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JK、未来で巨大ロボに乗る  作者: 久遠悠羽


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第17話 ここは何処?

 その夜、談話室に集まった4人はカムフラージュの為にそこにある棚の膨大な量の資料タブレットから、読めそうな物をいくつか取り出し、テーブルの上に置いていた。

 

 この基地にある資料をお互いに読んで勉強している様に見せかけ、話している人物以外が筆談で今回の事について意見を言い合う。


「こんなに資料が残っているんだな。

 オレ達の時代ではディスクなんかの寿命は50年って言われてたけど、この電子書籍タイプのタブレットは少なくとも数百年は持ってそうだ」


 そう言って弾が数枚に目を通している。

 そこには彼らが生きていた時代以前から、更に数千年に渡る人類の営みが綴られていた。

 

 人類が火を使う様になってから更に知恵を付け、貧富の差や奴隷制度が発生した事、石炭を大量に採掘し出して使った産業革命が起こり、原油が見つかり電子革命が起こり……西暦2000年頃には人道的な差別は緩和されて行った事も記してあった。


 その先ではAIが開発され、やがてシンギュラリティが起こった事、それによってAI側との争いが起こった事なども描かれていた。


 これを読んで理解したからこそ、地球外生命体にも人類を真似る事が出来たのだろう。

 そもそもが生態系や文明が近かったのかも知れない。


 いや、およそ地球上の文明では作れないと思われていた精密なロボットが製造されていた点を考えると、やはり地球よりも遥かに進んでいる。

 下位の文明を真似て自分達に信じ込ませる事など、彼らには容易だったのだろう。


 資料を読む彼らの横では、密かにつづみのメモを読んだ遼太郎がウーンと唸るような微かな声を挙げていた。


「ここの資料、だいぶ言葉が変わってるけど、日本語が多いよね?」

 同じくタブレットを読んでみたつづみが言う。


「そうだね。あたしでも読める板が何枚もある……英語の物もあるかな」

 里菜がそう言って探す為に席を立った。


 暫く棚を眺めて回り、数枚のタブレットを取って来たが、やはり英語で書かれた物は少なかった。


「おかしいよね、あたし達の時代ですら英語が世界標準だったのに」


「……もしかして、この基地がある場所が『日本』なんじゃないか?

 日本人が多かったから資料が日本語なのかも」

 弾が言った。


 他の3人もハッとし、つづみが聞いた。


「……それ、イヴァンさんに聞いたら分かると思う?」

「オレ達の事を『3000年前の日本語を使う過去の人間』って分かった時点で、知っていたと思う」

 彼が返す。


 そこへ遼太郎が何かを書いたのか、さりげなくメモを上からトントンと叩いた。

 皆がその手元を覗き込む。


『あいつらこそが地球外生命体だったのなら、今までの曖昧な態度も合点が行く。

 月にいる者達を含めて、人間をどうしたいんだろう?』


 メモには彼の字でそう書かれていた。


『分からない。でも今すぐ取って食おう、っていう気はないみたいだし、オレ達を利用し尽くすまでは今まで通りなんじゃないかな』

 弾が書き返した。


「思うんだけど……訓練場から遠くに海?みたいな水面が見えたんだよね。

 そこからここが何処か分からないかな?」

 里菜がメモを気にしながら先程の話題を振って来た。


「オレも見た。確かに生活圏には水が必要だ。

 更にこんな巨大なロボットを稼働させる為には、鉄鋼から制御から何から何まで大量の水がいる。

 ……しかし海水では無理だ。淡水湖じゃないと……」


 弾がそう返し、また何やらメモに書き出した。


「淡水湖?でも湖って割と数千年で枯れたりするでしょ?

 私達の時代の日本の湖で残っている所なんて……」

 つづみが言う。


 彼がまたメモを見せて来た。

 そこには、

『明日、訓練時にどさくさに紛れてスラスターで出来るだけ上空に上がろう。

 何か分かるかも知れない』

と書かれていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 次の日、4人はまた『開拓者プロトポーロス』に乗っていた。


「『アーグ』、お前……俺と喋れないか?」

 遼太郎はコックピット内で密かに自分のロボットに語り掛けた。


[……パイロットに話し掛ける事はやめようと言う事になっています]


「な……!今喋った?話し掛けたよな?」

[はい、うずうずしてしまって……やってしまいました]


「……遼太郎君?」

 管制塔で通信を聴いていたケーナが聞いて来た。


「あ、いえ、なんでもありません!」

 彼が慌てて返答する。


『やめようって……めっちゃブレてるじゃねーか。

 じゃあつづみのロボットはどうなんだ』

 心の中で思う。


[『バーニィ』は末っ子なので、その辺りの制御は弱いかも知れません]

「!?」


 頭の中に流れて来た言葉にまた驚く。

『え?何。話し掛けたらお前達が異星から来た奴らと分かっちゃうから?』


[……ご存知でしたか……ではもう仕方ありません。

 あなた方に私達の意思が伝わるとは思ってもみませんでした。

 エンジニア達ですら知らないのです]


『そっか。お前達は実は地球人との方が相性がいいんだな』

[そう言う事になりますね]


 遼太郎は動揺してしまったが、普通を装い歩いて訓練場に向かう。


「今日はスラスターでの上昇に慣れてもらう訓練をします」

 フロートバイク上からイヴァンが言う。


「各機、円陣を組んで手を握ってください。

 慣れている『ガルガラハ』が誘導する形での掌囲飛行しょういひこうフォーメーションです。

 まずは上空200m程まで上がってみてください」


「よっしゃ!」

 遼太郎がつい声を上げる。

「ええ?怖いよ」

 里菜が慄いた声を出した。


「私も怖い」

 つづみも続く。

「大丈夫だ。小型核融合炉の馬力を信じろ、最大出力で行く」

 弾がさりげなく励ました。


 4機は手を繋いでフォーメーションを作った。

 スラスターを徐々に噴射する。

 

 その勢いは当初のイヴァンの考えを大きく上回っていた。

 段々とブーストを掛け、4機は一気にズバン!と上空に上がって行ってしまったのだ。


「ああっ?!」

 思いもかけなかった勢いに彼が動揺した。

 彼らは200mどころではなく、数千m程上がるつもりらしい。


 身体に負担を掛けないように徐々にスピードを上げる。

 それでも掛かってくるGに、つづみも里菜も動揺していた。

 身体が背の安全クッションに押し付けられ、胸が苦しい。


 コックピット内には急激な速度変化に対してピーッピーッと警告音が鳴り響いている。


「怖い怖い怖いっ」

 みるみる上がる高度に、つづみが震える。


[アハハハハ!楽しい!高い!手繋ぎ最高!]

 『バーニィ』の上機嫌な声が聞こえた。

  

 それは彼女に『このロボットは平気だ』という安心感を与えた。


 彼ら4機は手を繋いだまま、約2000mの高さまで上がり、ホバリングをした。


「ここなら奴らの通信機も拾いにくいだろう。いや、もう聞こえても構うもんか。

 話をしよう」

 弾が言った。


 4機体は手を繋いで、空中でスカイダイビングの様に円形に広がり、腹這い状態で緩く回っていた。


「みんな下を見ろ。大丈夫だから。

 湖の形が見える……やっぱりな。あれは琵琶湖だ」


「琵琶湖?じゃあここは日本の……関西?」


 つづみが驚いて言った。


 この高度からならば地形が見える。


 彼らの下に広がっていたのは、形から察するに琵琶湖だった。

 ここは確かに日本だったのだ。



 

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