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悶々とチョコを見つめていた瑠璃花は背後から聞こえてきた声に慌てて焼却炉から遠ざかった。
数人の男子生徒がゴミ箱を持ちながら大声で話している。
また涼のように見られるのは嫌だと慌てたせいで瑠璃花はチョコを手に持ったまま、校門から遠ざかってしまった。
迂回するように校門に向かう瑠璃花の背に、声がかかった。
「一ノ瀬」
瑠璃花は声の主をゆっくりと振り返る。
そこには皐月が少し責めるような目をして立っていた。
「…実験室に来るように伝言したんだけどな…聞いてない?」
がしがしと頭をかいて皐月は瑠璃花に近づいてきた。
「こんなとこで何して……それ、チョコ?」
皐月が瑠璃花の手に持っているチョコを示す。瑠璃花はキッと皐月を睨み返した。
「…違う!」
「え?でも、それチョコじゃん…」
「チョコじゃない!」
我ながら馬鹿だなと、瑠璃花は頭の隅で考える。
どう見てもチョコだし、嘘にしてももう少しマシな例えがあるだろうとも思う。
なんだか嫌になってきて瑠璃花はチョコを放り投げたい気分になった。
「…皐月ちゃん、沢山チョコ貰ってるじゃん…」
瑠璃花の口から出てきたのは責めるようなそんな口調の言葉だった。
頭では、別に責める事なんてないし、皐月が誰からチョコを貰おうと関係ないと思っているのに。
「トリュフチョコだってあるじゃん…」
きっと手作りのトリュフがある。
瑠璃花みたいにわざわざ作ったチョコがある。
そう思うと瑠璃花は益々惨めな気分になった。
喜んでくれると思っていた。
手作りチョコをあげるのは瑠璃花だけで、それは皐月にとって特別だと思い込んでいた。
だから、わざわざ作ったのに。
実際には自分だけではなかった。
自分だけ特別じゃない、そう思うと瑠璃花は堪らなかった。
勘違いしてチョコを作って、みっともなくて恥ずかしい自分。
何よりも自分が特別ではないことにこんなにショックを受けるなんて、瑠璃花にとっても驚きだった。
「私のチョコなんていらないじゃん…!」
泣き出したい気分で言うと瑠璃花は思わず走り出していた。
子供か!と自分で心の中で突っ込みながら、瑠璃花は駆け出していく。
「えっ、おい、一ノ瀬!待て!」
皐月の驚いた声が聞こえる。
それを無視して瑠璃花は全力疾走して校門に向かった。
足が遅くて運動神経の悪い瑠璃花は、必死に走る。
その後ろを皐月が追いかけてくる。
成人男性の皐月と瑠璃花ではどう考えても直ぐに追い付かれる。
実際直ぐに追い付かれた瑠璃花の手を皐月は掴んだ。
立ち止まり、振りほどこうとした瑠璃花は、しかしそのまま走ることになった。
皐月は瑠璃花の手を掴んだまま、走り続けている。
「…え、ちょっ…」
ゼェゼェと荒い息をする瑠璃花はそのまま階段を駆け上らされ、化学実験室まで連れてこられていた。
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