見張りでの悲劇
それから、これからどうするか、話し合いをしたが、いや、しようとした。
しかし、私が案を言っていると、クロウが寝て、逆にクロウが案を言うと、私が寝るという、話し合いにならない状態だったので、とりあえず寝ようぜ、ということになった。
クロウが、見張りをつけた方がいいと言ったので、交代制で見張りをすることになった。
最初は私が見張る番ので、クロウは寝ている。私も寝かせろやこんにゃろう。
あくびをしながら、人間だった頃を思い出す。今日は、色々と忙しくて思い出す機会なかったからね。
まず、私は人間だった、これは確実だと思う。そして、女だった、なんかそんな感じがする。男ではなかったと思う。いや、心のみ乙女だったとか?
…うん、ないな。
自分でいうのもアレだが、自分が乙女だとは思えない。かも。
いやさ、自分よりでかい鳥を背負って駆け回るような奴だぜ?そっから、そいつを川にどぼんしようとするやつだぜ?
こんな奴が乙女なら、女性全員乙女だわ。
…悲しくなってきた。
もう考えるのも面倒くさくなった。
「はぁ…」
ため息をついて、クロウを見る。…幸せそうに寝やがって。
クロウを見るのも飽きて、空を見上げる。
「…!!」
そこには、白い翼を持った純白の馬が空を駆けていた。
その馬に、私は目を奪われた。
その馬は、こっちを見た。
あ、まずい。襲ってきたらどうしよう。私戦えないんだけど!?
いや待て待て待て!こっちを見てるだけかもしれない。
…と、思っていた時期が私にもありました。
あの馬、どんどん近づいてきてない!?
眠気を忘れ、内心焦りながらクロウを叩き起こす。…必要はなかった。
「…どうどう、落ち着け、な?」
と、何故か既に起きていたクロウに撫でられる。
私は、ぶんぶん、と音がなりそうなくらい頷く。どうやら、寝起きのクロウにわかるくらい私は焦っているようだ。いや、クロウ
そんなこと考えてる場合じゃないわ。
「あの子、平気?」
と言いながら、私は馬の方へ手を向ける。
「襲ってはこのないんじゃないか?」
若干笑いを堪えながら言うクロウ。何笑ってんだこいつ。
笑ってる場合じゃないでしょっ!?
馬が、馬がもう近い!!だめだ、これダメなやつだ。
笑ってるクロウの方を見る。…こいつ戦えるの?いや、戦う気なさそう。
逃げそうもないし…。
おし、逃げるか、一人で。
思い立ったら即行動。後ろを向き、走り出す。
「あっ、おい!」
グッバイクロウ。君のことは忘れないよ…。
そう思った瞬間。
「ぐえっ」
誰かの下敷きにされちまったぜ…。
おぉ、神よ…。