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来訪

【学園戦艦:学生寮・ハルトの自室】


「ふぁ~あ......眠い」

カズヤ達と合同訓練を終えて、夕食をすました俺は自室に戻ってきていた。

「訓練自体は良かったな.....問題は....いざ実戦となった時にうまく連携が取れるかどうかだな...」


俺も、一応は作戦指揮兵チームリーダーの端くれだ、作戦オペレーションの立案やチーム全体の指揮を取らないといけない。

....実はこれが結構辛い....。


「俺の指示一つで、チーム全体が動く......俺のミスで、誰かが死んだらどうするんだよ?」

普段から抱えている悩み事の一つだ。

別に他に悩んでいることがないわけでもない...ただ、こればっかりはいつも頭を抱えて考えてしまう。

「あいつら....俺を信じているからチームを組んでいるんだよな...?」


この学園では、入学初日にチームを組む。

入学式当日の最初のHRホームルームの時に学園側から、最も相性がいい四人が選ばれる。

その後、一緒に簡単な任務ミッションを行い、相手が信頼できる人物かどうかを生徒たち自身で決めることができる。

何事もなければ、最初に選ばれた四人でチームを組む場合が最も多い。

......何事もなけれな...の話だが。


どんなことにも“例外イレギュラー”が存在するように....“チームを組む”ただそれだけのことにも、何かしらの例外的イレギュラーな事が起こってしまうものだ。

そう...俺たちのように。


「考えてみると.....よくチームなんか組んだよな」

一年生の時に誰とも馬が合わず、チームが組めない者たちが、半ば強制的ににチームを組まされることがある。

要するに寄せ集めのチームということになる.........それが俺たちだ。


「もともと、寄せ集めのチームだもんな...よく今まで戦ってこれたよな」

四人で参加した、初めての任務ミッションを思い出す。

寄せ集めのチームでの初めての実戦....地獄からの生還。


「本当に....よく生き残ったよな」

なんだかんだ言って、みんなうまくやっている。

(最初は、こんなメンバーで大丈夫か?と思ったものだが.....な)

今となっては、シズカとアスカとマヤ....この三人とチームを組めて、本当に良かったと思っている。


「となると最後は....俺なんだよな....」

自分で言うのもアレだが....俺は基本的に何をやるにしても自信がない。

今までは運良く、誰も犠牲にしない戦い方ができているだけかもしれない。

「それでも、俺が指揮官リーダー....か」

...ハァ。

深いため息をつく。

(考えても仕方ないか....寝よう)

今日もまた、考えても答えにたどり着けない、問自答に疲れた俺は眠りについた。



【学園戦艦:第一訓練場】


主に対人戦闘を意識して作られた訓練場の一つであり、半径500mのドーム状の中心部にはなぜか...古代ローマの”円形闘技場コロッセウム”を意識した建物があることで有名な場所である。


なお、学園戦艦は政府所有の“戦艦”扱いであるため、警護のために夜は警備員が巡回している。


「....なぁ聞いてくれよ?」

自動小銃で武装している、警備員の一人が話し始めた。

「この第一訓練場ってさ出るんだと....幽霊がさ」

「...どうでもいいな、幽霊なんか怖くないだろ?あいつら(dead)に比べたらさ」

「それもそうだが....」

つまらなそうに周りを見回している。


「でもよ...見てみたくないか?なんでも幽霊の正体は、昔に起こった事故が原因で死んだ学生らしいぞ?....それも、かなりの美人の」

「どんなに美人でも学生だろ?なら恋愛対象じゃなくて、守るべき子供って感じだな」

「それもそうだな!」

ハハハッ!。

二人して笑い合う。


「.......」

月明かりを背に、そんな二人を見ている人影が一つ。

「っ!」

「誰だっ!」

カチャッ!

人影に気づき、慌てて銃を構える。


「......いない?」

「そんなバカなっ!.....今さっきそこに....っ!」

「.....」

いつの間に移動したのだろうか、二人を見下ろすように視線を送っていた人影は、今は二人の後ろにいた。


「くっ....」

その視線の異様さにも驚いた二人だったが、それ以上に二人を驚かせたのは.、至近距離まで接近を許していたにも関わらず、自分たちがそれに気がつなかった事実であった。


「........」

「なんだ?...コイツは」

改めてよく見ると、そこにいたのは.....一人の少女だった。

「学生か?こんな時間に何をしている?それになんだ?その制服は....」

「.......」

無言のまま、二人を交互に見つめている少女。

「おいっ!聞いているのか?質問に答え.....」

もう一人の警備員に肩を掴まれる。

「なんだよ?」

「...さっきのお前の話しに出てくるっていう幽霊....その幽霊ってどんな格好しているんだ?」

「いまさらか?銀髪で長い髪の少女だ....」

そこまで言って、相棒の言おうとしていることに気がつく。


「....3年以上前の学生だから、ちょうどこんな制服だな」

「そうか.....喜べよ美人ってのは本当だったな」

「.....」

ただこちらを見つめている少女。

その手には......一本のナイフが握られていた


「どうするよ彼女?....ナイフ握ってるけど?」

「相手が生徒だがらな...手荒なことは出来ないな」

二人とも元軍人であり、対人戦でもかなりの実力者だ。

だが相手が学生で、まだ子供という事実が二人の心に僅かな油断を生んでいた。


「......」

少女は微笑んだ....まるで、新しいおもちゃを買ってもらった時の、子供のような笑顔で。

「?」

ドスッ!

「....っ!」

警備員の一人が気づいた時には既に、少女の握っていたナイフが深々と、もう一人の警備員の胸に突き刺さっていた。


「なっ!ビリー!....こいつ」

相棒の名を呼び、慌てて銃を構える。

目標は目の前.....引きトリガーを引けば、確実に殺せる距離にいる。

「......くっ」

だが撃てなかった....目の前にいる敵は、幼い子供であり、軍人として、一人の人間として撃つことができなかった。


「....フフフ」

少女が笑う....妖艶で残酷な笑みを浮かべて。

「......っ」

子供の容姿にはお、およそ不釣合いな笑みに体が強ばる。

「....フフ」

スッ...。

少女がゆっくりと背中に隠し持っていた銃(M16)を構える。

....その銃口は真っ直ぐに警備員の頭部を狙っていた。


「....くそ、一体なんだよ?お前は」

警備員がつぶやく。

「........」

それを聞いた少女が警備員に近づいく。

「?」

そして耳元で何かを囁く。

「っ.......まさか!そんな...」

警備員の顔が驚きの色に染まる。

「...フフ」

その顔を見て満足したのか、少女が静かに言い放った。

「....さようなら」

ダダダンッ! 訓練場に銃声が響き渡った。



「....こんなところに居たのか?」

一人の少女により行われた殺人現場に、白衣を着た女性が近づいてくる。

「.....」

銀髪の少女は血だまりの中にいた。

「全く、困ったものだな」

二人の死体を見ながら女性がつぶやく。

「まぁ、お前を見たのもは死んだようだし.....結果オーライか」

血で汚れた少女の顔を、ハンカチで拭きながら女性が言う。

「あまり外には出るなよ?....“ナナ”」

「....ごめんなさい、ママ」

銀髪の少女“ナナ”が謝る。

「わかればいい....さぁ家へ帰ろう」

「うん!」

二人は帰っていった。


.......その場に二つの死体を残して。

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