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Hard Days' Knights  作者: 里崎
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来訪編

ソイの親代わりが北州本部に来訪する話。隠れチートごっこ回です。


北州騎士団本部の正門前に、一台の馬車が停まった。隊服の裾をひるがえして降りてきた長身の男に向けて、門の前に立っていた黒髪の少女が、両足を揃えてきっちりと敬礼。真新しい隊服に身を包んだ年若い少女は、高官を示す階級章といくつかの褒章を付けた一回り年上の男に一切物怖じする様子もなく、ハキハキとした物言いで歓迎の意を告げた後、案内役です、と名乗って「こちらへどうぞ」と背を向けて歩き出し——それまでずっと黙っていた男が、ぽつりと言った。


「大将殿でいらっしゃいますか」


少女がいたずらじみた笑顔を浮かべて振り向く。と同時、門につながる塀の上から、小さな舌打ちの音が鳴る。


「はええよ」塀の上から赤毛の青年が降ってくる。軽やかに着地すると、男を睨みつけて分厚い胸板を小突く。「なんで分かった?」


「歩容と背筋」こともなげに、男。


「あちゃー、そっかー。以後気を付けます」黒髪の少女——クウナが頭を掻いて、なぜか青年に謝り、


「街の人間でも観察するか」と思案顔の青年——ソイが呟く。


近くの建物に男を誘導しつつ、少女がパッと頭を下げた。


「失礼しましたっ」


綺麗な黒髪が肩に流れる。


「お詫びにー、」にっこりと笑った少女は、すらすらと中央州の役人や貴族や商人の名を並べ。「このあたりなら、すぐにご紹介できますよ」


一瞬あっけにとられた男が、言われたことを理解するなり、小さく短く唸る。少女が告げたのは、先ほどの馬車の中で、どうにかして顔を繋いでもらえないか交渉しようとあれこれ思案していた人名の、ほとんど全て。


男が、説明を求めるように、息子同然の身内である赤毛の青年に視線を向ける。悪びれたふうもない青年は、黙したまま、肩でぞんざいに上官の少女を示す。


満面の笑みを浮かべ、少女が手を叩いて種明かし。「恩を着せずに恩を着せるには、イタズラ仕掛けるのが一番!」


赤毛の青年が、ゆっくりと口角を上げる。「つくづく面倒くさいな、お前」

2022/4/4着想、2023/12/31執筆

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