閑話 そういう感じのもの
飛んでるでござる。押さないで、と言ったのに、豪快に押されたでござる。
「これがお約束というやつでござるか」
銀河の果てまでぶっ飛ばされ、拙者がいた星を視認することもできない。それでも宇宙全体に広がった根っこから、帰るべき場所が伝わってくる。
「どうするでござるか。このまま帰っても勝てないでござるよ」
惑星を覆うような根っこにからまられても、アリス様は、その質量を無視するように平然と動いていた。
「物理法則を無視しないでほしいでござるよ」
『アレは常識の外で生きてるからの』
「だ、誰でござるかっ!?」
拙者に繋がった根っこから振動するように声が伝わってくる。そうでござった。全ての植物と繋がっているのは拙者だけではなかったでござるよ。
「神樹王モクモクでござるかっ!?」
『いかにも、妾の世界へ、ようこそ。新しき緑の超越者よ』
うん、別にそんな世界へ来た覚えはないでござるよ。アリス様を倒してタクみんとラブラブになったら、元に戻るつもりでござるが……
「拙者、モクモク先輩が使ってた技でアリス様に挑んだでござるが、全く通用しなかったでござるよ」
『仕方あるまい。妾も物量で攻めて簡単にへし折られたからの。アレに勝つにはもう一段階、成長が必要じゃ』
え? もしかして今から修行編に突入するでござるか?
「そんな暇はないでござるよ。その前に世界終わっちゃうでござる」
『大丈夫じゃ。根を通じて情報の共有は終わっておる。数千年における植物戦闘の秘術は、すでにお主の中にしっかりと根付いておるのじゃ』
ああ、そういえば緑一色から復活した時、頭の中に、どばーーっ、と何かが流れてきたでござるな。
あれ、秘術の情報だったのでござるか。わけわからないから右から左へ受け流して、そのまま脳外に捨てちゃったでござるよ。
「せ、拙者、おバカさんでござるから、もう一度教えてほしいでござる」
『残念じゃが秘術は一子相伝のため、お主に送ったと同時に妾の記憶からは消えておる。大丈夫じゃ、秘術を使いたいと頭の中で念じれば、すべての情報は蘇ってくる』
まったく蘇らない。一文字残らず捨ててしまったでござる。
「そ、そうでござるか。で、では秘術を使って軽くアリス様を倒してくるでござるよ」
『うむ、行ってくるがいい。妾はタクミと不戦の条約を結んだからの。お主に秘術のすべてを託せて、一片の悔いもないわ』
ヤ、ヤバイでござる。秘術全捨てしてしまったでござるよ。バレたら拙者、どうなってしまうのでござるか。
「あ、ありがとうでござるよ」
ゆっくり根を伝わって帰っていく。拙者が帰る頃にはもう全部終わって決着がついてたらいいのでござるが……
「きたか」
アリス様は腕を組み仁王立ちで、めちゃくちゃ待っていたでござるよ。離れた所にいたタクみんも拙者に駆け寄ってくる。
「待ってたぞ、ロッカっ、神樹王モクモクの根っこから声が届いたんだっ、ロッカが超パワーアップして帰ってくるから期待して待ってろっ、と。俺もアリスを説得して進化するのを待っててもらったんだっ」
「オマエを倒し、ワタシは究極のヒロインとなる」
ひぃぃ、モクモク先輩、余計なことをっ! お膳立てがバッチリ整ってるではござらんかっ!
『大丈夫なんかな? なんかロッちん、震えてない?』
「心配ないよ、アレは武者震いだ。早く植物の秘術を使いたくてうずうずしてるんだ』
使えないでござる。帰る途中も探したでござるが、記憶なんて目に見えないもの、探しようがなかってござるよ。
「こうなったらやぶれかぶれでござる。植物の力だけではなく、拙者のすべてをぶつけてやるでござるよ」
「参る」
再び始まる脅威の圧力。
進化しようがしまいがアリス様は変わらない。
ただ全力で拳をぶつけてくるだけだ。
「ぬおりゃあああっでござるぅっっ!!」
第六禁魔法と植物の力、あとタクみんへの愛とか、そういう感じのものが加わった全力全開の拳が、アリス様の拳とぶつかり合った。
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