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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第1話 美味しくする魔法だけじゃむり!

「だーかーら! 料理を美味しくする魔法だけで、異世界は無理なんだって!」


 叫び声が、真っ青な空へと吸い込まれていく。

 ヒールのかかとが柔らかい土に食い込み、ピンクのスカートが脚に絡みつく。


「あーもー!」


 右手に持った魔法のステッキが単純に邪魔!


 見知らぬあぜ道を、私は全力で駆けていた。

 土の湿った匂いと草の青臭さが混ざった空気が、肺へとなだれ込んでくる。


 最初は思ってたんだよ。「のどかでいいところだねー」って。

 ――藪の中から、この子が飛び出してくるまでは。


 小さな牙をむいた、ウリ坊みたいなモンスターが……。


 こういうの、ファンタジー小説なんかでよくあるよね。

 異世界に来た主人公が、最初に出会うモンスター。

 そこで「ファイアボール!」とかやって、あっさり倒してさ。

「魔法が使える……すごい……」

 みたいな流れ。


 私? 私もやりたかったよ。

 でも、私が使えるのは〝料理を美味しくする魔法〟だけなの!


 背後から「ぷいぷい」と鳴き声が迫る。

 その瞬間、突風が草原をなぎ、スカートをばっさりとまくり上げた。


「うわっ!?」


 反射で両手がスカートを押さえる。その一瞬の隙に、


「いたっ!」


 お尻に鋭い衝撃が走った。

 

 刺さった!? いや、刺さってない。でも痛い!

 こいつ、狙いが的確すぎる!


 いやいや、感心してる場合じゃない。

 このままじゃ、私のかわいいお尻が穴だらけになる!


 もう、誰かに見られても知らない!


 私はスカートを押さえるのをやめ、腕をぶんぶん振って全力で走った。

 胸元のおっきなリボンがふわふわと跳ね、ツインテールが頬をぺしぺしと叩く。


「はぁ……はぁ……もう、むり……」


 視界がぶれ、脚がもつれる。

 それでも右へ左へとふらつきながら走っているせいで、なぜかウリ坊の突進はぎりぎりで外れている。


「あたっ!」


 ……たまに当たるけど。


 こうなったら、物理で行くしかない!

 

 ヒールで地面を蹴って、振り返る。

 急に向き直った私に、ウリ坊はピョンと跳ねて足を止めた。「ふー、ふー」と唸りながら頭を下げ、小さな丸い目でこちらを睨んでくる。

 完全に、狩る側の目だ。


 息を整え、ステッキを両手で構える。


 体育の選択授業でちょっとだけやった、剣道の授業を思い出せ……私……。


 鈴木先生、あなたに習ったあの授業、今、役に立ちそうです! 


 ステッキを大きく振りかぶる。


「とりゃーっ!」


 ウリ坊に突っ込む。

 向こうも「ぷきーっ!」と鳴いて飛びかかってきた。


「めーんっ!」


 茶色い頭めがけて、渾身の一撃を振り下ろす。


「もらった!」


 ――と思った瞬間。


 ぱしっ。


 ウリ坊の小さな前足が、ステッキをいなした。


「えっ」


 軌道を逸らされたステッキが空を切る。

 小さな牙がのぞく口角が、にやっと上がった気がした。


 今、どや顔した!?


 空振りの勢いに引っ張られ、体が前につんのめる。

 踏ん張ろうとした私の目の前に、黒く湿った鼻先がぐんぐん迫ってきて――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


茉歩瑠の旅を、のんびりと見守っていただけたら嬉しいです。

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