閑話 六花と文字人間
「助けてほしいでござるっ、ヌルハチ殿っ、拙者のオデコが一大事でござるよっ!!」
困ったときの大賢者。偉大な魔法使いヌルハチなら、オデコの中の文字人間をなんとかしてくれるはずでござる。
「なんじゃ、オデコの穴は前からあったではないか」
「そこに昨日から文字人間が不法滞在しているのでござる。ほじくりだそうと頑張ったのでござるが、拙者の攻撃は全部ばいんばいんされてしまうのでござるよ」
「何を言っておるのか、よくわからんが、ちょっと見せてみよ」
ううっ、おでこの穴から中を見られるのなんか恥ずかしいでござるよ。
「ふむ、確かにちっちゃい人間が中でみかん食べながらコタツに入ってテレビを見とるの」
「あの野郎っ、拙者のおでこで、めちゃくちゃくつろいでやがるでござるっ!!」
いーーっ、とおでこを掻きむしる。
「お願いでござるっ、てっとり早く、そいつを追い出してほしいでござるっ」
「少々、手荒くなるが大丈夫かの?」
ヌルハチが拙者のおでこに、ぴたっ、と手を当てて、シリアスな顔になる。
「で、できれはお手柔らかに……」
「波動球•爆」
「ちょっ、まっ、おまっ!!」
大賢者、最大の攻撃呪文が拙者のオデコの中で、ぼんっっ、と大爆発した。
「すまぬ、どうやら文字人間にダメージはないようじゃ」
「け、けほっ、こっちは大ダメージでござるがなっ、拙者が第六魔法でなかったから死んでいたでござるよっ!」
文字人間は生意気にもタクみんと同じように絶対防御の文字の力を使っているようでござる。
「ここはあれじゃな、強引にいかず何か食べ物で釣ってみるのはどうじゃ?」
「そんなのでうまくいくはずがないでござる。もっと、こう画期的なアイデアはないのでござるか?」
「色気で釣ってみるか? セクシーな格好でもしてみるのはどうじゃ?」
ダメだ。この大賢者役に立たない。だいたい文字人間が男か女かもわからないのでござるよ。
「よかったら、そのオデコ、カットしましょうか?」
「レイア様っ!!」
忘れていたでござるっ! こんな時こそ、レイア様のカットでござるよっ!!
「お、お願いするでござるっ! 拙者のオデコを丸ごと根こそぎカットしてほしいでござるよっ!!」
「そんなにカットして大丈夫なのかの? 大事な脳みそとか近くにあるのではなかろうか」
黙るでござるよ、大賢者。オデコの穴と文字人間さえいなくなれば、後はオマエが全力で拙者を回復させるでござるよ。
『あ、頭の中のもの全部ここにありますよ』
「へ?」
おでこの中から文字人間の声が聞こえてくる。
「みかんと一緒にカゴにつまれておるぞ」
「えええぇぇぇーーーーっっ!?」
『はい、スペースを空けるため、小さくして保管してます。みかんと一緒に(笑)』
(笑)じゃないでござるよっ! 拙者の頭の中で何をしてくれてやがるでござるかっ!!
「カットしたら完全に消えちゃうけど大丈夫?」
「それは大丈夫じゃないでござるっ、範囲を文字人間だけにしぼれないでござるかっ!?」
「所有物になってるから難しいかも。なんか手でコロコロしてるし」
あの文字野郎っ! 拙者の大切な脳部をっ!!
「まあ色々なくなっても魔法で後から再生できるかもしれん。記憶とかなくなるかもしれんが」
「え? タクみんの記憶とか?」
「いいですね、それ。すぐカットしましょう」
どさくさにまぎれてライバルを消そうとしないでほしいでござるっ。
「仕方ないですね。とりあえず穴だけカットしましょうか。中に文字人間が入ったままですが、余計な雑音は聞こえなくなりますよ」
「ふむ、それだとうまくいけば二度とでてこれなくなるかもの」
「拙者のオデコを封印場所にしないでほしいでござるっ!」
ダメでござる。根本的な問題から目を逸らしすぎでござる。
『やめたほうがいいと思うよ。僕はただここにいるだけじゃない。魔法で構成された第六魔法の六花だから、ここにいるんだ。文字で構成された僕と似たような存在。とても居心地がいいんだ』
「な、何を言うでござるかっ、一緒にしないでほしいでござるよっ!」
気持ち悪いでござるっ、ぞわわっ、と背筋が怖気立つでござるよっ。
『この世界の理から外れた君と僕。だから僕は正体がバレる前から君に力を貸していたんだ。この穴は2人の絆だよ。だから、それを邪魔するやつは……』
おでこの穴から冷気のようなものが吹き荒れ、辺り一面を氷つかせる。
『消しちゃうかもしれない』
大賢者とレイア様が、ばっ、と後ろに飛び退いた。
「や、やはり、このままにしとくしかないようじゃな」
「そ、そうですね。なんでもカットしたらいいってものじゃありませんしね」
おまっ、散々いままでカットしまくってきたくせにっ! スタスタと2人、早足に去っていくでござる。
『これでまた2人きりですね、ロッカさん。よかったら一緒にコタツでみかんでも』
「拙者のオデコにどうやったら拙者がいけるのでござるかっ!!」
文字と魔法の不協和音が頭の中で響き渡った。
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