第24章 中層最深部
翌日。
蒼天の軌跡は再び迷宮へ潜っていた。
前回の探索で二十八層までは確認している。
今日の目的地はその先だった。
セレナがリオに伝える。
「本日は二十九層を攻略。そして明日、三十層の階層主へ挑みます」
リオは頷いた。
階層主。
探索者なら誰でも知っている存在だ。
中層の最奥、および深層の特定階層を守る特別な魔物。
そして三十層は中層最後の階層でもある。
「いよいよ中層最後ですね」
「ええ」
セレナは頷く。
「一層から三十層までが中層」
「三十一層から先は深層になります」
レオルが軽く笑った。
「中層階層主はひさしぶりだな」
ミアも頷く。
「最近はずっと深層だったもんね」
リオは少し驚いた。
改めて考えると、この四人にとって中層は既に通過点なのだ。
二十九層へ到達する。
空気が変わった。
これまでより重い。
迷宮そのものが圧力を放っているようだった。
リオは感知を広げる。
以前よりもずっと自然にできる。
「上です」
リオが声を上げた。
直後。
天井の石像が動いた。
ガーゴイル。
翼を広げながら急降下してくる。
「さすが、感知がはやいな」
レオルが笑う。
槍を構えた。
瞬間加速。
姿が消える。
空中。
ガーゴイルの首が飛んだ。
さらに二体。
三体。
次々と落下していく。
最後の一体が逃れようと翼を広げた。
だが。
風が吹く。
セレナの魔法だった。
体勢を崩したガーゴイルへレオルの槍が突き刺さる。
戦闘は一瞬で終わった。
セレナがリオに微笑む。
「リオ、助かりました」
リオは何のことかわからず聞き返す。
「え?」
「リオの感知がなければ奇襲になっていた可能性があります。」
「少し気が緩んでいたかもしれませんね」
レオルは笑う。
「確かにな」
「いい仕事だった」
少しだけ嬉しかった。
さらに奥へ進む。
今度は広い空洞だった。
中央に巨大な影が立っている。
ゴーレム。
三メートルを超える石の巨人。
ゴーレムが動き出す。
石の拳が振り下ろされた。
轟音。
ドルクが前へ出る。
大盾を構える。
激突。
衝撃が広がる。
だが。
ドルクは一歩も下がらない。
「すごい……」
リオが思わず呟いた。
ドルクは短く答える。
「まだ軽い」
ゴーレムが再び拳を振るう。
ドルクが受け止める。
その隙にレオルが側面へ回り込む。
炎を纏った槍。
だが。
石の身体は硬い。
浅い。
「硬えな」
レオルが眉をひそめた。
セレナが即座に指示を飛ばす。
「胸部です」
「核があります」
レオルが笑う。
「了解」
次の瞬間。
レオルが消えた。
気付けばゴーレムの懐。
炎を纏った槍が胸部へ突き刺さる。
亀裂。
砕ける。
ゴーレムは崩れ落ちた。
「お見事です」
リオが言う。
レオルは首を横に振った。
「まぁこれくらいは普通だな」
さらっと言う。
だが。
普通ではない。
リオにもそれくらいは分かる。
探索は続いた。
魔物の数も増える。
リオも戦闘へ参加する。
身体強化。
感知。
以前より明らかに身体が動く。
その時だった。
身体が軽くなる。
視界が鮮明になる。
「ミアさん?」
「支援だよー。まだいらないかもだけど念のためね。」
ミアが笑った。
身体強化とは違う。
全身が自然に動く。
これがミアの力。
四属性適性を持つ支援術師。
蒼天の軌跡の総合力を大きく引き上げる力だった。
戦闘中。
感知へ反応。
右後方。
死角。
リオは即座に叫ぶ。
「右!」
レオルが振り返る。
寸前で回避。
槍が閃く。
魔物が倒れた。
「ありがとな」
レオルが軽く手を上げる。
リオも少し笑った。
今の自分にも役割はある。
そう思えた。
探索終盤。
大広間へ出る。
複数のゴーレム。
さらに大量のガーゴイルもそこに加わる。
これまでで最大の群れとなって襲い掛かってくる。
セレナが前へ出る。
「下がっていてください」
静かな声。
セレナが短く詠唱を紡ぐ。
魔力が集まる。
熱が生まれる。
空気が震える。
次の瞬間。
炎の奔流が大広間を飲み込んだ。
轟音。
爆炎。
ガーゴイルも。
ゴーレムも。
群れがまとめて吹き飛ぶ。
リオは言葉を失った。
昨日聞いた。
超級魔法使い。
その意味を少し理解した気がした。
探索終了。
二十九層の安全確認は完了した。
さらに奥へ進む。
やがて。
巨大な扉が現れた。
高さ十メートルを超える石造りの門。
無数の傷跡。
長い年月を感じさせる彫刻。
リオは思わず足を止めた。
「この先が……」
「三十層です」
セレナが答える。
ドルクも静かに扉を見上げている。
ミアも珍しく笑っていなかった。
その先にいるものを。
全員が知っているからだ。
「階層主ですね」
リオが呟く。
「ええ」
セレナが頷く。
「中層最後の相手です」
重厚な扉が静かに佇んでいる。
その向こうには。
中層の終着点が待っていた。
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