七話、魔装
〔ダークローズのアジト〕
アジトの一室にて先程まで響いていた水音が鳴り止んだ。
「あはっ、あなたのおかげでまた強くなれたわ」
裸のナタリアはアレンからも技量を奪い取ったのである。
「ナタリア…娘達だぞ、お前が殺そうとしているのは…」
「ええ分かっているわ?とてもとても愛おしいからアーリア、あの子は我々の元に来るのならばダークローズ入りをする事の許可を頂いたわ」
ナタリアはアーリアを自分達の側に引き込む許可をエイラから貰っていた。
その時のエイラは何か考えついた顔を見せていた。
「ただ、あまりにも言う事を聞かないのならアーリア、あの子も殺すわ」
「やめろ…俺達の娘なんだぞ…」
「あはっ、言う事を聞かないのが悪いのよ、そんな事よりも続きをしましょう?私にもっとあなたの力を寄越しなさい」
夫の胸に頬を当てて休憩していたナタリアは膝立ちになってから夫とキスをし行為を再開した。
〔サキュメアーレ王城〕
ナタリアが強くなって行っている頃。
サキュメアーレに一通の手紙が届いた。
「エルフの長があなたに会いたいみたいだわ」
ルーレリアはアーリアに手紙を渡しつつ言った。
「もちろん会おう」
今はとにかく戦力が欲しいところ、そのためエルフ達が会ってくれるなら会いに行くのだ。
「分かったわ、返信はいらないと書いてあったし明日転移で送るからエルフ達の元に向かいなさい」
「うん」
アーリアがルーレリアとの会話を終えた所で転移音がした。
振り返るとナタリアが立っている。
「五日振りね?アーリア」
「…」
アーリアはサキュバスだそのため匂いでナタリアが何をして来たのか分かってしまう。
「お母様…何人の魂を食べたの…?」
「んーあなたに技量不足って言われたじゃない?それを補うためにざっと四、五十人は食べたかしら」
ナタリアは夫以外とも交わりその魂を食べる事で技量を得ている。
身体能力は何も変わっていないがかなり厄介な敵とこれで化してしまった。
「さて?あなたは素直には私と一緒に来る気はないみたいだし、倒させて貰うわね?更に完全になった私の力で!」
ナタリアは力を振るうのが楽しくて仕方がないと言った様子で斬りかかって来た。
アーリアは彼女の剣を受け止めるがナタリアは押し切ってからの蹴りをアーリアの腹に命中させる。
「くぅ!」
(全然違う…)
前戦った時のナタリアの動きとはもはや別人だ。
人間達を喰らいまくる事でナタリアは高い完成度を誇る魔人となってしまったのである。
「あはっ!ほらぁ!どんどん行くわよ!?」
ナタリアの連続攻撃アーリアはなんとか対応するが正直言ってかなりやりにくい。
何故なら普通ならばある程度は統一された動きとなり徐々に動きを合わせられるようになるのだが。
ナタリアは吸収した者の技術をランダムに使用するため動きが読めず逐一様々な対応をしなくてはならない。
「うう!」
その結果読みが間に合わなくなるとアーリアはナタリアに蹴り飛ばされて地面を転がった。
「はぁはぁ…」
「うふふ、どう?これが私が手に入れた力よ、身体能力の差もある、あなたが私に勝てる事なんてないの、だからね?良い子だから私と一緒に来なさい」
ナタリアは地面に倒れたアーリアの髪を撫でつつ一緒に来るように言う。
「行かない!」
アーリアは拒否すると剣を振り上げた。
同時にルミナの雷撃がナタリアに直撃しメルティの光の弾丸も直撃した。
「ごめん!遅れた!」
「今から参戦します!」
二人はメルティが日常を過ごすために必要な物を街に買いに行っていたそのため参戦が遅れたのである。
城から邪悪な魔力が放たれたのを感じた二人は買い物を取りやめて急いで戻って来たのである。
「また邪魔をして…」
ナタリアはダメージを受けた事に対して舌打ちをした。
「やぁぁ!!」
アーリアは母を倒して元に戻すため向かって行く。
ルミナも続き二人で当たる。
「うふふ、ようやく歯応えが出て来たわね?」
しかしナタリアは二対一でも対応するたった五日でここまで強くなってしまうのが他人から技量を奪い取れる上級魔人の恐ろしい所だ。
「私もいるぞ!」
そこにサーリアも加わった。
三対一これでようやく同等の戦いになるがそれでもナタリアの優位である。
彼女は邪悪に笑うと波動を放ち三人を吹き飛ばした。
「あはっ、一人ずつ撃破すれば良いのよ!」
そして闇の塊を三方向に放ち三人に命中させる。
「ううう!」
アーリア達は大ダメージを負う。
「まだ…」
それでもアーリアは立ち上がる。
母を助けたいしダークローズに連れて行かれるわけにはいかないからだ。
『アーリアよ、お主用の魔装が完成したぞ』
(本当!?)
『うむ、これを身に纏い、ナタリアをとりあえずは撤退させろ』
「分かった!」
アーリアはゼーリアに感謝しつつ覚醒した魔王一族の者なら使える秘術魔装を使用する。
「魔装、展開!」
アーリアが魔装を展開した。
その姿は黒いロンググローブに上半身は胸を隠すブラ下半身はビキニパンツに腰マント脚はロングブーツに覆われている。
色は黒がメインで所々に魔王一族である事を示す金色の装飾が入っている。
(なにこれー!?)
