三話、魔瘴石
〔サキュメアーレ〕
兄を追い払いクリフォードに勝利した翌日アーリア目を覚ました。
「ふぁ…」
あくびをしつつ伸びをすると大きく実った胸が揺れた。
『アーリアよ、そう言えば昨日の戦闘でレベルが上がっているのではないか?』
「あっ、そうだね、見てなかったよ」
昨日は即寝る!となったアーリアは戦闘後のステータスの確認なしで眠っていた。
そのためレベルが上がったかどうか分からないのである。
「おっ上がってる」
確認してみるとレベルは46中々に上がっていた。
上級騎士であるクリフォードを倒した経験値は大きかったようだ。
「目標は100!まだまだ先は長いね」
『ククク、目標が遠い方が楽しいであろう?』
「ふふっそうだね」
アーリアはゼーリアの言葉に頷くと着替えを済ませ部屋から出た。
部屋から出たアーリアはルミナが歩いて来ていたので合流する。
「おはよ、まずは叔母様の所に行くよ」
「了解」
この三年間のアーリアの日課はルーレリアの元に行って何かダークローズについての情報が入っていないか聞く事とルーレリアが用意してくれた講師によるレッスンを受ける事最後は冒険者としての活動である。
「おはよう、アーリア」
叔母の元に来ると和やかに挨拶してくれた。
「グランデウスき動きは何かあった?」
アーリアはグランデウスが何か動く可能性を想定して質問した。
「特に何もないわ、あなたのお兄さんは動きが鈍いようね」
恐らくは更に他国に助力を求めているのだろう。
しかし周辺諸国はルーレリアの根回しによってグランデウスに手を貸さないと約束している。
そのためどの国に頼みに行ったとしても手を貸してくれる国はない。
「仕掛ける時少しでも楽に勝てるように弱って行ってもらわないとね」
「そうね」
二人はそう言うと怪しく笑い合う。
〔グランデウス王都〕
アッシュが怒り狂いながら王都に帰って来た。
「何故だ!この俺が頼んでいるのにどこの国も手を貸さん!」
機嫌が悪いアッシュは机の上に置いてあったグラスを壁に向けて放り投げた。
「あらあら?随分とお怒りね?」
怒り狂っているとエイラが現れた。
「お前か、何用だ?」
「うふふ、こちらとしてもね?魔王に生きて貰っていると困るの、だから殺すための助力をさせていただくわ?」
そう言ってエイラはアッシュに紫色のクリスタルを渡す。
「これは魔瘴石、人に非常に邪悪で強力な力を与える石よ、これを使ってアーリアを殺しなさい」
「ほほう…これは良い」
アッシュは魔瘴石を見て邪悪に笑う。
「誰に使うかはあなた次第、上手くやりなさい」
エイラは邪悪に笑うと転移して去った。
「サーリアを呼べ」
「はっ」
側近に三姉妹の一番上の姉サーリアを呼ぶように言うアッシュ。
側近はすぐ様呼びに行った。
「ククク、サーリアよ、お前はアーリアを追い出した件について抗議をして来た痴れ者だ、そんな痴れ者こそアーリアを殺すための刺客に相応しい」
アッシュが邪悪な笑みを見せるのと同時にサーリアが部屋に入って来た。
「なんだ?兄上、要件とは?」
呼び出されたサーリアがやって来た。
その姿は姉妹だけはありアーリアに良く似ている。
「なぁに?お前にアーリアを殺して貰おうと思ってな?」
「遂に狂ったか?私が妹を殺すわけがないだろう!」
アーリアを殺せと言われたサーリアは怒る。
「残念だがお前の意思など関係ない」
そう言ってアッシュはサーリアの胸に魔瘴石を当てた。
「これは…うぁぁ!?」
魔瘴石はサーリアの胸に取り込まれると彼女の身体を変異させる。
頭にはアーリアの物のような可愛らしい物ではなく邪悪さを感じさせるツノが生え背中には漆黒の天使の翼が生えた尻からは竜を思わせる尻尾が伸びる。
「はぁはぁ…ふふっ」
地面に手を着いて荒い息を吐いていたサーリアは邪悪な笑みを見せた。
