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JK、未来で巨大ロボに乗る  作者: 久遠悠羽


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第6話 出撃限界

 

 視界が戻った。

 いつもの回路のブースの中だった。


「ちぃっ!!」

 遼太郎はブースの壁を忌々しそうに拳で殴る。

 しかし反抗も虚しく制服がパイロットスーツに変わって行く。


「神の名を……」

 アンドロイドの無機質な声が響く。

「タケミカヅチだよっ!!」

 ヤケクソになったかの様に彼は叫んだ……



「8番隊、アタッカー『タケミカヅチ』、

 サブアタッカー『イザナミ』、

 タンク『アマテラス』、

 防御『ガイア』

 この4機で出ます」


「井関君と里菜も一緒だ。それから……ガイア。確か、イタリア人のキアーラさん……」


 つづみが呟く。

 もう諦めてコックピットにスタンバイしている。


 8番隊が射出された。

 今回の敵は双回転翼を持ったホバリング飛行形態の機体が数機と、巨大な蛾を模した様な重厚な戦闘機だった。


「……アマテラス、イザナミ、ガイア、聞こえるか?」

 タケミカヅチの遼太郎から通信が入る。


「タンクのシールドを盾に敵機照準外から接近する。頼む、アマテラス」

「了解」


 つづみが前に出てシールドを展開する。

 機影が目視でも分かるぐらいに近付いてきた。


 遼太郎からまた通信が入る。

「……以前からおかしいと思っていたけど、敵機って……地球外生命体からの未確認攻撃機ってよりは人間の兵器に似ていないか?

 双回転翼のヤツなんかオスプレイみたいだ……」


 そう言いながらも撃ってきた攻撃を避け、反撃する。

 オスプレイに似た戦闘機が被弾し、次々と堕ちていく。


 ——人間の兵器?……それならもしかして人間が……敵?


「アマテラス!そっちに行ったぞ!!」

 遼太郎の声が叫ぶ。

 敵機が目の前に迫っている。


 あっと思ったが、素早く来たイザナミ機が薙ぎ払ってくれた。


 ドオォン!と重低音を響かせながら敵が爆発する。

 火焔をバックにイザナミが振り返った。


「ドンマイ!アマテラス!」

「ありがとう、里菜」


「アマテラス、もう少し踏ん張ってくれ。お前の盾があるからこそ動けるんだ」

 遼太郎が言う。


「うん、分かってる!」

 つづみは改めて巨大なシールドを展開した。


 その時、不気味な羽音のような振動が戦域に響いた。

 巨体の蛾を模した戦闘機が翼を広げ、虹色の光粉のような粒子を撒き散らす。


「あれが親玉だな!」

 タケミカヅチの声が緊迫する。


 蛾の羽から放たれた粒子がシールドに触れると、電流のように走って強制的に防御を歪めた。

「くっ……動きが重い……!」

 つづみが苦悶の声を漏らす。


「アマテラス、無理するな! 私がやる!」

 前に出たのはガイア機。キアーラの叫びと共に、大地の力を模した重厚な砲が展開される。


 彼女はそのまま蛾型の戦闘機に直撃を狙って砲撃した。


「ガイアの砲撃、命中……!?」

 爆炎が広がる。しかし、蛾型の装甲は厚く、羽の一部が焼け焦げただけで、なおも飛び続けている。


「な、なんてしぶとい……!?」

 次の瞬間、蛾の機体の中央から真っ直ぐに線を描く様に光線が放たれた。


 ただ1機、線上にいたガイア機の機体がザバリと半分に斬れてしまう。


 僅かに直撃を逃れたコックピットにいるキアーラの目の前を光線が走り、視界が白く灼け、装甲が裂けていく……


「キャアアアアァ!!」

「「ガイア!」」

「キアーラさん!!」

 遼太郎と里菜、つづみが叫んだ。


 ガイア機のコックピットの中には『Perduto』(ロスト)の文字がいくつも並び、激しい警告音がしていた。


 キアーラが恐ろしさに大きく呼吸をする。

 だが、すんでの所で身体は元の時代に転送された。

 

 同時に機体が激しい音を上げて爆発した。


「ガイアーッ!!」

 焦った遼太郎が叫ぶ。


「……ガイア機、爆散。パイロットは帰還済みです」


 管制部からの通信が入った。

 3人はホッと胸を撫で下ろす。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ……ガイア機のパイロット、キアーラは1998年のイタリアの、飛ばされた時間に戻った。

 カフェで一息付いていた所だった。


 エスプレッソがまだ、温かい。


 しかし急にハッとして左手の甲を見た。

 そこには見慣れない文字が浮かび上がっている。


「È stato superato il limite del numero di sortite.(出撃限界回数を超えた)

 Arrivederciさようなら


「……なんですって……?」

 彼女は目を丸くする。

 その直後、心臓が躍った様に高鳴り、止まってしまう……。


「……あ……」

 手にしていたエスプレッソカップが静かに指を離れて落ち、テーブルの上に茶色い液体が広がった。


 命が閉じられてしまった彼女の身体が、静かに椅子から崩れ落ちる。



 ——周りの何人かの客から、悲鳴が起こった。



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