第23章 属性適性
訓練場の空気は、わずかに張り詰めていた。
夕方。
探索帰還後。
蒼天の軌跡専用の訓練場。
訓練場の石床には、長年の戦闘訓練で刻まれた焦げ跡や亀裂が幾つも残っている。
その中央で、リオは机の上へ並べられた結晶を見つめた。
「それで、適性確認って、どうやるんですか?」
「この結晶へ魔力を流します」
セレナは六つの結晶を並べた。
「人は通常、一つの属性へ適性を持ちます」
「二属性持ちは比較的珍しい」
「三属性以上になると、かなり稀ですね」
リオは少し考えた。
「属性適性検査って、クラウスから少し聞いたことはあります」
「でも、自分はほとんど魔力がないって分かってましたから」
「詳しい話までは聞きませんでした」
セレナは小さく頷いた。
「そういう探索者は少なくありません」
ミアが楽しそうに身を乗り出す。
「リオちゃん何属性かなー」
「まあ火とかじゃないか?」
レオルが気楽に言う。
「まずは火属性からです」
セレナが赤い結晶を差し出した。
リオは魔力を流す。
結晶が輝く。
ぼっ
炎が灯った。
セレナが頷く。
「反応しましたね」
「火属性適性はあるようです」
「お、火か」
レオルが笑う。
リオも少し安心した。
そして。
セレナは続けた。
「一応、他の属性も確認してみましょう」
リオは頷く。
水。
風。
土。
順番に魔力を流していく。
そして。
訓練場の空気が少しずつ変わっていった。
「……待て」
レオルが眉をひそめた。
「なんで全部反応してる」
ミアも目を丸くしている。
「四属性全部?」
ドルクが短く呟いた。
「聞いたことがない」
リオ自身が一番困惑していた。
流石に普通ではない気がする。
そして。
白い結晶。
光属性。
リオが魔力を流す。
何も起きない。
「……あれ?」
ミアが首を傾げた。
セレナが結晶を確認する。
「光属性への反応はありませんね」
リオは少しだけ安堵した。
ようやく普通らしい結果が出た気がした。
そして最後。
黒い結晶。
闇属性。
魔力を流す。
瞬間。
黒い結晶が強く輝いた。
空気が静まり返る。
セレナが僅かに目を見開いた。
「五属性……ですか」
「まさか、ミアよりも多いとは思いませんでした。」
ミアが苦笑する。
「自慢じゃないけど、わたしも天才って言われてるんだけどね?」
「それでも四属性だよ?」
「十分自慢してるぞ」
レオルが呆れたように言った。
ミアはえへへ、と笑う。
セレナが静かに続ける。
「まあ、いずれ説明するつもりでしたが」
「蒼天の軌跡の能力についても話しておきましょう」
リオは少し身を乗り出した。
「セレナさんは?」
「私は火と風です」
レオルが横から口を挟んだ。
「ちなみにセレナは火属性の最高クラスだぞ」
「最高クラス?」
「超級魔法使いだからな」
セレナは小さくため息を吐いた。
「魔法は一般的に初級、中級、上級へ分類されます」
「大半の魔導士は上級到達を目標にします」
「そして、ごく稀に」
「上級を超える超級魔法を扱える者が存在します」
「私もその一人です」
そんな人物が。
自分へ訓練をつけてくれている。
改めて考えると、随分と贅沢な話だった。
「ミアは水、光、風、土」
「四属性適性です」
ミアが得意げに胸を張る。
「えっへん」
「だから十分自慢してるって」
レオルがため息をついた。
「レオルさんは?」
「俺か?」
レオルは肩を竦めた。
「一応火属性だ」
「簡単な火魔法くらいなら使える」
そう言って槍を持ち上げる。
「でも本業はこっちだな」
「魔力を使った身体強化だ」
レオルは笑う。
「まあ、俺も自慢じゃないが」
「スピードマスターなんて呼ばれてるらしいな」
次の瞬間。
レオルの姿がぶれる。
轟音。
訓練場の反対側。
炎を纏った槍が強化木材製の的を粉砕した。
破片が飛び散る。
リオは目を見開いた。
「驚きました」
レオルは槍を肩へ担いだ。
「魔法よりこっちの方が得意なんだ」
「ドルクさんは?」
「自分も似たようなものだ」
「土属性」
そう言って大盾を持ち上げる。
レオルが笑う。
「こいつは『不動の盾』だな」
ドルクは特に肯定も否定もしなかった。
「リオ」
「はい?」
「打ち込んでみろ」
リオは少し迷ったあと。
身体強化。
部分強化。
全力で踏み込む。
拳が盾へ叩き込まれた。
轟音。
だが。
盾は微動だにしない。
ドルクも一歩も動かなかった。
「前に黒鉄樹の的を砕いた時と同じくらいのつもりだったんですが……」
「そうだろうな」
ドルクは平然としている。
「必要ならさらに強化できる」
リオは思わず息を吐いた。
セレナが静かに言う。
「レオルもドルクも魔法使いではありません」
「ですが、魔力運用技術は一流です」
「蒼天の軌跡が深層へ到達できた理由の一つですね」
リオは改めて仲間達を見回した。
蒼天の軌跡はA級パーティ、凄いのは当然だ。
だが。
実際に見てみるとその実力は思っていた以上だった。
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