「さて、お前の使命を言ってみせよ、サーリアよ」
「アーリアを殺す事だ」
「ククク、任せたぞ?」
「あぁ、それと先程からそこで見ている者」
サーリアは一瞬で移動した次の瞬間にはネーリアを捕える。
「くっお姉様!正気に戻ってくださいまし!」
ネーリアは兄の動きを探っていたのだ。
「黙れ、私は正気だ、さてお前もアーリアを殺すための刺客となるが良い」
「いやっ!!」
ネーリアは拒否しようとするがサーリアは容赦なく唇を奪う。
その行為でサーリアはネーリアに自身に植え付けられた邪悪な力を送り込む。
「うぁぁ!?」
ネーリアも悲鳴を上げその体はサーリアと同じ物に変異してしまった。
「はぁはぁ…あはっ…」
地面に手を着いていたネーリアも立ち上がると邪悪な笑みを見せる。
「さぁ行くぞ、ネーリアよ」
「はぁい、お姉様」
魔瘴石により邪悪な者に変えられてしまった二人はアーリアを殺すための資格としてサキュメアーレに向かって行った。
「いくらあいつが強くてもあの二人には勝てまい、ククク、俺の邪魔をした罪はお前の命で償え!」
アッシュはアーリアが殺される瞬間を想像して邪悪な高笑いをした。
〔サキュメアーレ王都〕
アーリアがルーレリアと話していると転移音がした。
二人が音をした方向を見るとそこには二人の女が現れている。
「お姉様…?」
アーリアは二人の姉が現れている事に気づくが姿が違う事に気付いた。
「久し振りだな?アーリア」
「私は数日振りですわね?」
二人はアーリアを邪悪な笑みを見せながら見据える。
「その姿は一体…」
「お前を殺すために与えられた姿だ」
「あはっすぐにあの世に送って差し上げますわ!」
二人は邪悪な力を迸らせると地面を蹴り襲いかかって来る。
「くっ!ルミちゃん!」
「ええ!リア!」
二人は向かって来る二人を見て頷き合うと戦闘準備をする。
しかしそんな二人を守るかのように光の盾が現れ操られた姉二人の攻撃を防いだ。
「なんと邪悪な力…許されざる力ですね」
二人の攻撃を防いだのは銀色の髪を持つ少女。
凛とした表情を見せる少女はアーリアとルミナと並び立った。
「あなたは…?」
「聖教会からあなたの元に派遣された聖女メルティと申します、以後お見知り置きを」
聖女メルティはアーリアとルミナに一礼すると攻撃を防がれこちらを睨み付ける姉二人を見据える。
「今は私の事より敵です、来ます!」
「…ええ!」
アーリアは聖教会から来たメルティを加えて魔瘴石に操られる姉二人との戦闘を開始した。
〔サキュメアーレ〕
洗脳され悪魔の姿となったアーリアの姉二人が迫って来る。
「くっ!お姉様!やめて!」
アーリアは前に出てやめて欲しいと言うがネーリアは普段のアーリアを本気で愛してくれている様子とは違い邪悪な笑みを見せると剣を振るって来る。
「いけませんよ、アーリア様、見た通りあの二人は何かに操られている、説得など通じない状態です」
メルティがネーリアの剣を光の盾で受け止めた。
「忌々しい聖女ですわね!私がアーリアを殺すのを邪魔しないでくださいまし!」
「邪魔します、このお方アーリア様は世界にとって必要な人ですから!」
メルティは光の衝撃波でネーリアを弾き返した。
「リア、今の様子を見ても分かるでしょ?元に戻すためにも倒さなきゃいけないわ」
ルミナとしてもネーリアは何回か会いに来てくれて仲良くなった大切な人物だ。
救いたいと思う気持ちはアーリアと変わらないためそのためにもアーリアに倒さないといけないと言う。
「…分かった」
アーリアは説得は諦め意識を奪う事を選択した。
「行くよ!お姉様達!」
アーリアが飛び出す。
サーリアがアーリアの剣を受け止めるが三年間で成長しているアーリアは強く悪魔の姿となったサーリアでも押し切られる。
「フン、これが魔王の力と言うわけか」
