三百五十一話 ジャンピングチャンス
《う、うわああぁぁぁあぁぁぁあぁんっ!!》
かなり長い間出番がなかったクロエの慟哭が世界に響き渡る。
それと連動するように、晴れ渡っていた空は一瞬で荒れ狂い、豪雨が滝のように降り注ぐ。
『タッ、タッくん、あ、あれっ!?』
「ひぃいっ、爆弾がっ、また動き出してるっ!!」
最終破壊兵器、終ちゃんの正体を見抜いた時に止まっていた爆弾がまたゆっくりと地面に向かっている。
「なんでっ!? クロエってわかったから止まるシステムじゃないのっ!?」
『そんなシステム誰も言うてへんっ、根本的な解決は、クーちゃん慰めなあかんのちゃうのっ』
ええええっ、それ俺がやるのっ!?
「そ、そうだっ、だいたい終ちゃんにはソッちんがクロエの魂を込めたんじゃないのかっ!? 責任持って止めてくれよっ!!」
「残念ですが、それは誤解です。私はいざとなればカルナさんにお願いしようと思っていたのですよ。終ちゃんにはクロエさん自らが、その魂を捧げたのです」
「なんでっ!?」
『ほんま、なんでなんっ!?』
カルナと一緒に頭上の終ちゃん(INクロエ)を、バッ、と見上げる。
《そんなん、決まってるやんか》
最終破壊兵器からドラゴ弁がこだまする。
《そうでもせんと、うちの出番ないからやっ!! このままみんなに忘れられるくらいなら、いっそ、この世界ごと滅ぼしてしまえっ、て思たんやっ!!》
忘れ去られた元メインレギュラーの魂の叫びが世界を震撼させる。
こ、こんなの、どうやって慰めたらいいんだよっ!?
『い、いいからっ、なんでもいいから優しい言葉かけてあげてっ、もう爆弾、着弾してまうっ!!』
「うわぁああっ、ク、クロエっ、俺は片時も君のことを忘れたことはなかったぞっ!!」
ピタ、と爆弾が空中で静止する。
《……………ほんまに?》
うん、ごめん、めっちゃ忘れてた。
でも言ったら世界終わっちゃう。
「ホ、ホントだよ。毎日寝る前にはクロエが何してるかなぁ、って思いながら歯を磨いてたよ」
ヒョイ、と少しだけ爆弾が上昇する。
『め、めっちゃうそくさいのに信じてる。チョロいな、クーちゃん。タッくん、その調子で頑張って』
え? これ、ヨイショして爆弾上げていくシステムなのっ!?
「ク、クロエが黒龍の王になってから会えなくて寂しかったよ。会いに行きたいと思ってたけど邪魔したら悪いと思っていけなかったんだ」
ヒョイヒョイ、と二段階くらいあがる。うん、チョロい。これならいけるかっ。
《ほな、うちの誕生日覚えてる?》
「えっ!?」
誕生日? いや、聞いた事もないよね?
『タッくん、クーちゃんの誕生日は……』
《カル姉は黙っててっ!! 脳内会話聞こえてんねんでっ!!》
うわぁ、これもう365分の1じゃないか。
「じゅ、10月5日?」
《それ、アリスの誕生日やっ!!》
ひゅーん、と勢いよく爆弾が落下していく。
ええっ!? 上がる時はちょっとずつなのに落ちる時は、一気に落ちるのっ!?
これもう次で世界終わっちゃうよっ!!
「ど、どうする!?」
伽羅様やネレスも固唾を飲んで見守っている。いや、ちょっとは協力してよっ。
《第2問》
完全にクイズ形式になったよっ! 無理ゲーだよっ!!
《うちの大好物はなんでしょうか?》
わかるかぁっ!!
いつもなんでも美味しそうに食べていた思い出しかない。
カレーか? 俺の1番の得意料理だったし、カレーでいいよね?
『タッくん、それもアリスの好物やっ、世界終わってまうでっ!』
《カル姉、次、なんか言うたら、もうアウトやからな》
ひぃっ、唯一のアドバイザーまで失ったっ!!
伽羅様とネレスを見ると、チョビ髭と一緒に3人並んで手を合わせている。やめてっ、みんなで俺に祈りを捧げないでっ!
考えろっ、どれも美味しそうに食べていたが特別な料理があったはずだ。思い出せっ、クロエとの思い出を総動員させるのだっ。やばい、最初に洞窟に来た時しか思い出せない。
「……いや、まてよ。そうだ、あの時だ」
現実世界で食べた初めての料理。それをこっちに来て作り直した時、確かにクロエは感動していた。
「お、お好み焼きっ、いや違う、龍宝焼きだっ! それもご飯をセットにした、龍宝焼き定食だっ!!」※
《……ファイルアンサー?》
「ファ、ファイナルアンサー」
どるどるどるどる、と天空からドラムロールが鳴り響く。あ、遊んでないよね、最終破壊兵器?
ごくり、とみんなが唾を飲み込む音が重なり、ドラムロールが終わる。そして……
《大正解っ!!》
ぎゅーーん、と一気に爆弾が上昇する。
やった、やったよっ、俺、世界を救ったよっ!!
『まだや、タッくんっ』
「へ?」
よく見ると爆弾は、発射口に戻る寸前でピタっ、と止まっている。
《それでは最後の問題です》
「まだあるのっ!?」
《アナタの、タクミ殿の1番大切な人は誰ですか?》
ぴしっ、と空気が固まった。
クロエだけじゃない。
伽羅様もネレスも、目を閉じて祈っていたチョビ髭までもが、目を見開いて俺を凝視している。
《最終問題なので上下は100倍。ジャンピングチャンスになります》
「やめてぇええーーーっっ!!」
クロエと言ったら嘘になる。今、世界が救われてもきっと後々、破滅する。かと言って他の女性の名を言っても、すぐに世界が終わっちゃう。だったら答えはもう……
息を大きく吐いた後、ゆっくりと、その名前を口にする。
世界を破壊する爆弾は、宇宙を突き抜け上昇して見えなくなった。
※ 龍宝焼きのエピソードは「第五部一章 百五十話 龍宝焼き」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。
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