ハルトが起きたんだし、そろそろ作戦開始しようよ!」

大きな声でカグラが騒いでいる。

「カグラちゃんもう少し待っててくれる?...まだカズヤくんが起きてな....」

ゴスッ!

「ぐぁ!......ここは?」

シズカが言い終わらないうちに、カグラがカズヤの頭を蹴って無理やり起こした。

「痛てて....俺は何を....?」


どうやら、シズカのスカートの中身を見たことは、完全に忘れているようだ。

恐るべし、レイカのMP7の攻撃力。


「大丈夫かいカズヤ?....驚いたよ、まさか君が着地に失敗するなんて...」

ん?....一体何を言っているんだ、レイカは?

「着地に失敗?....そうか、心配かけたな」

(おいおい、本当にさっきの記憶がないのかよカズヤ)

「.....?」

不思議そうな顔をしているシズカ。

「フフッ」

そんなシズカに向かって、笑いながらウィンクするレイカ。

ああ.....そういうことか...。

つまり、カズヤから完全に、スカートの中身を見た記憶を消すわけか.....。

(ついでに....自分が発砲したことも、無かったことに、してしまうつもりのようだな)


「いや待て....俺は何か、大切なことを忘れている気が....」

額に手を当てながら、そんなことを言っているカズヤ。

「何言ってんだよカズヤ?お前は着地に失敗して、今まで気を失っていただけだぞ?」

そんなカズヤに対し、俺はこんなことを言っておく。

(..俺もレイカの考えには賛成だ)


なんとなくだが...こいつにm、シズカのスカートの中身を見られるのは、不愉快だからな。

「そうか...?」

それでも、何かを思い出そうとしているカズヤ。

「そ、そんなことより全員揃ったんだ、そろそろ作戦を開始しよう」

なんとか話題をズラす。


「ねー!まだ~」

我慢の限界が近いのか、また大声で騒いでいるカグラ。

「そうだな...ここは戦場だった....ふざけている暇は無いか」

どこか府に落ない顔のカズヤだが、リーダーとして場を仕切り始めた。

「それじゃあ任務の確認だ、みんな集まってくれ」

「待ってました!」

カグラが喜んでこちらに向かってくる。


「今回の任務は新種の”dead”の発見と、その一部を持って帰ってくることだ」

全員が、真剣な顔でカズヤの話を聞いている。

「作戦の所要時間は24時間....これは、俺たちがこの場所にいられる最大時間でもある」


そう....各大陸に(ゲート)が開くと同時に蔓延した謎のウィルスにより、生身の人間は最大でも24時間しか陸に上がることができない。

空気感染こそしないが、24時間以上陸に居ると、目眩や頭痛もっと酷くなると幻覚まで見えてくるらしい...。

これは、人類が陸を取り戻せない理由の一つでもある。


ちなみに...ガスマスクなどを着用したとしても、効果は全くないらしい。

(流石は謎のウィルス....訳が分からない)


「そんなわけで、ヘリの迎えが来るのは明日の今頃....9時くらいか」

時計を見ながら言う。

「みんないいか?ここからは集団戦になる....何よりも俺たちの連携が物を言う」

......結局、チームでの連携訓練はしていない.....というか、できなかった...時間的に。

「ろくな訓練もしていない俺たちだが.....」

少しの間を置いて話し始めるカズヤ。


「それでも俺は.....このメンバーなら、この任務...必ず成功できると信じている!」


拳を握り締めそう言い放ったカズヤ。

「.....」

全員無言で聞いているが、その表情には明らかに、やる気に満ち溢れていた。

(不覚にも、カズヤもカッコイイと思ってしまった.....なんかムカつく)

「それで、カズヤ?これから私たちはどうするのだ?」

顎に手を当てたレイカが質問する。

「そうだな...とりあえずは”あいつら”を片付けてから、決めようじゃないか」

そう言うカズヤの視線の先には.....。

「ガァァァ....」

「ヴォォ....」

気味の悪い声で鳴く”deadデッド”が俺たちに向かってきていた。


「ちっ....ヘリの音で気づいたか...」

眉をひそめながら、カズヤが呟く。


現段階の研究で”dead”について、分かっていることは少ない...。

それでも、奴らが“音”や“匂い”対して敏感に反応することは分かっていた。


「....だからヘリじゃなくて、ボートで行けばいいって言ったのに」

更に呟くカズヤ。

現地への移動手段が、人員輸送用のヘリ出会ったことに対して、出発前にカズヤが電話でアズサ校長に文句を言っていた。


それに対しする、アズサ校長の返答は....。

「時間が無いから、輸送ヘリ行くように!...えっ?それじゃdeadに気づかれるって?.....大丈夫.気づかれないよ!....多分」


と、言っていたそうだ.....何が”大丈夫”なんだ?何が?


「ざっと見て80体くらいか....どうするよハルト?」

(俺に聞くなよ...)

と、言いたいが...これは実戦だ、真面目にやらないとな

「そうだな...一人あたり10体か.....いけるよな?」

「誰に言ってるんだ?」

笑みを浮かべるカズヤ。


「他のみんなも....準備はいいか?」

一応、全員の意思を聞く。


「ええ、問題ないわ」

「同じく」

カチャッ!

シズカとレイカがそれぞれPピー90とMPエムピー7を構える。


「当然!」

「あ~早く殺りたい」

チャキッ!

アスカとカグラもそれぞれSAIGAサイガ-12とヴェープル12モロトを構える。


「......問題ない」

「が、..頑張ります!」

ガチャンッ!

マヤとサクヤもそれぞれ、SVDエスブイディーカスタムを構える。


「みんなは準備万端みたいだぞハルト?」

こちらを振り返るカズヤ。

「そうだな....久しぶりに、暴れるか!」

「はっ!そうじゃなくちゃな!」

ガチャッ!

俺とカズヤも、それぞれMエム16Aエー4とSCARスカーエイチ-Hを構える。


「いいかみんな、相手は人間じゃない.....敵だ!....一切の容赦なく、殲滅しろ!」

カズヤが全員に向かって言う。

「そして.....」

手に持っているSCAR-Hを高く掲げる。


「敢えて言おう....死ぬな!」


「応!」

カズヤの言葉に、全員が言葉を揃えて返す。

「フッ...いくぞ!....エンゲージ!!(交戦開始)」


ダダダダダダダッ!!


ドドドドドドドッ!!


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


廃墟と化した街に銃声が鳴り響いた。

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