サーリアは押し切られつつも尻尾を突き出す。
それをルミナが弾いた。
「邪魔でしてよ!吸血鬼!」
ルミナに向けてネーリアが水の弾丸を放つ。
「させません!」
メルティがネーリアの弾丸を防いだ。
「やぁ!!」
防がれたため次の攻撃を準備しようとしたネーリア。
そんな彼女の懐にアーリアは潜り込み左拳を全力で突き上げる。
「ごほぉ!?」
その一撃は強烈でネーリアは白目を剥いて気絶した。
「ネーリアをやったなアーリア!!大人しく殺されておけば良いものを!」
サーリアはネーリアが倒された事に怒りながら迫る。
ネーリアは近接戦がそもそも苦手であるためこの近接戦重視な悪魔としての姿と相性が悪いがサーリアは近接戦も強い。
アーリアに迫ったサーリアはゼーリアの仕込みによってかなりのレベルの剣術を扱えるようになっているアーリアと同等に斬り結び始めた。
「せぇやぁ!」
サーリアはどこか楽しげな様子で妹と剣を合わせ続ける。
「はぁぁ!」
しかし一瞬の感情の揺らめきが剣を鈍らせた。
自分と同等に斬り結ぶアーリアを見て体を動かせないが意識は起きているサーリアの良く成長したと言う優しい想いが動きを鈍らせたのである。
アーリアはその鈍りを見逃さずネーリアにしたのと同じように腹に拳を喰い込ませた。
「まだぁ!!」
しかしサーリアはこれでも倒れない。
ならばとルミナが雷撃を天から落とし続けて光の光弾をメルティが命中させて今度こそ気絶させる。
「はぁはぁ…強かったね…」
「はい、さてと二人の体を調べますね」
メルティは倒れた二人に近付くと二人の身体を調べる。
「何か悪しき物が埋め込まれていますね…これを浄化して消し去れば元に戻るでしょう」
メルティは二人の身体に浄化魔法を施す。
「ううう!!!」
「あぁぁ!!!」
身体に寄生している魔瘴石が抵抗し二人は苦しみ始める。
アーリアは二人の手を握り浄化が成功するのを祈った。
暫くすると二人から邪悪な魔力が噴き出し消えると二人の身体は元に戻った。
「…アーリア」
「私達はなんて事を…」
元に戻り身を起こした二人の姉は妹に対して攻撃をしてしまった事が辛く二人は涙を流した。
二人はこのようにアーリアに攻撃した事を泣いてくれる程にアーリアを大切にしてくれているのである。
「ふふっ良いよ、二人とも元に戻ったんだもん、私はそれで十分」
アーリアはそう言うと二人の手を握った。
姉二人はその言葉を聞いて救われた気がして微笑んだ。
暫くして落ち着いたらアーリア達は椅子に座ってメルティの話を聞く事になった。
姉二人は妹から離れたくない!と言いた気な様子でアーリアの左右を固めて座っている。
「さて、私の正体については先程も言いましたが、聖女です」
「聖女がどうして私のところに?」
アーリアは何故自分の所にメルティがやって来たのか聞く。
「大聖女様からの指令がありました、あなたが成長する過程で命を失わないように側で戦う者が必要だと、私はそのためにあなたの元に遣わされたのです」
「つまり私の側にずっといてくれるって事だね?」
「そうなります」
アーリアは心強く思う聖女が常に一緒にいてくれる事に。
「でも聖女がどうして魔王となるアーリアを守りに来るのですの?」
「んー…グランデウスでは本当に過去の事が現代に伝えられていないのですね…ゼーリア様の代の魔王軍と聖教会は世界を守るための盟友でした」
「…忘れられた歴史を伝えて行かなければならんな、全てが終わった後に」
サーリアの言葉に二人の妹は頷いた。
明らかにこのままではいけないからだ。
「それでは今日は疲れたでしょう?話の続きは明日にして皆さんでお風呂に入りましょう」
「良いね!お姉様達とお風呂入りたかったし!」
「決まりだな」
アーリア達は今日の戦闘の疲れを癒すため浴室に向かって行った。