アーリアは谷間ドーン!ビキニの面積は小さい!腕や脚もピッタリフィット!な服を見て頬を真っ赤に染めた。
『何って我が一族の女が代々纏って来た伝統的な服だぞ、それに我等サキュバスは肌を晒す面積が広い方が力を引き出せるのだ』
(ううー!)
アーリアは全力で恥ずかしそうだがこれで強くなれるのなら!と思い突然変身して驚いた様子の母に向かって行く。
〔サキュメアーレ王城〕
アーリアはナタリアに接近して剣を振るう。
「くっ!?」
ナタリアは明らかに向上しているアーリアの攻撃を受け止めて足が浮いた。
アーリアは足が浮いた所を狙って蹴りを放つ。
「くぅ!」
ナタリアはなんとか地面に着地して止まる。
そして顔を上げるとすぐ側までアーリアが迫っていたため攻撃を避けた。
「はぁ!」
ナタリアは目の前に剣を振るった格好でいるアーリアに向けて剣を振るうがアーリアに止められた。
「ふふっとても似合っているわ、アーリア」
ナタリアはサキュバスらしい格好となったアーリアに似合っていると言った。
魔瘴石に精神を完全に汚染され邪神の使徒とも言える存在になっているナタリアであるがそれでもアーリアの母親である事は変わらず母としての言葉も言うのである。
「…あ、ありがと…」
アーリアは敵となった母に自分の格好を褒められるのはなんだが変な気分だなと思う。
「こんなに可愛いあなただからこそ、我々の側を来て欲しいのよ?私はね?あなたを殺したくないの」
ナタリアの力は上昇し続けている。
その理由は魔瘴石との相性がとても良いからだ。
だからこそこのまま成長を続ければアーリアを楽に殺せるレベルまで到達するとナタリア本人は考えている。
そうならないように早く自分の手元にアーリアを手に入れておこうとナタリアは思っているのである。
「何回も言うけど断る、そして絶対に私がお母様を魔瘴石から解放する!」
「フン、本当に今のあなたは悪い子だわ!」
ナタリアは気絶させてでも連れて行くと決めると蹴りを放つが魔装によって力が増しているアーリアはその攻撃を腕で受け止め連続でナタリアに蹴りを叩き込んだ。
「ちぃ!」
ナタリアは大きなダメージを受けて舌打ちをする。
「やぁぁ!」
アーリアは続けてダークボムを放ちナタリアに直撃させた。
「うぁぁ!!」
ナタリアは更にダメージを受け立っていられずに片膝を着いた。
連続してダメージを受けた結果強力な身体を持つナタリアでも限界が訪れたのである。
「私の勝ちだね、お母様」
アーリアはナタリアの顔に剣を突きつけた。
「うふふ、それはどうかしら?」
その瞬間アーリアの真隣で少女の声がしアーリアは蹴り飛ばされて下がらされる。
エイラが現れアーリアを蹴り飛ばしたのである。
「ふふっ随分とやられたわねナタリア、あなたの娘、やはり強いわ」
「はい…あの魔装を身に纏ってからは完全に上回られました…」
ナタリアは敗北に対して悔しそうな顔を見せつつ俯く。
「あなたはまだまだ成長途中、今回は負けてもいつか勝てば良いわ、さっ今回は引きなさい」
「はっ」
ナタリアはエイラの命令に頷くと立ち上がりアーリアの方を見る。
「うふふ、また遊びましょうね?アーリア」
ナタリアは転移してこの場から消えた。
アーリアはせっかく勝ったのにと悔しそうな顔で邪魔をしたエイラを睨んだ。
するとダークローズの幹部としてナタリア以上の力を手にしているエイラはアーリアが反応出来ないほどのスピードで迫って来た。
「ふふっ、あなたは確かに強い、でも私のような幹部級の上級魔人となればあなたなんていつでも殺せるのよ」
エイラはそう言うとアーリアの首を撫で胸を揉む。
「私にこうして好きにされてる時点でナタリアを倒しても私に邪魔され続けるだけ、うふふ、無駄な努力ご苦労様」
「くっ!」
アーリアはエイラに向けて剣を振るうがエイラは指で簡単にアーリアの剣を止めてしまった。
「無駄よ」
エイラは邪悪な笑みを見せるとアーリアを地面に叩き付けた。
「私ね?あなたのことが気に入ったのよ?組織としてはあなたは抹殺予定だったのだけれど、我々の側の戦力として取り込むべきと周りを説得したわ」
「お母様にも言ったけど私があなた達の側に付く事なんてない!」
アーリアはエイラを横目で睨みつつ言う。
「うふふ、その生意気な口を必ず従順にしてあげる」
「アーリアに触るな!」
エイラに向けてサーリアが剣を振るう。
エイラは邪悪に微笑みつつ避け転移して消えて行った。
「ふぅ…強かったわね…」
ルミナはナタリアとエイラの強さから考えてもよく追い返せたものだと思う。
「はい…今後も彼女達が襲って来る事を考えるともっともっと強くならなければ…」
ダークローズには間違いなく他の幹部もいる。
その者達に殺されないようにするためにももっともっと強くなる必要があるのだ。
現状の力では全く足りない。
「そうだね、頑張って強くなって行こう!」
「ええ!」
もっと強くなるそう頷き合ったアーリア達は戦闘によって壊れた室内の修理を魔法でやり始めるのであった。




