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奴隷だった私はモンスター狩りに出る

翌日、早速イーラたちは国境周辺の捜索に向かった。

捜索隊はそれぞれ班に分けられ、地域ごとに捜索することになっている。

予定通りイーラはカイ、ルカスそれから数人の兵と一緒に出発した。イーラは雨が降った時や万が一戦いになった時のために分厚めのローブを着て、肩には荷物を入れたリュックを背負っている。流石に、森の中はほうきでは飛びにくいので馬で移動することになった。

カイとイーラはそれぞれ馬に乗って森の中をゆっくり進んで行く。

森は大きなだけあって、森の中はびっしりと高い木が生い茂っていた。


「うわー……凄い……」


今はまだ明るい時間なのに、あまりにも大きく高い木が多いので、森の中は薄暗くなっている。それでも木漏れ日から落ちる光は綺麗で、立ち並ぶ植物は見たことがないものや本でしか見たことのないものばかりだ。イーラは興味深そうにそれらを眺める。時間があればもっとゆっくり見ていたい。

カイも同じように周りを見渡している。


「イーラ、カイあんまりキョロキョロするなよ」


ルカスが初めの場所で浮き足立っている二人をたしなめる。

二人は慌てて背筋を直して真面目な顔に戻った。

そんな事をしながらも、モンスターの探索は順調に進んだ。ピアーズが言った通り危険な事はほとんどなかった。

とはいえ、全くモンスターに出会わなかった訳ではない。何匹か小さめのモンスターが出てきて、退治することになった。

しかも、いい機会だからとイーラとカイに任された。


「よし、行くぞイーラ」


カイは張り切ってそう言うと、馬から降りる。


「うん」


そう言ってイーラも馬を降りる。

モンスターは唸りながらこちらを睨んだ。


「援護を頼む!」


カイがそう言って、先手を取った。


「わかった!」


カイがつっこむとモンスターはそれを躱した。イーラは呪文を唱え、モンスターを狙いロープの両端に重りの付いた武器を投げる。それは上手くモンスターの足に絡まった。しかも、その武器にかけられた魔法で、モンスターに攻撃を加える。

