Combat 4
上空から見えるのは、点滅する光線だけだ。
なぜなら木々が生い茂っている密林地帯故に、下の様子はハッキリと見えないからだ。
だが木々の下では米軍が攻撃してきている狂信的な思想を刷り込まれている輩を排除するために行動を開始していた。
その証拠に、たった今木々がなぎ倒されてその全貌が明らかになりつつある。
倒れた丸太を遮蔽物にして歩兵たちがライフル銃を使って射撃を行う。
戦っているのはダニエル・アーノルド二等軍曹率いる第6歩兵小隊第3分隊と、救援に駆けつけたM2ブラッドレー歩兵戦闘車1輌である。
これに対して攻撃を仕掛けてきたのは異教徒と異種族を迫害している白衣を着た狂信者たちだ。
名誉挽回のチャンスを与えられたソホヤ率いる百人の武装信者だ。
数でいえば9人と1輌対100人…。
もし相手が近代的な武器を有していたら、いかにアメリカ軍でも苦戦していただろう。
だが、悲しいことにソホヤ達は近代的な武器を有していない。
唯一の飛び道具である弓矢を持っている者は15名程度。
残りは剣や槍を持った近接戦闘に特化した武器を所持しているだけだ。
数でゴリ押ししようと思っていたらしく、ソホヤが先頭に立って突撃を敢行した。
「いくぞぉ!同胞を助けよう!!!」
「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」
掛け声と共に駆け足でナルゼとラディを救いに向かう。
そこにいたのはまだ息があったラディに対して尋問している見慣れない服を着た者達であった。
もしこの時に、ソホヤが彼らを包囲した後に音を立てずに忍び寄って攻撃していたら、歩兵に対して少なからぬ打撃を与えることが出来ただろう。
しかし、ここでソホヤは致命的な間違いを起こしてしまう。
それは咄嗟に反撃ができる正面角度から正々堂々と攻撃を仕掛けたことだろう。
大声で突撃してくる狂信者に反応したダニエル・アーノルド二等軍曹たちは真っ先にサブウェッポンとして持ってきたM92拳銃を向けて、尋問している女性と同じ格好をしている好戦的狂信者と判断して引き金を引いた。
「敵襲ーーーーッ!!!!」
その声に反応するように他の兵士たちも一斉に発砲を開始した。
一斉に銃口から火が噴いていく。
薬きょうが地面に落ちていき、鉛弾が次々と狂信者たちの身体にめり込んでいく。
―ガガガガガガガッ!!!!
「ぐわぁぁぁっ!!!」
「ギエェェェェッ!!!」
「隠れろ!!木の後ろに隠れるんだ!!」
あの9人のうち、どれか一人が高度な魔術師か特殊な弓矢を有しているのではないかとソホヤは思っていた。
それに従来の大砲や単発式の武器であれば一度発砲すれば隙ができる。
先程ナルゼとラディがやられた攻撃は一人一人が一発ずつ攻撃しているものだと勘違いしてしまったのだ。
一発ずつ攻撃すれば必ず隙が生まれる。
その隙に便乗して攻撃を行えば必ず数で押し切れると思っていた。
従来の魔術師か、新しい武器であったとしても単発であれば連射はできない。
そう思っていた。
実際はどうだ?
毎分700発を発射可能にしているM4カービンから発射される5.56mm NATO弾が狂信者たちの身体の中に入ると同時に体内に破片が拡散する。
それこそ、少女を追い詰めた際に使用した呪文を付与した矢による攻撃よりも痛みは激しい。
おまけに高速かつ連射可能な武器をどうやって避ければいい?
100人のうち、ソホヤを含めた集団の前方にいた30人あまりは銃弾に当たって倒れてしまう。
矢よりも早い攻撃と、今までに聞いたこともない攻撃音に驚いて後ろにいた者達は木の陰や地面に伏せる。
この判断は正しい。
木や地面に伏せれば銃弾に当たるリスクも大幅に減るだろう。
それに月夜の灯りすら遮ってしまう森の中だ。
通常の戦いであれば、闇に紛れて奇襲を敢行することもできる。
チャンスはまだゼロではない。
ゼロではないが、彼の姿は赤外線暗視装置を有している歩兵とM2ブラッドレー歩兵戦闘車からは筒抜けであった。
「いいか!接近戦に持ち込まれたらこちらが不利になる!絶対に近づけさせるな!!」
「M249じゃあ…あのデカい木を撃ち抜けねぇ…M60を持ってくるべきだった!」
「大丈夫だ!後ろのM2ブラッドレー歩兵戦闘車が木の後ろに隠れている奴らを一掃してくれている!俺たちはそこから逃げ出した奴らを撃ち殺せばいい」
「ああ!そうだな!!頼むぞ!!」
歩兵を援護するために1輌のM2ブラッドレー歩兵戦闘車が、M242 25mm機関砲で発砲し、分厚い木々の陰に隠れている狂信者を片っ端から排除している。
25mm機関砲は貫通力が高いので次々と木を貫通して狂信者たちの肉体から血を四散させる。
その光景を見ていた狂信者たちは悲鳴をあげて逃げようとする。
―ズダダダダダダッ!!!!
「太い木を貫通するだなんて…ぎゃあぁっ!!!」
「こんな魔法は見たことが無い!こんな奴らに勝てるものか!俺は逃げるぞ!」
「おい、待ってくれ!俺を置いていかないでくれ!」
「大天使様!どうか俺たちを救ってください!」
嘆きながら武器を放棄してでも逃げようとする。
だが、彼らはよりにもよって世界最大最強の米軍に対して攻撃を仕掛けてしまった。
武器を放棄すれば見逃してもらえるかもしれないと思ったが、彼らはそうはさせない。
「一部は武器を放棄して逃走を始めた模様、分隊長!どうしますか?」
「奴らが戻ってまた増援を呼びだせばキリがない、そうなる前に奴らを一人残らず始末するぞ!」
「了解!」
アメリカ軍が20世紀後半から21世紀前半にかけて戦いで学んだ事がある。
それは狂信的な奴ほどねずみ講の如く増えていき、自分たちを殺しにくると。
アフガニスタン、イラク、シリアなどの中東地域で駐留する米軍兵士たちを攻撃する過激派組織。
彼らを一人でも逃せば過激派に転入した若者を引き連れて繰り返し攻撃してくる。
「今だ!!!我々米軍に対して攻撃してきた愚か者共を殲滅するぞ!」
「「「うおおおおおおっ!!!」」」
ならば、今ここで彼らをこのエリアから殲滅して安全を確保するしかないのだ。
ダニエル軍曹が突撃を指示すると、9人の隊員とM2ブラッドレー歩兵戦闘車が前進を開始した。
そして、必死に逃げ惑う狂信者たちに追い討ちをかけるように、戦闘車の銃座に搭載されているM240機関銃が逃げ惑う同胞たちを次々と葬っていく。
地獄の釜が開いた瞬間であった。




