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番外編:メリークリスマス

「ねえ、たまには外で待ち合わせしない?」


 私がそう提案したのは雪がちらちら降るようになった季節。もうすぐ一年が終わる。



******



 ちょっと前に、一年ももう終わりがけだけど思い残すことはないかなぁと考えながら、ふと外を見ると仲良く手を繋いで歩くカップルが見えた。


「いいなぁ……って、あ」


 そう言えば武器屋と外で待ち合わせをしてデートなんてしただろうか。

付き合う前に旅行に連れて行ってもらっり、ギルドに迎えにきてもらったりとかはしたけど、ちょっとお洒落してドキドキしながら待ち合わせ場所に向かって、というのはない気がする。いや、旅行の時はドキドキしたけどあれはまた別だ。


「よし、デートしよう! おー!」


握り拳を空高くかかげて気合いを入れたのが3日前。


「ねえ、たまには外で待ち合わせしない?」


やっと言えた。


「外で? 一緒に暮らしてんだから、待ち合わせ必要ないだろ」


と、武器屋は私のお誘いに怪訝な顔をする。


「う……だって……」


『待った?』

『いや、今来たばかりだ』

っていうデートな会話をしたい。今日の服は可愛いな、なんて言われたい。手を繋いで歩きたい。


 武器屋は手をあまり繋いでくれない。背中に手を添えたり、腰を抱いたりしてくれて歩きはする。それは手を繋ぐよりも親密な証とわかっているんだけど、私は今、手を繋いでデートしたい。


ただ、それを言うのは恥ずかしい。

何て言ったらいいか困った末に「駄目?」とだけ聞いてみた。


「……っ。いや、いつにする?」


「じゃあ、明後日は?」


明後日はお互い休みだ。特に何をするか決めていなかったからちょうどいい。


「わかった」


やった。

明日早速洋服を買いに行こう。

武器屋は清楚な感じが好きだから、白のコートとかいいかな。


「じゃあ明後日の10時に、時計台の下で待ち合わせね!」


すごく楽しみ!!


持っているバッグとか小物を確認しとこうと部屋に行こうとしたら、手首を掴まれた。

そのまま引っ張られて、すっぽりと武器屋の腕の中に私はおさまる。


「どうしたの?」


「あんまり可愛い表情するな」


そのまま顎をくいっと持ち上げられ唇が重ねられる。


「……ん……っ」


夜は静かにふけていった。



******



 次の日、昼の休憩時間を利用して私は洋服屋に行って、店員さんおすすめのコーディネート一式を買った。

白いコートに、ふわふわ素材の白のワンピース。手触り抜群、見た目も抜群。


 明日の待ち合わせのために、寝る部屋も別々にして、明日着る洋服は皺にならないようにハンガーにかけておいた。それを見ながら私はゆっくりと眠りについた。





 当日、目覚まし時計より少し早めに目覚めた私はこっそりと着替えて、武器屋と顔を合わせないようにこっそりと出てきた。

 朝から開いているギルドの食堂でご飯を食べていると、出勤してきたイクダールさんが私の隣に座った。

デートの件を話すとイクダールさんは「あんた達は相変わらずねえ」と笑って私の髪を撫でた。


「折角だから髪型もかえてみたら? お化粧も。してあげるわよ」


「いいんですか? ありがとうございます!」


ご飯を食べた後、ギルドの控え室に入れてもらい、イクダールさんは私を別人のように変身させてしまった。


「道具屋は化粧が映えるわね」


 鏡に映る私は、今まで生きてきたなかで一番可愛く仕上がっている。


「時間は大丈夫?」


そう言われて時計を見ると待ち合わせ5分前になっていた。


「あ、もう行かないと。イクダールさん、本当にありがとうございます」


「楽しんできなさい」


手を振ってイクダールさんと別れると私は走った。

時計台の所に武器屋は……あ、いた。


 いつもと違ってぴしっとした洋服を着ている武器屋が時計台の下に立っていた。髪の毛も櫛を通したようで、いつものぼさぼさじゃない。


「武器屋、ごめんね。待った?」


「いや、今来たばかりだ」


 にこりと笑う武器屋が凄く紳士的に見える。

髪型と服装が少し違うだけで、印象ががらりと変わる。

武器屋もそれは同じだったようで、私をじっと見てから、

「凄く綺麗だ」

と言ってくれた。


自分でも頬が赤くなったのがわかった。うわ、ドキドキする。


 意識しすぎて手を繋ぐどころではなくなってしまった。


 けれど、武器屋は私が求めていたのが何かわかったのだろう。私の手をそっと握って歩きだした。

 それからは近くの湖に行ったり、隣の少し大きな街に行って市場を見たりと、穏やかに過ごした。手は握ってくれたまま。


 時間はあっという間に経ち、日がくれてきた。


「今日はありがとう」


時計台の所に戻り、手を繋いだまま向かい合う。

今日は本当に楽しかった。


「俺もだ。たまにこうして出掛けるのもいいな」


「うん」


名残惜しいけど、もう家に帰らないと。

私は背伸びして、武器屋の頬っぺたに唇を寄せた。


「大好き」


そう言うと、武器屋が目を細めてそれはそれは嬉しそうに微笑んだ。


「帰るか」


「うん」


穏やかに一日が終わる。



――そう思っていたけど。


 二階の住居スペースに帰って来た途端、武器屋に抱き締められた。


「ん……なっ…」


首筋を舐められ、コートを脱がされる。


「俺がどれだけ我慢したと思ってる。昼間はお前の時間、今からは俺の時間だ」


紳士の仮面を外して、本来の野獣のような荒々しさが出てくる。


「今日はいくら言っても止めないからな」


 早急に求められて、でもそれが今日はいつもより嬉しい。


「……うん、武器屋の好きなだけして……」


私も応えたいと、この台詞を言ってしまったのがいけなかった。


 夜は静かにふけていく。

 皆が寝る時間になっても、寝静まった時間になっても、武器屋が私から離れることはなかった。






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