三百四十七話 第二作戦大盛り
先週土曜日の掲載分を掲載予約の手違いで載せれていませんでした。大変申し訳ございません。
『あれ? タッくん、もう顔特訓やめたん?』
「うむ、だいたいマスターしたからな。瞬時に3つの顔に切り替えれるようになった」
『ほんまに? うち、ちょっと試してみていい?』
ふっ、カルナのやつ信じていないな。よかろう、俺の三変化をとくと見るがいい。
『ほな、いくで、新しいおもちゃを見つけた少年フェイスっ』
「はっ」
『ふっ、お前の力はその程度かフェイスっ』
「やあっ」
『俺負けないからフェイス』
「うりゃあっ」
流れるようにスムーズに、俺の顔面が変わっていく。
『す、凄まじいスピードやっ、タッくん、顔芸の才能あるやんかっ!!』
「本番までに、あと2つくらい追加予定だ。見た目だけなら歴代ラスボスに負けないくらいの迫力になるつもりだよ」
『ど、堂々と負けるために努力を惜しまへんな。ある意味立派やわ』
ふふふ、まさかこんな自信満々の表情の男が開始そうそう自爆するとは夢にも思わないだろう。
怖いのは最初の数秒間。
その間に攻撃さえ仕掛けられなければ、俺の無傷敗退ミッションはクリアできるのだ。
『でも相手、ランキング2位の伽羅様やん。秒殺並みのスピードで突っ込んでくることもあるんちゃう?』
「うむ、確かにその可能性も無きにしも非ずだ。一応、第二の作戦も抜かりなく手配済みだ」
『そうなん? まさか、ちゃんと戦う特訓もしてるん?』
そんな無駄なことはしない。ちゃんと戦うのが嫌で色々やってるんだから。
「文字の力もなくなって最弱に戻った俺の唯一の得意技はなんだと思う?」
『……あやとり?』
「ちがうよっ、料理だよっ」
違う漫画と間違えないでっ。
「ダッグ戦が決まってから毎日大量のレバー料理を作って、こっそり祠においているんだ。元々伽羅様はこのボルト山の守り神様で貢物を食べていたからね」
『え? もしかして太らせて動きを鈍らせるとかいう古典的作戦なん?』
「うん、昔、めっちゃ太ってまるまるになってたし、あの時の伽羅様になら、秒殺なんてされっこないよ」
あの頃、伽羅様の代わりに神様やって、ベビモに突撃されて腰砕けたなぁ。※
『でも敵が作った料理なんて何が入ってるかわからんやん。そんなん、伽羅様食べるん?』
「ちゃんと毎日なくなってるよ。俺が入れているのは、美味しくするための愛情だけだからね」
すでに伽羅様はかなり体重を増やしているはずだ。
『ほんまに? 確認してへんのやろ? そんなアホみたいな作戦に伽羅様ひっかかる?』
「大丈夫だよ。神様だけどそれ以前に犬なんだから、食の欲求に勝てるはずはない」
「ふ、僕もなめられたものだね、タクミ」
「きゃ、伽羅様っ!!」
いつのまにっ!? 話に夢中で接近に気が付かなかったっ!! いや……
「僕を太らせて動きを鈍くするなんて、そんなの、食べ過ぎなければいいだけじゃないかでぶ」
うん。いま語尾に……
振り返って伽羅様を確認する。う、うん、これは、もうなんというか……
「まあご飯も美味しいし、しばらく引っかかったフリをしてあげてたんだでぶ。ところで今日のメニューはなんなのでぶ?」
「あ、はい、スタミナレバニラ炒め定食を予定しています」
「うむ、いいチョイスでぶ。まあ戦いに影響するほどは食べないけど、ご飯はもうちょっと大盛りにしてもらっても構わないでぶ。僕、いま食べ盛りだからねでぶ」
「わ、わかりました」
足りなかったのかな? 催促しにやってきたのかな?
「それじゃあ、戦いを楽しみにしているでぶ。晩御飯のお供えもでぶ」
ずしん、ずしん、と巨体を揺らしながら伽羅様が帰っていく。そりゃ来た時、気が付かないよ。もう別個体だもの。
『……めっちゃ作戦成功してたな』
「語尾がでぶになるくらいにね」
『タッくん、自爆せんでも勝ててしまいそうやで』
とりあえず、秒殺の心配はなくなった。
これ以上、太らせたら危ないのでは、と違う心配をしてしまうレベルだ。
『どうする、タッくん。もう試合までのんびり過ごしとく?』
「いや運動不足はよくないよ。ちょっとだけ特訓しとこうかな」
特訓という言葉に反応したのか。
離れたところからアリスが猛ダッシュで駆け寄ってくる。
「ちがうよっ、アリスっ、そんなハードなやつじゃないよっ、軽く運動するだけだよっ」
「特訓、タクミと特訓、はぁはぁ」
やばいっ! 特訓ていう言葉しか聞こえてないよっ!
「逃げるぞ、カルナっ」
『あかんで、タッくんっ、めっちゃ追いかけてくるっ、そういう特訓やと思ってるでっ』
「いやぁああああーーっ!!」
太る伽羅様とは対照的に、望まぬ猛特訓で、めちゃくちゃ痩せた。
※ 伽羅様が太ってまるまるになるエピソードは、第二部の後にある「第0部 ② タク神様と犬神様」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。
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