唸り声を上げて、モンスターが完全に動けなくなったところで、カイが止めをさす。


「やった!」


二人はそう言って手を合わせて喜ぶ。

初めての実戦は、緊張したものの上手くいった。

その後も何度か戦っていくと次第にコツが分かってくる。そうして、そのうち余裕で始末できるようになった。

そんな事をしていると、時間も昼近くなる。

部隊は適当な場所で交代で食事をとった。

見張りをしつつ、食事をしつつだったからゆっくり食べられなかったが、ひと時のピクニック気分を味わえて、イーラは楽しかった。

少し休憩してまた捜索に戻る。


「なかなか、見つからないね」


イーラがそう言った。


「流石に初日では見つからないんじゃないか?」


カイが答える。

今回の捜索の目的はモンスターの調査だが、もう一つ重要なものがあった。

それは、特に危険だと言われている大きなモンスターを見つけることだ。いままで出会ってきたモンスターも危険ではあったが、まだ小さい。

そのモンスターは、これまで出会ったモンスターとは比べ物にならない大きなものらしい。

今回の遠征もそのモンスターが何度か目撃されていて問題になり。要塞の兵だけでは対処出来ないということで、今回、ピアーズが直々に来ることになったのだ。

そして、イーラ達の役目はそのモンスターの巣か痕跡を探すことだ。

それを見つけたら、ピアーズ達に知らせ、その情報を元にピアーズ達が退治するというのが一応の計画になっている。


「そうだな、モンスターがいたという情報自体も間違っている可能性もあるからな」


ルカスが苦笑しながらカイの言葉に答えた。


「危険なモンスターがいないのはいいことだけど、それはそれでつまんないな」

「だからって、あんまり油断するなよ。一瞬の油断で命を落すこともあるんだからな」

「「はーい」」


そんな会話して、しばらく森を探索していた。


「目撃情報はここら辺のはずなんだがな……」


ルカスが地図を見ながらそう言った。今日の目的である凶暴なモンスターはここら辺にいるはずなのだ。しかし、辺りは静かでそんな気配がない。


「小さなモンスターを見なくなったし、爪で引っ掻いた後があるので、ここら辺が縄張りなのは確かみたいですけどね」


イーラも不思議そうに言った。

丁度、眠っているのかもしれないがそれにしても気配がなさすぎる。


「どこかに潜んでいるのかもしれない。引き続き注意を怠るな」


困惑しつつもルカスが言った。他の隊員も頷き、さらに進む。


「ん?これは?馬が通った跡?」


しばらくすると、ぬかるんだ地面に馬の足跡が付いているのにイーラが気がついた。

馬を降りて詳しく調べる。


「人が通ったのか?しかし、ここら辺は我々しかいないはず」


ルカスが眉を潜めて言う。他の部隊もいるが、手分けして色々な場所に回っているので仲間が通った跡とは考えられない。

しかし、明らかに人が通った跡だ。


「しかも、足跡は新しいみたいです」


イーラが跡を調べながら言った。


「新しいのか……一体何が?」

「馬は四頭か五頭ってところですね……」


ルカスはその言葉を受け考えつつ言った。


「もしかしたら、狩人が迷い込んだのかもしれない。今は立ち入り禁止にしてるんだがな」


ルカスは眉をひそめ考えこむ。

そう、ここは日頃は狩人が入ってこれるようになっている。目撃情報も彼らから得ている。

しかし、狩人達はそのモンスターがいかに危険かもわかっているはずだ。

だから、イーラ達以外がいるとは考えづらい。


「……とりあえず、引き続きモンスターに気を付けつつこの足跡を辿るか」


そうして、イーラ達はさらに先に進んだ。

そうこうしていると空に雲がかかってきた、ただでさえ暗かった森がさらに暗くなった。

しかし、灯りを付けることは出来ない。危険なモンスターがいるのに、明かりをつけるのはさらに危険が増すのだ。


「あまり、長居するのは危ないな……。もう少ししたら戻ろう」


ルカスは空を見上げて言った。探索は今日が初日だ、まだ時間はある。

その言葉をうけ、部隊は注意しながら進む。


「こ、これは……一体何が?」


しばらくすると残っていた馬の足跡が、ある場所で止まった。

そこは何があったのか分からないが凄い力で木々が破壊されていた。

大きな木が倒れて、地面がえぐれている。辺り一面の木が倒されちょっとした広場のようになっていた。

ルカスの表情が硬く強張った。他の部隊員も怯えたような表情になった。


「この残骸……探してたモンスターじゃ……」


よく見ると、その近くに大きなモンスターだったものらしき死骸が落ちていたのだ。

周りの被害以上に強い力で倒されたようで、周りにはモンスターの肉片が散らばっている。

全員の顔色が悪くなった。

探していたモンスターは魔族の兵士二十人か三十人でかかってやっと倒せるくらいの強さがあった。

馬の足跡が残っていたが、あの馬に乗っていた人物がやったのだろうか。

しかし、そうなると五〜六人で倒したということになる。

そうであれば、相当な力の持ち主と言うことだ。


「一旦退避する。全員戦闘態勢に入って慎重に進め」


ルカスがそう言って来た道を引き返すことになった。


「あ、雨が降ってきた……」


しばらくすると、とうとう雨が降ってきた。雲はどんどん分厚くなっているようで森の中は夜と変わりなく真っ暗になった。

イーラはローブのフードをかぶり、濡れないように胸に掻き寄せる。


「イーラ、大丈夫か?」

「え?う、うん。大丈夫……」


そう言ったもののイーラの表情は固い。イーラは今も変わらず雷が苦手なのだ。

酷い雷の時、ピアーズの前で泣いてしまってから少しはましにはなったものの。その後もイーラは雷の時は怖いままで、雷が鳴る度にピアーズにしがみついて泣いていた。

流石に今は、泣いたりはしないが、それでも怖いものは怖い。

しかも今は外にいるのだ。

今は仕事中だ、イーラはなんとか深呼吸して恐怖を押し込める。こんなことで意識を取られている場合ではない、他にももっと危険なことがある。


「無理するなよ。すぐに要塞につくから頑張れ」


カイが励ますように言って、イーラは少し無理をして普通の顔をして「大丈夫」と言って頷いた。

しかし、その時鋭い閃光がしてどこかに雷が落ちたのか大きな、音が辺りに響く。


「きゃー!!!!」


イーラは驚いて思わず悲鳴を上げる。それと同時に乗っていた馬も驚いたのか前足を上げて暴れた。


「イーラ!危ない!」


カイはそう言って手を伸ばしたがイーラはそのまま、馬から落ちた。しかも、運の悪いことにイーラ達は沼にさしかかるところだった。

当然、イーラは勢いよく沼に落ちてしまう。


「わ!!」


ローブは分厚く雨にも強いのだが流石に全身がびしょ濡れになり、さらに泥だらけになってしまった。

しかし、沼は浅く水がクッションになったお陰で、怪我はしなかった。


「イーラ、大丈夫か?」


カイは慌てて、馬から降りて手を伸ばした。イーラはなんとか体を起こす。

水が服にしみ込んできた、今が夏でよかった。しかし、この濡れた状態でしばらく過ごさないといけなくなった。

なんとか立ち上がって、カイに手を伸ばす。


「!?」


その時、全身に鳥肌がたった。何か巨大は魔力がこちらに飛んで来るのを感じたのだ。


「カイ!危ない!」


イーラは急いでカイを突き飛ばす。その途端、大きな音で爆発が起こり、カイがいた場所に大きな穴が空いた。

カイは間一髪で避けられたようだが、勢いで泥と土が飛び散った。

あまりに強い力にイーラは血の気が引く。もし当たっていたら命が無かったかもしれない。


「イーラ!」

「カイ!危険よすぐ逃げ……きゃ!」


イーラはそう言った。しかし、間髪入れずにイーラとカイの間に誰かが入ってきて言った。


「危ない!」

「え?だ、誰?」


何故か間に入ってきた人物はイーラを庇うような動きをした。


「魔族め、彼女に近づくな!」

「え?」

「イーラ!」


カイがイーラの方に向かおうとする。


「カイ!ダメだ!やめろ!」


ルカスがなんとかイーラを助けようとするカイを止め、体を掴み突然現れた人物から離す。


「で、でも……」


カイは渋る、しかし、間に入った人物がさらに攻撃をするような態勢に入った。

それを見たイーラもダメだと言うように首を振る。

さらにルカス達に引っ張られて悔しそうにその場を離れた。

次の瞬間また間に入った人物が攻撃魔法を放つ、さっきより強力だった。


「カイ!」

「くそ!逃がしたか……」


カイはなんとか逃げられたようだ。ルカスの馬に乗せられて離れて行くのが見えた。


「君、大丈夫か?」


カイがなんとか無事だったことにほっとしたものの、謎の人物は振り返りイーラに向かってそう言った。

イーラは困惑する。

相手が何の事を言っているのか分からない。この人物が来るまで、特に大きな問題はなかった。

しかし、さっきの強烈な攻撃力を考えると余計な事はしない方がいいだろう。慎重に行動した方がよさそうだ。

イーラはおずおずと聞いた。


「……あ、あなた、誰?」

「僕は勇者、名前は暁斗あきとだよ。よろしく」


相手はそう言ってイーラに手を差し出した。

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